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18 推し達の距離間
しおりを挟む「薬草園をご案内します」
「楽しみだ」
和やかに、ジェレミー兄様とセルジオ様が並んで歩いている。
父様は先に行き、ドラゴンに説明をしている。
あの後、一通り説明を受けたセルジオ様は、すぐに色んな案を出してくれた。
学園の卒業前に行われる王家主催のパーティーは、貴族の交流会はもちろんの事、それぞれの公爵家や貴族が、王家や他の貴族に新しい商品や自分の功績などを紹介する場でもある。
辺境伯爵家が発表となると、毎年魔物の討伐なのだが、今年はリーナイト家が後ろ盾になって大々的にレッドドラゴンリーフの発表をしようと言う。
治験に参加した領民の招待も、公爵家が行ってくれる。
リーナイト公爵家が動いてくれるのなら、この上なくスムーズに行きそうだ。
「ようやくここまで来たな。無茶は感心しないが、頑張ったな。ギル」
「ホセ兄様…」
ホセ兄様と一緒に、笑顔でセルジオ様を案内するジェレミー兄様を見つめる。
ホセ兄様も、俺と同じように薬草や病気の情報を探し回っていた事を知っている。
家族が、皆で回復を願っていたのだ。
「明日は公爵と、ギルの同級生が来るんだったな。…父様の想い人か」
「ホセ兄様も知ってたの?」
驚いたように聞くと、苦笑していた。
「ああ。色々俺も情報を仕入れていてな。どうやら父様の片思いだけでは無かったようだぞ?今回の事もだが、父様にも幸せになって欲しいからな」
片思いだけではない?
もしかしてあのペンダントは。
俺は、父様と良く似た色違いのペンダントをしていた公爵を思い出す。
「あのね、実はリーナイト公爵が父様と同じ様なペンダントをしていたんだ」
「あの五角形の?あれは王都の宝石店で特別に注文して作った物だそうだぞ」
特別に注文。
つまり既製品では無いのか。
「…父様はあれを見て一人で酒を飲んでいる事が良くある。いつもは服の下に隠しているがな。…ギル。お前ならあのペンダントをこっそり首から落とす事が出来るか?」
「ええ?落としてどうするの??」
ホセ兄様のいきなりの提案に、訳が分からず驚いていると、ホセ兄様はニヤリと笑う。
「公爵の前で、だ。もしもお互いのペンダントがお互いに関係するのなら…な?」
「なるほど」
公爵の前で落とし、もし何かしらのアクションがあれば…。
恋愛にはちょっとしたスパイスが必要とは言うし、ちょっとしたきっかけも必要だよね。
そうやって、俺とホセ兄様はイタズラっ子の様な顔で約束をした。
「こちらです。足元にお気をつけて…わっ!」
「おっと」
言った側から、ジェレミー兄様が小石に足を取られる。
「ごめんなさいっ」
「いや、気にしないで。さ、行こう」
ガシッとセルジオ様が支え、ジェレミー兄様が照れながら笑う。
気にしないでと言いながら、エスコートする様手を握っているのはどう言う事なんでしょうね。
二人の甘い空気に、俺とホセ兄様は顔を見合わせて笑った。
「これはこれは…。ジェレミーに春が来たのでは」
「春が来たのはセルジオ様もでしょうよ」
ジェレミー兄様にお相手なんて!って気持ちもあるが、セルジオ様なら申し分が無い。
これは中々良い案ではと、頭の中で盆踊りを開催しながら、ドラゴン達とレッドドラゴンリーフの説明に着いて行く。
セルジオ様は、ドラゴンと会話をするジャメル一家に大変驚いていた。
どうやらドラゴンと会話が出来るのは、ジャメル家の人間だけだった。
ドラゴン達からレッドドラゴンリーフの販売の許しは出ていたので、セルジオ様がその核になるという紹介をした。
その後、収穫した葉の収納庫やら周りの警備やらを説明し、その日はお開きとなったのだった。
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