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61 推し達からの祝福
しおりを挟む俺の告白を家族は真剣な顔で聞いてくれている。
「もちろん、レッドドラゴンリーフを成功させ、領地を更に開拓して観光に力を入れてからの話になるとは思います」
テオは好きだし、結婚もしたいけど。
まずはジャメル家の成功が先なんだよね。
「…しかし、殿下はそれを良しとするかの。ここまで周りを固めて来ているのだから、早々にギルを嫁にと思っているのは明白だ」
お祖父様の言葉に、そこまで愛されちゃって照れちゃうなと呑気に考えつつ、俺は自分の考えを話す。
「まずは婚約だと思います。その後の事は、必ず両立して見せますし、納得してもらいます」
帝国の王子にも、俺の野望を譲る気は無い。
もちろん、テオが俺の味方をしてくれると分かっているからの発言なんだけどね。
「ギル。今まで十分私達の為に尽くしてくれて来たんだ。自分の幸せを優先しても誰も怒りはしないぞ?」
ホセ兄様の言葉に、俺は笑顔を返しつつ、首を振る。
「もちろん家族や周りの信頼出来る方達を信用していますが、俺は自分がやりたい事を途中で投げ出すのは嫌なんです。レッドドラゴンリーフの成功を収めたいし、家族に掛かりそうな火の粉は十倍にして返したいし、殿下と幸せになりたいし、ジャメルとレモルトの領地を盛り上げて行きたいんです。あまりに壮大でワガママな考えで大変な事も多いと思います。それでも俺は、それを楽しんで行う自信があります!」
俺が力強く断言すると、兄様達は笑顔になってくれた。
お祖父様は少し渋い顔をして、十倍返しは止めなさいと釘を刺して来たけど。
先程まで遠い目をしていた父様も、分かったと呟き、ようやく晴々とした笑顔を見せてくれた。
「そうだな。ギルはいつも周りの幸せを優先してきたな。裏で色々駆け回ってイタズラするのも好きだったが」
おおう耳が痛い。
「それでは、テオドール殿下とギルの婚約は前向きに検討して行こう。もちろん国同士の事もあるから、王家への相談もしなければならないが。きっと今頃テオドール殿下が働き掛けているだろう。お互いの不利益にはならないだろうから、認めてもらえるだろうしな。しかし、強力な後ろ盾が出来た事で、ギルは狙われる機会が増えるだろう。…ギルの事だからその機会も良い様に使いそうだが」
せっかくの害虫を叩き潰すチャンスじゃ無いですか。
ニコニコしていると、お祖父様がじーっと見つめて来る。
「…まぁ、程々にしておきなさい。叩き潰すのは簡単だが、利用できそうなら利用するようにな。害虫でも飼い方によっては使える時もあるのだから」
「もちろんです」
ヨハンもダイヤ公爵家的には利になる家に嫁いだし、リーナイト公爵家の控室に入ろうとしていたバカ共の中にも、筋の良い奴は居たしね。
「我が国ではギルに文句を言ってくる者は中々居ないだろうが、帝国は分からないからな。ギルが舐められない様に我々も実績を固めてから嫁に送り出そう」
父様の発言に、兄様達も大きく頷いた。
「テオドール殿下に懸想しているという、公爵家の令嬢やその取り巻きが気掛かりだな。ギルに何かして来なければいいが」
ホセ兄様の言葉に、ジェレミー兄様が令嬢の事を色々話し出す。
「タニア令嬢ですね。隣国の事で勉強していた時に良く名前をお聞きしましたが、テオドール殿下の仰る様に帝国貴族の中の、作られた広告塔の様な女性に感じました。ギルは自ら開発に携わっていますし、多くの商品を一緒に帝国に輸出する際に、ギルの名前も大きく伝えてもらいましょう。少しでもトール王国のジャメル伯爵家のギルの名を知らしめてから婚約を発表した方が、帝国の見方も変わると思います」
ジェレミー兄様の的確な意見に、父様達も確かにと乗り気になる。
「ギル。冷菓や保冷箱に防護服、魔力を蓄える為の宝飾品。そして浄水魔術水道以外に関わった製品は無いか?」
ジェレミー兄様には黙っていたけど、父様にはしっかり俺の業績は伝えていたからな。
取り敢えずはそれくらいだと言うと、父様は輸出に向けて俺の名前を出す方向で動くと言った。
俺が目立つのが嫌いと言う事で、あまり表には出ていなかったが、仕方ないよね。
「冷菓や柑橘系の菓子の輸出は既に始まっているし、中々好評だと聞いている。栄養補助の食品も、帝国の騎士団に好評で、今回のサンジカラの件でも重宝したと連絡があった。サンジカラの件が落ち着けば、見栄えが良く防御に優れた製品の需要も高まるだろう。ギルがテオドール殿下と皇帝閣下に婚約の許可を頂きに行くまでに、ギルの功績をあちらに広めておこう。そして、レッドドラゴンリーフの成功にも携わっている話まで持っていければ、さすがに大きく反対はされないだろう」
うーん。
俺の好き勝手にやって来た事が、こんなに俺を支えてくれるとは思わなかったな。
「その時は、私とセルジオ様もご一緒出来ればと考えています」
ジェレミー兄様の突然の提案に、驚く。
「しかしジェレミー。帝国にどんな奴らが居るか…」
お祖父様の心配はごもっともだ。
ジェレミー兄様に、もっと変な虫が湧いたらどうするの!
「私は、自分でも母上に良く似ていると自覚しています。そして、それが周りにどう評価されるのかも。今回セルジオ様と良いご縁が結べた事も、この容姿のおかげが大きい事も分かっています」
ジェレミー兄様の告白を、俺達は息を飲んで静かに聞く。
「私は長い間、病でジャメル家に。ギルに何もする事が出来なかった。それなのに、家族もギルも私に最大の愛情をくれていた。今度は私が返す番です。この容姿と、魔力拒否症を克服したと言う肩書を使うのは、今だと思うんです。それに、もしもの時はセルジオ様もいらっしゃいますし。ギルもいるでしょう?」
ジェレミー兄様!!
そうだよね。
もう病弱で屋敷に篭っていた兄様ではない。
トーレ王国の三大公爵家の次期当主の婚約者であり、俺の大切な味方だ。
「…そうだな。リーナイト公爵家の新しい当主夫妻の顔見せにも丁度良い。まずは、レッドドラゴンリーフの治験を成功させ、ジェレミーの結婚式を成功させよう。その際には、テオドール殿下にもギルの婚約者として出席して頂こう。その後すぐに婚約の正式な了承を頂きに帝国へ行く手筈をする。…ホセ。フロル様との結婚式はその後になるかもしれないが」
父様の言葉に、ホセ兄様は笑顔で了承した。
「もちろんです。ですが、予定通りフロルにはジャメル家へ来てもらっても問題は無いですよね?」
もうホセ兄様ったら、すぐにでも領地に連れてく気なんだな~。
「今やジャメル領の方が安全ではあるからな。リーナイト家に了承を得られれば許可しよう。それでは、今日の話はここまで。それぞれ明日に向けて休むように」
父様の言葉に、それぞれ寝室に向かう。
明日からも大変そうだな。
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