転生腹黒貴族の推し活

叶伴kyotomo

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一夜明け、俺とジェレミー兄様は朝早くからセルジオ様の迎えで王城へ向かう。

ジャメル家の馬車には父様とシェル様、ホセ兄様とフロル様が乗る。

「今日はレッドドラゴンリーフの摂取の説明と、簡単な挨拶だ。これから十日間ジェレミー達には王城に通ってもらうことになる。私もできる限り付き添いたいが、商会やジャメル領との話し合いもあるからな。二人で大変かもしれないが、何かあったらすぐ報告してくれ」

セルジオ様に兄弟で頑張りますと返事をし、俺達は昨日訪れた控室に通される。

そこには、父様達も揃っているはずなのだが、扉の前に居たオール殿下が少し申し訳なさそうに俺に近付いてくる。

「やあギル。すまない、少し時間をもらえるか?テオドール殿下が話がしたいみたいなんだが」

「分かりました。オール殿下にはお手数をおかけ致します」

あらら、テオの為にオール殿下をお待たせしていたなんて、申し訳ない。

俺はお礼を述べて、一人オール殿下に着いて行く。

シェル様達の控室前で待っていてくださったと言う事は、父様にも許可を取った後なんだろう。

治験者の方々が到着するのはもう少し後なので、今の時間を狙ってくれたんだろう。

黙って着いて行くと、中々豪華そうな来賓室の扉が見える。

扉の前にはケンとユウリの二人立っており、オール殿下の姿を見て、扉をノックした。

『どうぞ』

中からテオの声がして、オール殿下は俺に中に入るよう促す。

「…テオドール殿下との事だが、我が国としても良い縁談だと思っている。安心して欲しい」

「ありがとうございます。…ギルです。失礼します」

オール殿下に頭を下げ、俺は一人で部屋に入る。

これはまた随分と豪華な部屋だな。

豪華な応接セットが置かれ、敷き詰められた絨毯もフッカフカ。

きっと他国の王族や来賓用の部屋なのだろう。

扉がいくつかあるから、寝室や風呂やトイレもあるんだろうな。

あまりの広さに感動していると、ソファからテオが立ち上がる。

昨日よりは随分ラフな格好をしているが、それでも上質なモノと分かる。

「ギル。会いたかった」

テオが、笑顔で両腕を広げている。

きゃー!!かっこいい!!

昨日は家族もオール殿下も居たけど、今は二人きりだから良いよね!?

俺はサッと周りに防音やら目眩しの魔術を張ると、テオの胸に飛び込んだ。

んん~!暑い胸板とテオの匂い!

好き!

俺が背中に腕を伸ばすと、テオも抱きしめ返してくれる。

そのまま左手で優しく頭を撫でられ、うっとりしていると右手がお尻に降りてくる。

「こら」

ペシンと右手を叩いて見上げると、テオは嬉しそうに笑っていた。

少し熱を帯びたテオの黒い瞳を見つめていると、ゆっくりと顔が近づいていた。

これが初めてのキスだ。

テオの唇が重なり、俺はうっとりとそれを受け入れる。

が、パシンとテオのお尻を叩く。

舌はまだ早いです~。

「…うむ。ダメか」

「まだ早いです。…さ、私は治験者に立ち会わないといけないので、皆さんが集まるまでにお話をしたいのですが」

ニッコリと笑顔を向け、俺はテオをソファに座らせる。

少し不満そうな顔のテオの膝に乗ると、満更でも無い顔で俺を抱き止めた。

「全く。どこでこんな事を覚えだんだ?」

「テオ以外に使った事なんてないけど?」

いやはや、他に誰か居たら絶対出来ないけど、二人きりだから好きにしちゃう。

その大勢のまま、俺は昨日家族で話し合った事を伝える。

「ふむ。私もその考えに賛成だ。ギルと早く結婚したい気持ちはあるが、事を急ぎすぎては問題が増えるだけだからな。兄上達の協力もありがたい。それにしても、ギルは随分と多くのモノを考案しているのだな。レモルトでも新しく始めたい事はあるか?」

テオの物分かりの良さに感動しつつ、俺はレモルトについて詳しく知りたいと聞く。

「そうだな。農作物の栽培に適した土壌もある。湖畔もあるが、岩山が火山であったこともあり、湯の湧き出る泉もある。雪も降るが、その周りは暖かいぞ」

え!?温泉あんの!?

めっちゃ活用出来るじゃないか!

この世界には他人との裸の付き合いの文化は無いが、海に行けば海水浴を楽しむ文化はある。

もちろん肌の露出の多い水着ではなく、洋服に近い水泳着を着用するが。

最近は俺の開発した布に更に浮力を追加した水泳着を、売り出そうかと言う話も出ているのだ。

温水なら冬場も楽しめるし、周りを綺麗に整備すれば、中々の観光地になるのでは無いだろうか。

俺がテオにそう告げると、テオはならばその周りの整備を始めると約束してくれた。

「自然も豊かだから、柑橘系フルーツの栽培も試したいな。テオは柑橘系のデザートは食べた?」

「ああ。とても爽やかで美味しかった。帝国にも一早く入って来たぞ。そうか、あれもギルの提案か。素晴らしいな」

帝国でも好評なら、もっと広がるはず。

味の良い品種改良に力を入れ、柑橘の産地になれば息も長そうだ。

「デザートにも良いけど、料理やドレッシングにも使えるんだ。これをレモルトの売りにしていければ」

「ああ、そういえば、レモルトの由来はレモンだったな。確か、通常より大きなレモンが採れるのだ。香りが良くてな。きっとギルも気にいるだろう」

土壌はあるわけだね!

大きなレモンか~ワクワクしてきた。

俺とテオが楽しく話していると、治験者が集まったとの連絡が来る。

「それじゃ、俺は行くけど、テオはもう領地へ行くの?」

「いや、レッドドラゴンリーフの治験の成功を見てから、帝国に報告したいからな。もちろんギルの名前も出す」

「そっか。それじゃ、レッドドラゴンリーフの治験が成功したら、父様に許可をもらってレモルトに訪問したいな」

「もちろんだ。一緒に行こう。さ、大仕事だ頑張っておいで」

最後にテオと抱きしめ合い、またキスをして、俺は呼びに来た騎士に案内してもらう。


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