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33 推し達と最大の発表
しおりを挟む領民達を残し、俺達は広間の扉の前に立つ。
「ふむ。それでは行こうかの」
お祖父様の言葉に、静かに従者が扉を開く。
うわーひろーい。
人がいっぱいいるー。
針の様な視線を感じつつも、俺達は静かに父様の隣へ進む。
有名な魔術師のお祖父様は知られた存在だし、俺も優秀だと知られている。
その中でのジェレミー兄様の登場に、周りは息を呑む。
飛び抜けて美しく、そして亡くなったコリーヌ母様に生き写しだったからだ。
「コリーヌ…」
思わず王妃様が呟いてしまうくらい。
「コリーヌ嬢だ…」
「そんな、まさか」
周りの貴族達もヒソヒソし出す。
そうだよーコリーヌ母様に生き写しだよー。
母様に横恋慕していた貴族は、数人どころじゃないって知ってるからな。
この中にも何人も居るよね。
父様とシャル様が並び、その後ろにホセ兄様とフロル様とセルジオ様がいる。
お祖父様と俺はその後ろに並び、ジェレミー兄様はセルジオ様の隣に立った。
ジェレミー兄様とセルジオ様の服装は揃いの物だし、隣に立つと言う事で二人の関係は周囲に分かったようだ。
「…陛下。後ろは亡くなった兄の義父であるリネー伯爵と、今年学園を卒業するギルです」
父様からの紹介に、お祖父様と揃って頭を下げる。
「ヘロルト先生だ」
「あのご子息は主席だそうだ」
ヒソヒソと貴族の話を聞き流し、王の面を上げよの声に従う。
「そして、セルジオ様の隣が、ジェレミーです」
父様の言葉に、ジェレミー兄様が恭しく頭を下げた。
偽物を連れて来たのではと疑っていた貴族も、あまりにコリーヌ母様に似ているジェレミー兄様の登場に驚いていた。
王と王妃も同じ様で、王妃が思わず隣に伸ばした手を、王が優しく握っている。
「…面を上げよ」
静かに正面を向いたジェレミー兄様に、王妃様は言葉が出ないようで口元に手を当てている。
「陛下、本人証になります」
サーガルド伯爵が、王にジェレミー兄様の本人証を掲げると、王は王妃の手を離し下へ降りてくる。
「うむ。ジェレミーよ、こちらへ」
「はい」
王に促され、ジェレミー兄様は前に出る。
そして、両方の掌を差し出すと、サーガルド伯爵が陛下の指示でその上に本人証をかざし、陛下がそれを確認する。
「…本人で間違いないな。ジェレミー・ジュメル。今年で二十になる。病名に魔力拒否症と書かれている」
王の声に、周りは沸いた。
本人であり、魔力拒否症の患者で二十を超えているのだ。
「サーガルド。この診断はお主が過去にしたものである」
「左様でございます」
「うむ。再度診断をしてくれ」
「かしこまりました」
その流れで、今からジェレミー兄様の診断が始まると分かる。
サーガルド伯爵が、ジェレミー兄様に静かに手をかざすと、兄様の掌の上の本人証が光出す。
そしてその光が兄様を包む。
その光景の美しい事。
ジェレミー兄様天使みた~い!
周りは固唾を飲んで見守っている。
そして、光が薄らと消えていき、診断が終わったようだ。
「…陛下…っ!」
冷静沈着なサーガルド伯爵が、つい感情を出して王を呼ぶ。
「…!!!」
「治癒です…治癒でございます!!」
感情を抑えつつも、つい声が大きくなるサーガルド伯爵の発表に、ワァッと周りが沸いた。
「治癒だと!?」
「魔力拒否症に光が刺したぞ!!」
歓声が上がり、王家の面々も力強く拳を握って喜んでいる。
王は、初めて浮かび上がった魔力拒否症の隣の治癒の文字に、感動して震えていた。
「…ジャメル伯爵」
「はっ!」
「…難儀であったろう。良くぞここまで」
「…!光栄です!」
王からの言葉に、俺達は揃ってホッとする。
取り敢えず第一関門突破だ。
「…本当に魔力拒否症だったのか?」
「伯爵家の息子なら好きにできそうだしな」
やはりと言うか、そういった声が上がる。
待ってましたよモブ貴族!
その声を待ってたんだよ~。
俺はにやりと笑いそうになるのを堪え、父様の動きを待った。
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