転生腹黒貴族の推し活

叶伴kyotomo

文字の大きさ
上 下
40 / 247

38 推しと悪人

しおりを挟む

「婚約はめでたいですが、そんなに焦らなくても良かったのでは?公爵家のご子息も優秀でしょうが、優秀過ぎても可愛げというものが…。やはり当主を支える方でなければ」

「そうですわ。甘え上手な令嬢も多いですわよ」

まだ言うか。

思ったよりホセ兄様の人気は高い様で、格下に娘を娶らせてやると考えていた様な貴族から、チクチク嫌味が出て来る。

お前らの娘?息子?

微塵も推せない奴らに、兄様は似合わないね!

俺がスンとした顔になると、お祖父様が苦笑する。

「ギルよ、一応社交の場だ。落ち着きなさい」

離れてはいるが会話は聞こえる範囲なので、お祖父様も俺の機嫌が急降下している理由が分かる様だ。

「…優秀だと可愛げがないとでも?こんなに美しく可愛らしのに」

「ほ、ホセ様…」

ホセ兄様のどストレートな惚気に、フロル様は赤くなり、嫌味を言ったご婦人方は目を丸くしている。

他の方々は、あらあらと初々しいカップルを和かに見ている。

「それに、甘え上手で可愛いだけでは我が領地では何の役にも立ちません。と言いますか、その様なご令嬢ご令息で良いと言うお家は貴族としてもどうなんでしょうね。フロルの様に優秀で優しく、平民にも慈愛に満ちた妻を娶れるなんて、私は贅沢者です。それに、私の弟は今年の主席ですよ?私の弟が可愛くないとでも?」

おうおう。

俺様の美貌が目に入らねーか!?

兄様が俺の名前を出してくれたので、俺はとびきりの笑顔で応える。

ちゃんと目も笑っておこう。

「ヒッ…」

おい誰だよ今悲鳴上げたの!

失礼しちゃう!!

「…ギルは笑っても迫力があるのぉ」

お祖父様の諦めた様な声に、さらに笑顔を見せておく。

兄様がフロル様ラブ!な姿勢を見せ付けていると、今度はジェレミー兄様達に絡む奴らが現れる。

「いやぁ。こんなに美しい方がいらっしゃるとは。セルジオ様も隅に置けませんなぁ」

でっぷりとした、大きなお腹とツルツルの頭が何やらキャラクターの様な男が、見覚えのある令嬢を連れて来る。

優秀クラスのパニ伯爵家の令嬢だな。

そして、飛んで火に入る夏の虫だな!!

「我が娘との婚約を何度も何度も断りになられるのですから、さぞ優秀な方なんでしょうねぇ?しかし、学園に通われていないのでは?ジャメル領に方が、果たして王都で公爵を支えるとは。ちと荷が重いのでは?」

あ?○ろすぞ?

俺が笑顔に殺気を乗せていると、スッスッと視線が外される。

やだ皆様そんなに怖がらないで。

「…これはこれはパニ伯爵。ジェレミーは大変優秀ですよ。病気でだけですし、勤勉で王都の事だけではなく隣国や他の国の事も大変詳しいです。病気を克服した今は、魔力も安定し、治癒の魔術は私より優秀ですよ」

嫌味なパニ伯爵のジャブに、セルジオ様は笑顔でジェレミー兄様の腰を抱き寄せて返す。

いかんいかん。

すぐ感情を顔に出したらダメだな!

「ふん。ジャメル領で何が学べるのか分かりませんが。優秀でしたら、我が娘も優秀ですぞ?」

「お久しぶりですセルジオ様」

パニ伯爵は鼻で笑うと、話の流れを無視して娘を紹介する。

甘ったれた声で話すのは、パニ伯爵家令嬢のエパだ。

金髪をフワッフワに巻いて、大ぶりな赤と緑が混ざった宝石の付いたカチューシャをしている。

胸元の開いた真っ赤なプリンセスラインのドレスだが、流行りのシンプルなスタイルではなくフリルを多く使い、裾や袖までフリッフリしている。

俺はこいつを知っている。

リリーが、職員に連れて行かれる時に、視線を向けていた令嬢だ。

「私、セルジオ様に認めて貰えるよう努めてまいりましたのに…」

「そうですぞ。どうです?我が優秀な娘を、もう一度考えて頂けませんか?レッドドラゴンリーフの礼なら、婚約破棄した弟君の婚約だけで十分では?」

あ、キレた。

ジェレミー兄様、ジャメル家、リーナイト家、そしてフロル様も馬鹿にしやがったな。

レッドドラゴンリーフの販売の礼に、兄弟が婚約したとでも?

潰すわコイツら。

俺は、お祖父様ににっこりと笑顔を向ける。

お祖父様もキレた様で、にっこりと迫力のある笑顔を向けてくれた。

それでは遠慮なく。

俺は、セルジオ様達に近づき、パニ伯爵を見据える。

なんだと馬鹿にした目を向けられる。

周りには、俺に挨拶に来たであろう、クラスメイトの姿も見える。

よーし。

「…ハッ!」

俺は、馬鹿にされた以上に馬鹿にした目で見返し、心底馬鹿にした様に鼻で笑ってやった。





しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

【BL】婚約破棄で『不能男』認定された公爵に憑依したから、やり返すことにした。~計画で元婚約者の相手を狙ったら溺愛された~

楠ノ木雫
BL
 俺が憑依したのは、容姿端麗で由緒正しい公爵家の当主だった。憑依する前日、婚約者に婚約破棄をされ『不能男認定』をされた、クズ公爵に。  これから俺がこの公爵として生きていくことになっしまったが、流石の俺も『不能男』にはキレたため、元婚約者に仕返しをする事を決意する。  計画のために、元婚約者の今の婚約者、第二皇子を狙うが……  ※以前作ったものを改稿しBL版にリメイクしました。  ※他のサイトにも投稿しています。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

転生して悪役になったので、愛されたくないと願っていたら愛された話

あぎ
BL
転生した男子、三上ゆうきは、親に愛されたことがない子だった 親は妹のゆうかばかり愛してた。 理由はゆうかの病気にあった。 出来損ないのゆうきと、笑顔の絶えない可愛いゆうき。どちらを愛するかなんて分かりきっていた そんな中、親のとある発言を聞いてしまい、目の前が真っ暗に。 もう愛なんて知らない、愛されたくない そう願って、目を覚ますと_ 異世界で悪役令息に転生していた 1章完結 2章完結(サブタイかえました) 3章連載

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)

かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。 はい? 自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが? しかも、男なんですが? BL初挑戦! ヌルイです。 王子目線追加しました。 沢山の方に読んでいただき、感謝します!! 6月3日、BL部門日間1位になりました。 ありがとうございます!!!

処理中です...