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35 推しと質疑応答
しおりを挟む最後の治験者のロンが返事をすると、周りは一層騒ついた。
ロンは大変体格も良く、鍛えられた体は服の上からも分かる。
そして、辺境騎士団と同じ格好をしているからだ。
「…ジャメル伯爵よ。こちらのロンは」
戸惑ったサーガルド伯爵に、父様はにこりと笑顔を見せる。
「現在は我が辺境騎士団で騎士見習いをしております。大変筋が良く、将来は良い騎士になるでしょう」
魔力拒否症の患者が、屈強で知られる辺境騎士団の見習い。
その言葉で、周りも王家も大変驚いていた。
「なんと…!私の息子より逞しいぞ」
「病気をしても未来があると証明されたな」
周りも、子供の護衛騎士の一人と思っていたであろう。
「なんと…。魔力拒否症の者が、回復してこれ程まで逞しくなると言うのか」
王は、すぐに五人の診断を命じた。
サーガルド伯爵の他に、腕の良い魔術師も数名呼ばれ、それぞれの診断が始まる。
そして先程と同じような光に包まれる。
静かに見守っていると、どうやら本人証に文字が現れたようで、サーガルド伯爵を始めとする魔術師達は、皆で顔を見合っている。
「こちら、ち、治癒でございます」
「こちらも治癒ですっ」
信じられないと言うように、皆が興奮しながら治癒の言葉を続ける。
これで、治験者の治癒も証明された。
王座では王妃が涙を拭っていて、王子達も和やかに手を取り合っていた。
「ジャメル伯爵よ。レッドドラゴンリーフの販売は、どの様に行うつもりだ」
王の疑問に父様とシェル様は頷き合う。
「はい。ドラゴンの許可も頂けたので、リーナイト公爵家に窓口になって貰います」
「ど、ドラゴンの許可!?」
ドラゴンと言う言葉に、騒然とする。
よーし良いぞ父様!
まずはドラゴンの説明からだね。
父様は、俺が帝国の冒険者と協力してレッドドラゴンを見つけて連れて来た事。
そのドラゴンの言葉が、ジャメル家の人間だけ分かる事。
今後、レッドドラゴンはジャメル領地に住む事になったと説明をした。
俺がドラゴンを連れてき来たという所から、俺をバカにしていた同級生や、その親族達も顔が引き攣っている。
ふふふ~。
とんでもない奴に喧嘩売ったって思ってるでしょ?
正解!
「ギルよ。帝国の冒険者は、ドラゴンの権利を主張しなかったのか?」
王の問いはもっともだ。
周りも疑心的に俺を見ている。
「はい。その方にはドラゴンの言葉が分からなかった事もあります。あのままでしたら言葉が分からずに攻撃されていただろうと。私がドラゴンと意思疎通を出来るのなら、こちらへ行く方が良いと判断して下さいました」
テオの事を思い出しながら、真剣に話すと、王はそうかと頷く。
「成程。帝国のドラゴンも、意思疎通が出来る者が居ると聞いている。平民の出だった為、ドラゴンを取り上げようとした貴族がドラゴンの怒りを買い、領地を焼き払われたのは帝国では有名な話だな」
「焼き払う…」
「帝国の伯爵家が一つ、急に姿を消したと話題になっていたが…まさか…」
ああ、そんな話、ギルドで聞いた気がする。
帝国で栽培に成功したグリーンドラゴンリーフは、元平民が管理をしていると。
ドラゴン欲しさに手柄を横取りしようとした、名ばかり伯爵の領地が焼け野原にされたと言う場所も、この目で見た。
綺麗さっぱり焼け払われ、爵位も返上したので、その土地は他の優秀な貴族が再利用する事になった様だ。
元平民は現在、皇帝により爵位を授けられ、ドラゴンと共にドラゴンリーフの栽培に従事していると言う。
周りの国では帝国に良い様にされていると噂されているが、平民の出で爵位を貰い、ドラゴンと和やかに過ごせているらしく本人は幸せだと聞いた。
他の国でお金を儲けるより、自国で爵位を貰い、ドラゴンとのんびり暮らしてお金を貰う生活の様なので、少し羨ましい感じもする。
レッドドラゴンリーフの出現で、その人の仕事が無くなったらと考えていたが、帝国のドラゴンリーフは体力回復に長けており、収穫もとても早いそうなので、それはそれで需要が確立されていると聞いて安心した。
「帝国の冒険者なら、その話も知っていたのだろう。基本ドラゴンは自分が選んだ人間にしか恩恵を与えぬ。お主が選ばれたと分かった時点で身を引いたのだろう。しかし、ギルよ。レッドドラゴンを連れ帰るとは…。やはりドラゴンはお主に懐いているのか?」
王の言葉に、懐いてはいるが…と考えてから言葉にする。
「心を許してはくれていますが、どちらかと言うと、父や兄に大変懐いております」
そう言うと、確かにとシェル様が笑いながら肯定してくれた。
周りの貴族は、辺境伯爵家は魔物討伐だけではなく、ドラゴンまでも手懐けるのかと青くなっていたが。
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