転生腹黒貴族の推し活

叶伴kyotomo

文字の大きさ
上 下
65 / 247

63 押し達と治験の成功に向けて

しおりを挟む

魔力拒否証患者への治験は、魔力の高い俺達が近づかないよう、魔力に低いメイドやらが協力する事になっている。

俺が到着し、王様達も揃うと、各々挨拶を交わしジェレミー兄様が説明を始める。

会場は謁見の間で、広い空間に円を描く様にテーブルと椅子が並べられ、一族ごとに座っている。

その中央にテーブルが置かれ、ジェレミー兄様と俺が立って説明をする。

「こちらに、レッドドラゴンリーフを煮出した物を粉末にした粉があります。こちらを、ティースプーン一杯が一回の目安です。濃さは好みで結構です。暖かくしても、冷たくしても効果は変わりません。甘い香りがしますので、このままでも飲みやすいですが、蜜を入れても問題はないです。今回の治験では、十時と三時に提供致します」

お湯や水が運ばれてきて、家族にも試飲を配る。

王室魔術師達が、サッと毒などが無いかの鑑定をしてから、それぞれに提供される。

「まぁ!なんて良い香り」

「まるで木苺の様な香りだな。…うむ。味も良い。私は蜜が無くても飲みやすいな」

それぞれの家族にも好評な様だ。

集まっているのは、一人息子のエール五歳が治験者の、ドンク公爵の従兄弟にあたるセンテ伯爵家。

カントラ子爵家の四歳のムルスは、ナートラ先生のお孫さんだ。

今日は、息子夫婦だけが参加している。

そして、フロル嬢の実家のプラム伯爵家夫妻と、アームの兄であるパラン男爵家の夫妻だ。

今日は、アームも参加している。

「それでは、この薬湯をそれぞれに提供します。ギルが魔力拒否症に害の無い魔術を掛け、不正も出来ない様になっています。それぞれ入り口まで護衛に着いて行って中の様子も伺える形にしてあります。ギルの魔術に関しては、王室魔術師の方々に確認して頂きます」

堅苦しいが、王子の治療だしね。

これから十日間は俺とジェレミー兄様が通って、王室魔術師の方々にチェックしてもらう仕組みなのだ。

「確認しました。…素晴らしい魔術だ。陛下、それではそれぞれのご子息の元へお運びします」

サーガルド伯爵の合図で、それぞれにレッドドラゴンリーフが運ばれて行く。

取り敢えず一回目は無事に終わりそうだ。

これを三時にもう一回して、十日間か。

面倒だけど、皆の期待が掛かってるからね!

俺頑張る!

次の時間までは周りとの会談の様なものだ。

それぞれのご家族は、ジェレミー兄様や騎士見習いのロンに、治療中の話などを熱心に聞いている。

「…アーム。久しいな」

「兄様…。いえ、失礼しました。パラン男爵」

お、ここも接触してきたね。

取り敢えず、父様達が上手くやるんだろう。

「男爵はよしてくれ。ジャメル伯爵の所にお世話になっていたんだな」

「…はい。とても良くして頂いています」

「そうか」

現当主のパラン男爵は、王室魔術師の一人でもあり、優秀で優しそうな男性だ。

アームが姿を消してしまった時は、随分心配していた様で少し老けてしまったと聞く。

「たくさん。ご心配をお掛けしました…」

ちょっと気まずそうな空気になりかけた時、父様が会話に入る。

「パラン男爵。アームは、レッドドラゴンリーフ薬草園の責任者をしてもらっています」

「なんと…。そんな重大な仕事を?」

シャル様からジャメル領に居るとは聞かされていた様だが、責任者とは思わなかったみたい。

「はい。初めの葉が生えるまでは、昼夜寝る間を惜しんでで管理してくれました。その後の管理や、粉末までの工程も、二人が主に取り仕切ってくれています。我々にとって、とても大切なビジネスパートナーですし、言葉は分からなくともレッドドラゴンからの信頼も得ています。私が口を挟むのは失礼ですが、どうか二人を認めてやって欲しいのです」

父様の言葉に、パラン男爵はホッとした様に頷いている。

「もちろんですとも。…アーム。君は自分で居場所を手に入れたんだな」

「…兄様」

「私も父も、君が可愛くて。良い所に嫁に出す事こそ、良い未来が約束されると信じていたのだ。確かに、君の行動は褒められたモノではないが、こうやって素晴らしい偉業に参加し、貢献したんだ。父には私から話をしてある。今度は、夫夫。いや、娘も一緒に顔を見せにきて欲しい」

「兄様っ。ありがとうございます」

うっすらと涙を浮かべるアームの頭を、パラン男爵は優しく撫でる。

「お礼を言うのはこちらの方だ。聞いたよ。私の娘の病状を聞き、リーナイト公爵とジャメル伯爵に懇願してくれたのだろう?ありがとう。娘に薬が届くのは、もっと後だろうと思っていた」

うんうん。

良かった。

アーム夫夫には本当にお世話になったんだ。

少しでも、三人が生きやすくなってくれたらそれで良い。








しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

【BL】婚約破棄で『不能男』認定された公爵に憑依したから、やり返すことにした。~計画で元婚約者の相手を狙ったら溺愛された~

楠ノ木雫
BL
 俺が憑依したのは、容姿端麗で由緒正しい公爵家の当主だった。憑依する前日、婚約者に婚約破棄をされ『不能男認定』をされた、クズ公爵に。  これから俺がこの公爵として生きていくことになっしまったが、流石の俺も『不能男』にはキレたため、元婚約者に仕返しをする事を決意する。  計画のために、元婚約者の今の婚約者、第二皇子を狙うが……  ※以前作ったものを改稿しBL版にリメイクしました。  ※他のサイトにも投稿しています。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

転生して悪役になったので、愛されたくないと願っていたら愛された話

あぎ
BL
転生した男子、三上ゆうきは、親に愛されたことがない子だった 親は妹のゆうかばかり愛してた。 理由はゆうかの病気にあった。 出来損ないのゆうきと、笑顔の絶えない可愛いゆうき。どちらを愛するかなんて分かりきっていた そんな中、親のとある発言を聞いてしまい、目の前が真っ暗に。 もう愛なんて知らない、愛されたくない そう願って、目を覚ますと_ 異世界で悪役令息に転生していた 1章完結 2章完結(サブタイかえました) 3章連載

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)

かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。 はい? 自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが? しかも、男なんですが? BL初挑戦! ヌルイです。 王子目線追加しました。 沢山の方に読んでいただき、感謝します!! 6月3日、BL部門日間1位になりました。 ありがとうございます!!!

処理中です...