転生腹黒貴族の推し活

叶伴kyotomo

文字の大きさ
上 下
29 / 247

27 推しと王都での支度

しおりを挟む

二週間後に王家主催のパーティーを控え、俺はダンスパーティーのお相手探しをする事になった。

父様か兄様かと思っていたが、アレよアレよとお相手が決まったし、結婚や婚約する訳では無いから令嬢を誘うのも気が引ける。

そこで、ダメ元でお祖父様を誘うと、何と快諾されてしまった。

「まさか孫と踊れるとはな。長生きするもんだ」

「お祖父様は十分お若いですよ」

一緒にこっそり王都に来たジェレミー兄様に褒められ、満更でも無い顔をしている。

黒々した髪を撫で付け、綺麗に整えられた口髭は紳士そのもの。

体も鍛えているので、そこら辺のご老人とは全く違って若々しい。

昔から大層モテていたようで、今回もちらほらご婦人からお誘いがあった様だが、全て断っていたそうだ。

お祖母様一筋で、亡くなってからも誰ともダンスには参加しなかったそうだからな。

それでも嗜みとしてダンスは踊れると言うから、凄い。

「さ、お茶に致しましょうか。今日は王都で流行りのパイを買って参りました」

「わぁ。美味しそう」

長年お祖父様の屋敷に仕えるメイドのスーザンが、お茶の支度をしてくれた。

王都ではレモンなどの柑橘のパイが流行っており、とても爽やかな香りが漂っている。

ジェレミー兄様をこの屋敷に連れて来た時、長年仕えてコリーヌ母様を知っている者達は、いたく感動して涙を流した。

生き写しの様にそっくりで、美しく優しいジェレミー兄様は、あっという間に受け入れられ、ホッとしていた。

あ、俺も可愛がられているけど、ホラ、チートだから。

ジェレミー兄様みたいに優しくないし、腹も黒いから。

お祖父様と結託して、気に食わない貴族嵌めたりしてるの知られてるしね。

それでも自由にさせてもらってるから、ありがたいよね。

「ギル。パーティーの前の発表で今回のモノを話すのだろう?発表の際は当主と次期当主だけが出席するのだが、今回の発表の時は一家総出になるだろう。その時には私も行く手筈になっているが、ジェレミーも一緒に出るのか?」

「はい。もちろんですよ」

「ふむ。セルジオ殿にはしっかりエスコートして貰わなくてはな。変な虫がうじゃうじゃ居るからな」

「お祖父様ったら」

ジェレミー兄様は笑っているが、その通りだ。

兄様が社交界に出たら、それはそれは大騒動だろう。

俺は色んな意味で恐ろしいと言われているのは知っているし、自分で撃退するのも好きだから良いんだけど、ジェレミー兄様の美しさは女神級だ。

しかも、かつて色んな殿方を袖にしたコリーヌ母様に生き写しなのだ。

俺は知っている。

両親が死んでから、両親の墓にこっそり墓参りに来た貴族達を。

そして、お祖父様にも色々と聞いているので、母様に片思いをしていた貴族は多いのだ。

死んでからもその熱は冷めず、お祖父様の家に滞在している俺に婚約の話が来たりしたが、残念ながら俺はお祖父様似だし、強いし怖いしチートだからか、婚約話はあっという間に無くなった。

自慢じゃないが、俺はそれなりに剣の腕も立つ。

勉強も魔術も俺以下のヤツに興味は無かったし、女の子にも興味はなかった。

ホセ兄様は辺境騎士団団長という猛者だし、ジェレミー兄様の事は伏せていたのでこちらに接触は無かったのだが。

そいつらがジェレミー兄様を見たら、自分の子供の婚約者に熱望したり、下手したら自分の後妻にと動こうとする事は容易に想像できる。

「当日はセルジオ様がジェレミー兄様を迎えにいらっしゃいます。父様とホセ兄様がそれぞれフロル様とシェル様をエスコートするので、俺とお祖父様はセルジオ様達の馬車にご一緒する事になっています」

「うむ。それなら問題なかろう」

上位貴族には、それぞれ個室が用意される。

今回は、リーナイト公爵家の個室に、俺達も待機させて貰う事になっているのだ。

個室と言っても広く、その隣の部屋に領民達も待機できるよう取り計らってくれた。

他の貴族より先に城へ入れるのも利点だ。

「緊張してきたな」

ジェレミー兄様は、これから嫉妬や羨望や欲望の視線に晒されてしまうのは避けられない。

しかし、セルジオ様の隣に堂々と立つ為だと、それにも負けないよう頑張ると言っていた。

長年の病気の苦しみに比べたら、きっとなんて事ないよ。

ジェレミー兄様は美しい。

そして、やはり強いのだ。




しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

【BL】婚約破棄で『不能男』認定された公爵に憑依したから、やり返すことにした。~計画で元婚約者の相手を狙ったら溺愛された~

楠ノ木雫
BL
 俺が憑依したのは、容姿端麗で由緒正しい公爵家の当主だった。憑依する前日、婚約者に婚約破棄をされ『不能男認定』をされた、クズ公爵に。  これから俺がこの公爵として生きていくことになっしまったが、流石の俺も『不能男』にはキレたため、元婚約者に仕返しをする事を決意する。  計画のために、元婚約者の今の婚約者、第二皇子を狙うが……  ※以前作ったものを改稿しBL版にリメイクしました。  ※他のサイトにも投稿しています。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

転生して悪役になったので、愛されたくないと願っていたら愛された話

あぎ
BL
転生した男子、三上ゆうきは、親に愛されたことがない子だった 親は妹のゆうかばかり愛してた。 理由はゆうかの病気にあった。 出来損ないのゆうきと、笑顔の絶えない可愛いゆうき。どちらを愛するかなんて分かりきっていた そんな中、親のとある発言を聞いてしまい、目の前が真っ暗に。 もう愛なんて知らない、愛されたくない そう願って、目を覚ますと_ 異世界で悪役令息に転生していた 1章完結 2章完結(サブタイかえました) 3章連載

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)

かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。 はい? 自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが? しかも、男なんですが? BL初挑戦! ヌルイです。 王子目線追加しました。 沢山の方に読んでいただき、感謝します!! 6月3日、BL部門日間1位になりました。 ありがとうございます!!!

処理中です...