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52 推しとの関係
しおりを挟むリーナイト家の控室に着くと、さすが王室。
先程のソファーやソファーテーブルは撤去され、大きな円形のテーブルに人数分の席とお茶やお菓子が準備されていた。
どうやら俺とテオが踊っている間に、セルジオ様やお祖父様から話を聞いたシェル様が、オール殿下と話して事前に用意させたようだ。
テオの護衛というイケメンも二人立っている。
あれ?見た事あるよね?
俺に気が付いた二人は、ウィンクして見せる。
二人とも冒険者をしていた人達じゃん!
短髪黒髪黒目でイケオジなマッチョのケンと、長い金髪をひとつ結びにした青い瞳の細マッチョのユウリだ。
二人はパートナーって言ってたけど、パートナーでテオの護衛だったんだ。
上座にテオが座り、その右側にはオール殿下からリーナイト家が座り、左側には俺と家族が座る。
テオが当たり前の様に、俺を横に座らせるから、父様も少し遠い目をしている。
「…さて、皆も我々の関係を気にしているだろうから、話しても良いかな?ギー」
テオは、用意されたお茶を楽しみながら、にこやかに会話を切り出した。
「テオドール殿下。…私の口から説明してもよろしいですか?」
取り敢えず覚悟を決めて、俺が説明した方が良いだろうと提案すると、テオは少しムッとした顔をした。
ん?どうしたの?
「…もうテオとは呼んでくれないのか?」
ンンンンンもう!テオったら!
これ以上揶揄ったら怒るよ!
キュンキュンしながらちょっと睨むと、お祖父様達に視線で嗜められたので、しれっとしておく。
「…ふむ。それではギルに説明してもらおうか」
話が進まないと判断してくれたオール殿下に促され、俺はとりあえず説明することになった。
「ええと。私がレッドドラゴンを発見した時に、協力してくれた帝国の冒険者の話をしたと思います」
「ああ、もしや殿下のお知り合いなのか?」
「いいえ。その方がテオドール殿下です」
「んん?」
オール殿下の目が丸くなっている。
オール殿下だけではなかったけど。
「…お互いに身分を隠していたのです。今回の訪問でテオドール殿下だと知りました」
俺の身分は話していたけど、取り敢えずお互い身分を隠して共に行動していた事を告げると、そう言う事だったのかと周りは納得してくれた。
父様やシェル様、セルジオ様の表情が少し強張ったのは、レッドドラゴンの功績を帝国が主張するのではという危機感からだろうなと感じた。
チラリとテオを見ると、優しく微笑んでくれる。
「…確かにレッドドラゴンの発見に協力したのは私だが、レッドドラゴン含めレッドドラゴンリーフの功績はギルやジャメル伯爵家のものだ。我が国や私がそれを主張することは今後も無いので、安心して欲しい」
「…よろしいのですか?」
父様が訝しむ様に聞くと、勿論だとテオは大きく頷いた。
「我が国のドラゴンの権利を主張した伯爵家の末路はご存知かと。私は後処理にも加わったので、ドラゴンの怒りの恐ろしさを知っている。事前に民を避難させる事も出来ず、多くの被害が出てしまった。本当に一つの領地が消えたのだ。ドラゴンの怒りは人間にどうする事も出来ない」
確か、隣国で聞いた話だと、その伯爵家の領地は民が住む様な場所ではなく、主に資源の採掘などが行われる場所だったようだ。
それでも働いている人達がいたのだから、犠牲はゼロでは無かったのだ。
「避暑地などでもなく採掘場であったが、それでも働く民はいた。一人の愚かな貴族の欲で、一日で更地になってしまった。そんな愚行を皇族である私が行うなど大問題だ。皇帝には話をしてあるが、私の考えに賛同して下さっている。国民もあの惨劇を知っているから、無闇に権利を主張する事がどれだけ恐ろしいか分かっている」
父様達は、テオの説明に一応は納得した様だが、父様はテオをじっと見つめている。
「帝国からの心遣いに心より感謝いたします。ドラゴンについては分かりました。しかし、ギルとの関係はそれだけでしょうか」
うーん父様鋭い。
確かに俺もテオと一緒になりたいな、なんて甘い考えを持っていたけど、相手は帝国の皇族。
俺が嫁入りになったら、その時にドラゴンの権利で揉める事だって考えられる。
少し顔が強張ってしまう俺の手を、テオがテーブル下で優しく握る。
チラリと顔を見ると、テオは優しく、そして色気たっぷりに微笑んだ。
「私はギルを伴侶に迎えたいと考えている」
ハッキリと、力強いテオの言葉に胸が熱くなりますドクンと波打つ。
ポーカーフェイスの頬が赤くなるのを感じた。
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