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60 推しの説明
しおりを挟むリーナイト家に領民のパーティーの感謝を告げ、そのまま公爵家で明日の段取りを話し合う。
それぞれ頼んだ治験者には、王宮の離れが準備される事になった。
ターン殿下とは別の離れに、全部で四人の治験者の部屋が用意されたので、全部で五人になる。
ナートラ先生のお孫さんと、ハイリ嬢の弟。
そして、パラン男爵家現当主の娘とドンク公爵家の従兄弟の息子だ。
パラン男爵家は、薬草園を管理しているアームの実家だ。
アームは姪が魔力拒否症だとシェル様に話していた様で、今回の件をパラン男爵に持ち掛けたらしい。
アームの居場所や現在を知り大変驚いていたが、今回の件に携わっていると聞いて安堵していた。
そして、喜んで治験を受け入れてくれたのだ。
「今回アーム達もこちらに招待しているから、明日には着くだろう。彼らの行いは褒められる事では無いとは言え、彼等無しでは成功しなかったのも事実だからな。処分が下されない様王家にも働きかけて行くつもりだ」
シェル様は約束を守るようだ。
先代も随分丸くなった様なので、関係の修復が出来れば良いと思う。
取り敢えず、明日からは俺が周りの魔力を抑える魔術を使いつつ、魔力の無い信頼出来るメイド達に協力してもらい、治験者達に毎日二回ずつ、レッドドラゴンリーフのお茶を提供することになった。
ジェレミー兄様と騎士見習いのロンは王都に残り、治癒した者として治験中に意見やアドバイスを送る形になった。
そこまで話を終えると、リーナイト家に別れを告げてお祖父様の屋敷に帰り着いた。
「ふう。さて、取り敢えず着替えてから、ギルの話をしようかの」
帰宅早々お祖父様に切り出され、俺は覚悟を決めて部屋着に着替える。
ウエーン。
お説教かな~。
渋々と居間に戻ると、家族が勢揃いしている。
「さ、座りなさい」
「…はい」
父様に促され、俺は席に着く。
父様がホスト役って事だね。
メイド達はお茶を用意すると、皆退席した。
「まずはテオドール殿下の話からだな。出会ったのは帝国のギルドと聞いたが。隣国に薬草を探しに行っている事は知っていたが、まさか身分を隠してギルドに参加していたとは。それで、殿下も身分を隠していたんだな?」
「はい。魔物討伐時に魔術を使っているのを目撃されて、そこから目を掛けてくれる様になりました」
正直に話すと、お祖父様が厳しい顔をしている。
「ふむ。ギルの魔力は桁違いだからな。隣国で油断して力を出し過ぎたのか」
ごもっともです!
「ですが、テオ…殿下は黙っていてくれました」
「ふむ。それで、薬草集めやそう言った類の依頼を一緒にしていたのか。ううむ。初めからギルを気に入ったのかもしれないな」
父様の言葉に、それは分からないと思いつつ、身分は隠しつつも兄様の魔力拒否症の話は相談していたと告げる。
「では、殿下がレッドドラゴンリーフの情報を持って来てくれたのか?」
「はい。一人で行こうと思っていたのですが…」
そう言うと、ジェレミー兄様が泣きそうな顔になっていた。
「ギル…。なんて無茶を…」
「でも、あのまま兄様が弱っていって、後悔するのだけは嫌だったんだ。そして、殿下は一人では行かせられないと。絶対に着いて行くと」
俺も目が潤みながら、つい力説してしまう。
お祖父様や父様、ホセ兄様も厳しい顔をしているが、あの時ジェレミー兄様の容態が最悪だった事は分かっているので、俺の行動が分かる様だ。
「…本当に、殿下が居なければ辿り着けなかったし、レッドドラゴンリーフも手に入らなかったと思う。父様に渡したレッドドラゴンリーフも、殿下に頂いたんです」
「…あの巾着だな。随分高貴な布と刺繍だったが、今思えば皇帝弟殿下のモノに相応しい」
そうなんだよね。
冒険者らしからぬ持ち物だよね。
「…それで、どうしてギルを嫁に欲しいと言い出したんだ?」
ホセ兄様のツッコミに、ちょっと顔が赤くなる。
「ギルも、殿下の事を?」
ジェレミー兄様の言葉に、俺は渋々と頷く。
「うーむ。ギルに春が中々来ないと思っていたが、まさか隣国で花咲いているとはな。確かに殿下は中々の色男であり、実力も兼ね揃えているようだ。そして、ギルを嫁にする為に周りを大きく固めて来ているな」
お祖父様の言葉に、えへへと照れてしまう。
そんな様子を、父様は遠くを見る目で見ていた。
「それにしても、殿下はギルの倍くらいの年齢だろう?ギルはそれで良いのか?」
「全く問題ないです」
ホセ兄様の質問に、食い気味で答えると、父様の頬が引き攣っている。
あらやだ、はしたなかったかな?
だってドストライクなんだも~ん。
「ギルには、あれくらい年上で包容力のある落ち着いた方が良いのかもしれませんね」
ジェレミー兄様は、弟の恋を応援する体制に入ってくれた様だ。
「殿下は、俺と別れる時に待っていてくれとおっしゃったんです。必ず迎えに来るからと」
「…ギルは、冒険者に着いて行くつもりだったのか?」
父様の鋭い質問に、俺は首を振る。
「いいえ。殿下は俺のレッドドラゴンリーフへの情熱を理解してくれていましたから。そうならないと勝手に思っていました。必ず、俺の意思を尊重してくれ、最善の方法で迎えに来てくれると。実際そうだったでしょう?」
俺がそう言うと、父様は確かにと頷く。
隣の領地ごと婿入り出来る様に、様々な難題を乗り越えて来てくれたのだ。
「サンジカラの件もですが、大変だったと思います。そこまで俺の為に道を作り、約束通り迎えに来てくれました。俺は、殿下以外に嫁ぐつもりはありませんし、嫁いでもジャメル領や、家族に協力して行きたいと考えています。レモルトは未知の世界ですが、殿下の気持ちに応えられる様に全力で殿下を支え、盛り立てて行きたいです」
まだしっくりと来ていないが、家族に話せば話す程に覚悟が決まって行く。
「どうか、結婚を許してもらえませんか」
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