転生腹黒貴族の推し活

叶伴kyotomo

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31 推し活の邪魔者は排除

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「リネー伯。これは一体…」

「リーナイト公爵家の控室に、無礼にも侵入しようとした奴らだ。私の孫が抑えておるがな」

衛兵の一人に尋ねられ、お祖父様は涼しい顔で答えた。

俺は、指をクルクル回して、腹這いのまま回してやる。

「や、やめ」

「く、くそっ」

周りからは、クスクスとした笑い声も聞こえた。

そして、呼ばれたであろうコンダック家の当主が、慌てて駆けて来る。

「ギルや。その位にしてやりなさい」

ようやく来た当主を確認したお祖父様が、終わりの合図を出す。

「はい」

クイッと指を動かして立たせると、六人とも壁にピッタリとくっ付けた。

一人だけ、俺の一割にも満たない力には抵抗出来そうな奴もいる。

確か一つ下の、化粧品の販売で有名な伯爵家の次男か三男だったな。

コイツだけは鍛えたら使えそうだな~。

「り、リネー伯爵。息子達が何か…っ」

汗か冷や汗かをハンカチで吹きながら、コンダック伯爵がお祖父様に詰め寄る。

正しく貴族な出立で、生地は黒だが、衿にはギンギラ装飾と毛皮の付いた下品なコート。

小太りで、どデーンとしたお腹と、茶色の薄い毛。

いかにもスケベそうなオヤジに、俺は冷たい視線を投げる。

では無いわ!コンダック伯爵は息子に礼儀も教えていないのか!」

「ひっ」

あ、コイツもお祖父様の教え子の一人だったな。

「こ奴らは、許しもなくこちらに来た上、リーナイト公爵家の控室に執拗に入ろうとしたのだぞ。無礼な!!私の孫がこうやって抑えておるが、もし力のない令嬢令息だったらどうなっていたか」

いつの間に周りに集まった貴族達も、うんうんと頷いている。

本当にそうだよね。

俺だからこんなに簡単に抑えてられるけど、他の令嬢令息だったら大変だ。

無理やり危害を加えられた被害者でも、婚約破棄されたりするんだから。

結構な問題行動だよ。

「も、申し訳ありません…」

息子の行いに青くなるコンダック伯爵に、お祖父様はフンと鼻を鳴らす。

「全く。私の孫は、ぞ。息子が可愛いのなら今後は気を付けよ」

「は、はい!」

昔から厳しく怖がられていたお祖父様を、と感じる位だぞ。

そんなニュアンスを含んだお祖父様の言葉は、さすがの伯爵も分かったみたいだ。

顔が青から白になってるよ。

どんだけ怖かったのお祖父様。

どんだけ俺を怖い設定にしてくれてんのよ。

まぁ、今後動き易くなりそうだから問題無いけどね。

「さ、そろそろ解放してやりなさい。お灸も十分据えたろう」

お祖父様は最後までコンダック伯爵を睨みつけていたが、後ろから来た人物に気が付いて俺に声を掛ける。

「はい」

サッと術を解くと、その場に情けなくへたり込む者も居る。

そこへ、ナートラ先生が到着した。

学園の先生は皆貴族の爵位を持っているので、本日も参加しているのだ。

ナートラ先生は、問題を起こした六人を見て眉を顰めてから、お祖父様を見る。

「久しいなヘロルト。全くこ奴らは」

「久しぶりだなナートラ。こ奴らを知っているのか?」

先生とお祖父様は友人同士で、昔から交流があるらしい。

お祖父様達にこ奴らを連呼され、さすがに馬鹿どもは小さくなっている。

「我が校の問題児ばかりだ。特にメーデフよ。今度学園内外で問題を起こしたら留年だと申したろうが」

「り、留年ですと!?」

白い顔をしていたコンダック伯爵が、悲鳴の様な声を上げる。

「コンダック伯爵。ご子息はちと問題を起こし過ぎですな。退学でもおかしく無いですぞ。他の五人も、追って沙汰があると思いなさい。さ、少し頭を冷やした方が良いでしょう。連れて行ってください」

ナートラ先生は、コンダック伯爵を冷たく突き放すと、衛兵に連れて行くように指示する。

めでたい日に投獄等は無いだろうから、取り敢えず城内というか敷地内から出されるようだ。

「は、はい。さ、行くぞ!」

「うう…」

数人の屈強な衛兵達に囲まれたら、ヒョロ貴族なんて赤子の様なもの。

情けないかな、項垂れて付いて行く。

「コンダック伯爵も同行願います」

「…うむ」

衛兵に付き添われ、ふらふらとコンダック伯爵も歩き出す。

その背中を見送っていたら、お祖父様にジトーッと見られている事に気が付いた。

「…手加減は十分しましたよ」

「…その様だな」

ちょーっと遊んでやっただけなのに。

ニッコリ笑うと、ナートラ先生が楽しそうに笑う。

「フォッフォッ。ヘロルト。お主の孫は優秀だ。安心したまえ」

「優秀過ぎるわ」

お祖父様のお小言を右から左に流しつつ、俺は会話の流れを変える事にする。

「お祖父様。先程の奴らの中に、化粧品販売で有名な伯爵家の息子が居たのですが」

「ふむ。ポプル伯爵か?あの年くらいなら、三男だろう」

急に話を変える俺にも、お祖父様は優しく乗ってくれる。

「はい。あの息子だけ、唯一私の魔術に反抗出来そうでした。まあ私は力を一割も使っていませんが。しかし、学生であの力に反抗できるのは捨てがたい人材です。伯爵家の三男で、商才は無さそうですが。鍛錬に付いて来れるのなら彼は化けますね」

「ふむ。ギルがそこまで言うのは珍しいな。後々実家から謝罪が来るであろうから、その時に話してみよう」

お祖父様も俺も、きちんと働ける人間は好きだから、可能性のある若者は潰さない主義なのだ。

だがメーデフ。

てめーは潰すがな。

そう思っていたら、王家の使いが俺達を呼びに来る。

良い気分転換も出来たし、そろそろ本腰を入れる時の様だ。














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