転生腹黒貴族の推し活

叶伴kyotomo

文字の大きさ
上 下
31 / 247

29 推しと社交の始まり

しおりを挟む

セルジオ様に促され、まずはお祖父様が外に出る。

周りの馬車からの視線を感じるが、皆こうやって情報を集めたり値踏みしているのだろう。

お祖父様は長らく学園でも教師をしていたから、挨拶にと出て来たい貴族も多いようだが、今回はリーナイト公爵家の馬車から降りて来たので、皆は様子を伺っている。

その中で俺が降りると、ドンク公爵家の馬車からドンク公爵が降りて来る所だった。

逞しく鍛えられた体に、短く切り揃えられた黒髪を後ろ手に撫で付け、鋭い瞳は髪と同じ黒色だ。

おいでなすったか。

公爵に続いて夫人と、もう成人している子息達が降りて来る。

長男は優秀な伯爵家の令嬢を娶っており、次男は独身貴族で、三男は先日皇太子殿下の婚約者の候補として発表があったばかりだ。

ドンク公爵もお祖父様の教え子のなので、こちらにやって来た。

ご家族は、お辞儀をすると先に城内へ入って行く。

入り口で一族同士でご挨拶をしていると、注目の的なので正しい判断だろう。

後で揃って挨拶する事になるしね。

「リネー伯爵。ご無沙汰しております」

「お久しぶりですなドンク公爵。ご子息も立派になられて。こちらは孫のギルです。今年卒業で、私がエスコートさせて貰うんですよ」

「初めましてドンク公爵閣下。ギル・ジャメルです」

お祖父様に紹介され、胸に手を当ててお辞儀する。

公爵は小さく頷くと、馬車に目を向けた。

「本日はリーナイト家の馬車で?」

周りも不思議に思っていただろう事を、ドンク公爵は聞いてくる。

「ええ、が、リーナイト家に嫁ぐことになりましてな。ああ、今降りて来ます」

ジャメル家の息子が?

不思議そうにドンク公爵は馬車に目を向け、そして息を呑む。

先に降りたセルジオ様に、恭しくエスコートされて降りてくる、天使のようなジェレミー兄様。

その姿は、コリーヌ母様に生き写しだ。

幸せそうに柔らかく微笑み、セルジオ様に腰を抱かれながら、こちらに歩み寄る。

美しく、とてもお似合いの二人の登場に、周りもシンとなる。

「ドンク公爵、お変わりないようで。こちらは、私の婚約者のジェレミーです」

セルジオ様がジェレミーを紹介すると、ドンク公爵は一瞬驚いた顔をした。

周りも、婚約者の言葉に驚いている。

「初めましてドンク公爵閣下。ジェレミー・ジャメルです」

兄様の初めての社交相手はドンク公爵か。

ま、悪い相手では無いかもな。

そう思いつつ、ドンク公爵の動向を伺う。

「ジャメル家の…そうか。ついにセルジオ殿にも婚約者が。おめでとうございます」

「ありがとうございます」

祝福しつつも、ジェレミー兄様から目が離せないドンク公爵に、お祖父様が小さく咳をする。

「リーナイト公爵もいらしたようだ。我々も中に入りましょう」

「…ええ。それでは私は先に失礼します」

父様達を乗せた我が家の最新型の馬車が到着すると、ドンク公爵はそのまま城へ入って行く。

セルジオ様を見ると、軽くウインクされた。

先程の話を聞いて、ドンク公爵にも釘を打ったんだろう。

我が家の馬車が着くと、周りの貴族達が騒ぎ出す。

そりゃそうだ。

俺が監修した最新型だからな。

周りは魔術を掛け頑丈にし、焦茶色で艶を出したボディには、金細工を施してある。

豪華絢爛ではないが、最近の帝国で流行っている美しくスタイリッシュな馬車だ。

中にも拘り、ソファの座り心地や背もたれまで力を入れてある。

その馬車から、まずはホセ兄様が降りてくる。

長身と引き締まった体が分かる出立に、周りから黄色い声が上がる。

こちらも帝国の流行を少し入れた肩から流れる金糸のデザインが良く似合っている。

一応辺境騎士なので、腰には剣を携えている。

そして、恭しくフロル様をエスコートすると、揃いの衣装は良く映えた。

周りから感嘆の声が聞こえる程だ。

その後に続いて、父様が降りてくる。

がっしりとした体を格好良く際立たせている、黒と金糸の多いコートと腰の剣。

そして、胸の勲章が父様の活躍を物語っていた。

「さ、シェル」

「ありがとう」

その父が、シェル様をエスコートしている。

父とは揃いでは無いが、黒と銀糸の多いコートは、まるで対の様だ。

思わぬ組み合わせに、周りも騒いでいるが、気にせずに場内へ入る。

「取り敢えず、周りの貴族には我々が深い関係だと印象付けられたな。ジャメル領の領民は裏から隣の部屋へ案内される。発表が始まるまでは、こちらの部屋で待とう」

シェル様の言葉に、皆は頷いて用意されていた部屋へ入る。

ソファとテーブルのセットが三つ用意され、他にも椅子がある、広い部屋だ。

ここからが正念場。

サッと部屋に魔術を掛け、話が漏れない様にする。

そして王家への発表を前に、最後の作戦会議が始まった。





しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

【BL】婚約破棄で『不能男』認定された公爵に憑依したから、やり返すことにした。~計画で元婚約者の相手を狙ったら溺愛された~

楠ノ木雫
BL
 俺が憑依したのは、容姿端麗で由緒正しい公爵家の当主だった。憑依する前日、婚約者に婚約破棄をされ『不能男認定』をされた、クズ公爵に。  これから俺がこの公爵として生きていくことになっしまったが、流石の俺も『不能男』にはキレたため、元婚約者に仕返しをする事を決意する。  計画のために、元婚約者の今の婚約者、第二皇子を狙うが……  ※以前作ったものを改稿しBL版にリメイクしました。  ※他のサイトにも投稿しています。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

転生して悪役になったので、愛されたくないと願っていたら愛された話

あぎ
BL
転生した男子、三上ゆうきは、親に愛されたことがない子だった 親は妹のゆうかばかり愛してた。 理由はゆうかの病気にあった。 出来損ないのゆうきと、笑顔の絶えない可愛いゆうき。どちらを愛するかなんて分かりきっていた そんな中、親のとある発言を聞いてしまい、目の前が真っ暗に。 もう愛なんて知らない、愛されたくない そう願って、目を覚ますと_ 異世界で悪役令息に転生していた 1章完結 2章完結(サブタイかえました) 3章連載

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)

かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。 はい? 自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが? しかも、男なんですが? BL初挑戦! ヌルイです。 王子目線追加しました。 沢山の方に読んでいただき、感謝します!! 6月3日、BL部門日間1位になりました。 ありがとうございます!!!

処理中です...