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37 推しと貴族の会話
しおりを挟む今回の目玉ともなったジャメル家の発表後、やはりわらわらと貴族達が集まってくる。
部屋で待機していた奥方や他の兄弟も入って来たので、凄い人数だ。
こういった事態を考えての、リーナイト公爵家に後ろ盾になって貰ったので、父様の隣にはシャル様が居る。
「いやはや。リーナイト公爵家はさすがに鼻が効きますな」
そう言って軽いジャブを入れて来るのは、王都貴族の一人だ。
上手い商売を手にしやがってと言うやっかみもあるのだろうが。
こんな嫌味にどう返すかも見られるなんて、本当お貴族様って大変。
様子を伺っていると、父様がにこやかに返事をする。
「いいえ、こちらからお願いしたんですよ」
「ほう?ジャメル伯爵が?」
王都の無能貴族達には、リーナイト公爵家が田舎者を騙して利益を横取りしたという筋書きが面白いのだろうが、そうはいかない。
「はい。リーナイト公爵は私と同級で、彼が薬草に造詣が深い事を知っていましたから。それに、我が家より遥かに商売に長けている公爵家ですから、お願いしたのです。薬の形や売り方なども、リーナイト公爵家に指導を受け、これ以上ない協力も頂いていますよ」
父様のはっきりとした声が響く。
この場でここまではっきり宣言したら、後々変な噂を立てようものなら、事実と違うと言われるのはその貴族だ。
シェル様が薬草に造詣が深い事は有名だし、知らないなんて言ったらそれこそ笑われる。
それに、兄弟の婚約も見ての通りだから、こちらは感謝しかないという姿勢を崩さない。
この話は一旦終わりと言う空気が流れ、次は別の伯爵夫人が口を出す。
「…そうですか。しかし、いきなりご子息二人とも婚約など、急ぎ足過ぎではないですか?ホセ殿のお相手は先日婚約破棄をされたばかりでしょう?」
言うと思ったよオバサマ。
一部は田舎者と馬鹿にしているが、ホセ兄様の人気は高い。
エスコートもスマートに出来るし、何より見た目がカッコイイもん。
しっかり鍛えられた長身に、ワイルドな雰囲気もあるイケメン。
皆好きよね~俺も好き!
ホセ兄様とフロル様を向いての嫌な質問に、ハラワタが煮えくりまくるのだが、ホセ兄様は涼しい顔をしている。
「何か問題でも?」
「ええ、だってお相手は…ねぇ?」
嫌っそうな言い方だが、それでもホセ兄様はにこやかにしている。
「フロルに問題があった訳ではないですので。弟からもフロルの評判はよく聞いていますし、私も彼の素晴らしさは知っているので、今回縁を結べて幸運ですよ」
「ホセ様…」
ちゃっかり呼び捨てにしてる!
ホセ兄様はフロル様の腰を優しく抱き寄せており、本当にお似合いだ。
「あら、お二人は交流があったのかしら?」
他の優しそうな侯爵夫人が助け舟を出す。
そこで、フロル様が照れながら助けられた時の話をし、その話にホセ兄様が捕捉する。
そこへタイミング良くケンドフ伯爵が現れる。
さすが、シェル様の手回しは完璧だな。
「ええ、あの時は本当にお世話になりました。フロル様も、夏季休暇だと言うのに我が領地の教会や孤児院を治療していた時で、あの魔物の襲来は本当に予定外で困惑していたんですよ」
ケンドフ伯爵はスラッとした美中年で、若くで奥方を亡くしてから最近再婚された方だ。
後ろには、新しい夫の騎士も立っている。
観光地の当主なので、さすがにおしゃべりも上手であり、フロル様の素晴らしい行動や、ホセ兄様の活躍を好感度高く伝えてくれる。
「ま、それではその時はお互いお相手を知らずに?」
「あら~それで再開なさったのね!ロマンチック!」
令嬢達がキャッキャと盛り上がる。
女の子は好きだよね~。
でもそのおかげで、二人の婚約も好意的に見てもらえそうだ。
とりあえず、嫌な事言った奴らはリスト作っとこ。
大々的よりは、地味~に嫌がらせしてやろっと。
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