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43 推しと俺の密かな活躍
しおりを挟むジェレミー兄様の問いに、アイール伯爵家のケイクはにこやかに頷く。
「もちろん。初めはギル殿の提案に驚いたのですが、売り出したらとても需要がある商品ばかりでして」
「そんなに沢山?」
驚いたセルジオ様に、ケイクが一つ一つ説明を始める。
うう、隠れたいけども隠れられない状態だ。
「はい。まずは柑橘系の冷菓でしたね。柑橘類はどちらかと言うと香料としてしか需要がありませんでした」
そうなのだ。
俺は柑橘類が好きなのだが、この世界的に柑橘類は香料や香水等に使われる物で、食用には使用されていなかったのだ。
「我が国の冷菓と言えば、砂糖やミルクに果物などの組み合わせが多いです。それを、サッパリして爽やかな柑橘系だけの冷菓は斬新でした。甘い物が苦手な方や、食事の合間。食後にとても良いと評価されています。やはり合間や食後はぶどう酒や甘すぎる冷菓が多いでしょう?お酒を嗜まない方や、サッパリしたい方が多くて、定番になりつつあります」
世界的にも、大人子供関係なく口直しはぶどう酒だったり甘い菓子だったので、サッパリ食べられるお菓子が食べたかったんだよね。
冷蔵技術もあるんだけど、移動時の保存の関係で、バターたっぷり系のケーキや焼き菓子が主流だったりした。
バターケーキも好きだけど、毎回は重いんだよね。
「それに合わせて、携帯用の冷蔵箱の開発も提案され、商品化が出来たのです。最近はレストランにも普及していますよ」
「ああ、だからか最近新鮮な柑橘のデザートが流行っているな」
セルジオ様の感心した目に、俺は頭を下げる。
「そして、サッパリしていて喉越し良く、それでいて栄養価も高く、常温でも保存ができるゼリーや飲み物ですね。もちろん甘みの強い種類も作りました。我が商会では、食事を摂る間もない戦闘中の騎士や魔術師の簡易的な栄養補給にと考えていたのですが、販売してみたら他の需要も高かったのです」
そう。
俺がアイール伯爵家に提案した物は、騎士や魔術師達にも需要があるが、それ以上に重要な役割があった。
「病気の方や、食が細くなった方々に大変喜ばれたのです」
ケイクの言葉に、そうだったのかと感心しきった様に、セルジオ様が俺を穴が開くほど見ている。
その視線はジェレミー兄様にお願いします。
「食欲が無い時に良いとお年を召した方々や、病で伏せている方々から大変支持を受けています。こちらは魔術をかけた瓶を使いまわせる様にしています。あ、もちろん開発に携わって頂いていますので、売上の一部もギル殿に入る事になっていますよ」
ケイクがそう言ってにこやかに話を終えると、次はチンタック男爵家のミーク嬢がやって来る。
クリクリした栗色の髪と瞳が可愛らしい、一見美青年だが、やり手の仕立て屋を取り仕切っている令嬢だ。
そしてセーラ嬢の婚約者でもある。
「それなら、我が男爵家が手がける仕立て屋にも、ギル殿にアイデアを貰いましたよ。最近流行りの薄手の防護服がソレです」
「え?アレもギル様の提案でしたの?」
「まぁ~!軽くて、女性も身に付けやすいデザインも多くあるので、周りのご令嬢達も良く購入していますわ」
アレやら言われ騒がれているのは、俺が提案した魔力を込めた防護服だろう。
父様やホセ兄様は討伐やらの時は鎧を着ており、それはそれでカッコいいのだが、王都への行く時や華やかなパレードの時に、父様達のカッコ良く引き締まった体のラインが見えないのはもったいないと感じたのがキッカケだったりする。
薄手なのにしっかり防御力があれば、普段着にも良いし、身を守りたい貴族にもウケが良さそうだと色々考えていたら、お祖父様が贔屓にしているミーク嬢を紹介された。
セーラ嬢の婚約者と言う事もあり、信用できると踏んで話を持ちかけた。
こんな感じでと提案すると、王都で主に貴族向けにドレスなどの仕立てをしていたミーク嬢は大変興味を持ち、俺が魔術を込めた布の製造を成功させると、アレよアレよと製品化してくれたのだ。
ベストからコート、ベルトやサスペンダー、女性のスカートやコルセット等も販売することになり、子供服まで作り出したので、子供や娘を守りたいという貴族に大人気になっている。
「今回の成功は国外にも知られており、我が仕立て屋は嬉しい悲鳴です。デザイン性を抑え、生地もランクを抑えた物を使用する事で、平民向けの製品も販売を始めています。そちらの売れ行きも上場です。あ、もちろんギル殿にはきちんと報酬をお出ししていますよ」
やっぱりやり手のミーク嬢は、次々と製品を作り出しているようだ。
「我が家の宝石店も、ギル様のアイデアを頂いたんですよ」
次は、セーラ嬢だ。
「自分の魔力を貯めて使える、護身用の魔道具なんですが、ブローチやペンダント、ブレスレットにバレッタなど、女性にも身につけやすい商品を新しく開発したんです」
そう言ってセーラ嬢は、綺麗なエメラルドグリーンのブローチを紹介する。
「まあ、ギル様はそちらにも関わっていらしたの?」
「私は母上と妹にプレゼントしたよ。魔力が暴走しないように作られているし、もしもの時にその力を使って身を守れるからね」
クラスメイト達が俺をほっといて、俺の会話をするのを眺めながら、俺は遠くを見ていた。
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