転生腹黒貴族の推し活

叶伴kyotomo

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67 推し達と貴族街

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「ギルも買い物は終わった?」

ジェレミー兄様に聞かれ、俺は笑顔で頷く。

腕には揃いで作ったであろう細身のパングルが光り、セルジオ様は満足気に他の商品が入っているであろう布袋を持っている。

先程のキムート子爵と令嬢達の姿は無く、カップルの姿が増えていた。

「我々も良い買い物が出来た。実は、近くの海鮮が美味しいレストランに予約をしてあるんだ。リネー伯爵にも許可は取ってあるから、ギルも一緒にどうだい?」

「ありがとうございます。最近評判の所ですね?楽しみです」

そう答え、ランデバス商会にお礼を言うと、俺達はリーナイト公爵家の馬車に乗り込む。

近くと言っても馬車で十分くらいの所だったはず。

「ギルは何を購入したの?」

「揃いのバングルと、ジャメル家とリネー家の使用人達に防犯機能付きのピンブローチを」

「ああ、のだね。さすがギル。皆喜ぶよ」

セルジオ様に何を買ったのかと聞くと、ジェレミー兄様が苦笑していた。

「私達も揃いのバングルだ。それと、カフリンクスとラペルピンのセットを。それとクラヴァットの宝石も同じデザインで作ってもらった。やはりランデバス商会の品は良いな」

勧められた全部とそれ以上買ってる。

さすが三大公爵家。

俺は少しゴツ目のデザインにしたが、二人は細身で美しい細工がされたゴールドの土台に、二人の瞳の色である青と黒のダイヤが装飾されたモノだった。

控えめだが高級感があり、俺のちょっとやりすぎたかな~と思ってしまった。

いや、相手はテオだし、派手でもきっとカッコイイから問題ないはず!

「とても良く似合っています。…差し支えなければ、私が護衛魔術を追加しても?」

「ああ、よろしく頼む」

俺はサッと購入した宝飾品に魔術を掛ける。

高価な宝石の方が、魔力が溜まりやすいから、丁度良い。

セルジオ様達は、軽い防犯くらいだろうと思っているかもしれないが、先程の令嬢達の事を考えたスペシャルバージョンだ。

まず、二人に邪な感情で近付いて来る奴らは、本人も武器なども一メートル以上は近付けない。

そして、何か二人を嵌めようと悪意を向けたら、倍になって帰って来る。

そしてそれが全部俺に伝わって来るのだ。

「簡単なモノですが終わりました。…今日伺うお店はそろそろですか?」

「ありがとう。ああ、もうすぐだ。アイール伯爵家の分家になる、アドン子爵家のレストランだそうだ」

アイール伯爵家は冷菓の開発を一緒にやった、ハイリ嬢の婚約者のとこだね。

今日はプラム伯爵家夫妻が弟の治験に付き添いて来てたから、その時に紹介されたのかな。

「トーレ王国は海が無いが、今回ギルが開発に協力した冷蔵箱を馬車に取り付け、鮮度の良いモノが比較的安価に入って来るようになったんだよ。今までは魔術師が冷却して大変だったようでね。その分の魔力を他に回せると皆喜んでいた」

俺の開発で周りが豊かになって行くのは、中々気持ち良いね。

仕事が無くなるんじゃなくて、他の仕事に回せるって聞いて安心した。

毎回魔術師が一緒に買い付けに行って、冷却して、護衛もしてと大変だったみたいだから、護衛をしつつ他の仕事も出来るようになれば負担も減りそうだね。

「私、生のお魚は初めてです。帝国やラッカルでは良く食べられていると聞いているので、楽しみです」

刺身!!

確かに帝国の海側には生魚の料理があると聞いたな。

俺はレッドドラゴン優先だったから、海側までは行かなかったけど。

「評判を聞いたら、とても美味しいそうだよ。柑橘系のソースがまた合うそうだ。帝国やラッカルは辛いソースが多い様だが、さっぱりと臭みも抑えると柑橘系のソースは好評だ。我が国の代表的ソースとなりそうだよ」

おおお。

さすがに醤油は無いけど、柑橘系推しといて良かった~。

アイール伯爵家の冷菓や柑橘系の菓子から、どんどん良い方向に広がってるみたいだ。

ワクワクしていると、白と青を基調にした美しい建物の前で馬車が停まる。

『アドンレストラン』

と書かれ、入り口横にはレモンの木も植えられおり、良い香りがしている。

周りは貴族が多く利用するレストラン街なので、馬車置き場も余裕がある作りで、美しい街並みが保たれている。

「さ、行こうか」

使用人がドアを開け、まず先に俺が一人で降り、セルジオ様が兄様をエスコートしながら降りてくる。

周りの注目が美しい二人に集まっているうちに、サッと馬車に護衛魔術を掛け、馭者にも声を掛け馬車置き場へ進ませた。

公爵家だからもっと執事とか連れ歩いても良さそうだけど、今日は俺がいるからね。

俺強いからね。

客席からも外が見えるので、中からも視線が集まっている。

「ようこそおいでくださいました。ご案内いたします」

アドン子爵が、店長と思われる男性と一緒に迎えに来る。

さすがに時期公爵の予約だから、子爵がわざわざいらしたんだな。

二人を先に歩かせ、俺は周りを警戒しながら階段を上がる。

右側から視線を感じ、チラリと見ると、宝石店の男と令嬢達が近くのカフェテリアからこちらを伺っている。

随分とタイミングが良いなと思うが、貴族の多いレストラン街だから偶然なんだろうか。

馬車には一見すると、リーナイト家と分からない様に魔術を掛けておいて良かった。

あいつら何かしてくるかもしれないし、用心に越した事は無いよね。




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