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17 推し達との共闘
しおりを挟む俺の魔力の事やテオの事は隠し、色々な所を端折りながら、俺はセルジオ様に説明をした。
セルジオ様はもう感情を隠さずに、ジェレミー兄様を見つめている。
「大変だっただろう…。素晴らしい回復だ。レッドドラゴンリーフは成功したんだな」
「はい」
ジェレミー兄様は力強く頷いた。
ジェレミー兄様が歩ける様になった日から、三日後には大量のレッドドラゴンリーフが収穫出来たのだ。
もちろんドラゴン達にも奉納し、残りは大事に大事に乾燥して保存した。
収穫した次の日には新芽が出てくるのだが、次の収穫は十日程掛かる事も分かった。
週に一回の予定の薬湯は、毎日ジェレミー兄様に出され、兄様の回復は目に見えて分かった。
一ヶ月も経つと、痩せこけた顔や痛んだ髪は綺麗になり、食欲も戻って来ていた。
「父様。俺、ジェレミー兄様の診断をやってみるよ」
「診断!?ギルはもうそんな事も出来るのか」
産まれてから行う適性診断は、魔術を使う為、通常魔術師が行う。
難しいとされているが、チートな俺は早くにその能力を開花させていた。
診断の際は、一枚の魔力の籠った紙も使用される。
診断後その紙に触れると、名前や生れ、病気を持っていたらその文字が浮かび上がるのだ。
貴族の情報は、そのまま城に保管され、写しが本人に渡される。
本人証と言われるその紙は、平民の場合も領主が写しを保管し、原本は城に保管される仕組みだ。
父様がジェレミー兄様の本人証を持ってくると、やはりそこには魔力拒否症の文字があった。
「新しく診断をして、病気が回復に向かっていたら、回復中などの文字が出るようになっている。完全に治癒になったら、その病気の名前の隣に治癒と文字が出てくるはずだ」
祖父に教わった通りに、ジェレミー兄様に負担を掛けないように最新の注意を図りながら診断をする。
そして紙に触れると、魔力拒否症の隣に、回復中という文字がしっかりと浮かび上がったのだった。
あの時は歓喜に沸いた。
どんな薬を使用しても、回復中という文字は出た事が無い。
それがこの世の常識であったのだ。
その後も、俺たちは忙しくなった。
すぐにでも発表をしたかったのだが、ジェレミー兄様の回復だけでは難しかったのだ。
その頃すでにお生まれになっていた、魔力拒否症の王子の存在を知り、王都やその他でも詐欺まがいの薬が横行して問題になっていたのだ。
我が子の病を治せるならと、金に糸目を付けない王家や貴族を狙った犯罪も起こるようになり、薬草の発表にはきちんとした研究データや、治験対象者の情報開示が求められた。
一人の貴族の話なら、捏造出来ると言う声も出てくるのは分かっていたし、辺境伯爵を馬鹿にしている王都の貴族連中を納得させるには、もっとデータが必要なのだ。
そこで、父様は領地の民の魔力拒否症の子供達を、治験対象に出来ないかと考えた。
子供達というのは、やはり大人になっている者は居なかったからである。
ジェレミー兄様の様に、ドラゴンリーフや高価な薬草で症状を抑える事の出来ない平民の魔力拒否症の者は、やはりもっと寿命が短くなってしまうのだ。
父様は領地に集められている本人証から、わざわざ家を訪ね歩き、治験者を集めたのだ。
すると、治療が必要な五人の患者が集まった。
集まったというか、ジュメル領地に存在する魔力拒否症の者全てが、治験を希望してくれたのだ。
家族の皆にも口止めの魔術を掛けつつ、伯爵家領地内に新設した治験用の建物に暮らしてもらうようにした。
下は一歳から上は十三歳の五人は、高価な薬草など手に入らない状況なので、早くから症状が出ており歩くのもままならない状態であった。
『どうか、この子に希望があるのなら』
泣きながら喜ぶ親達に、父様は気が引き締まる思いだと言った。
その後、祖父にも口止めの術を掛けて全てを話すと、祖父は俺の帰省に付いて来た。
亡くなった愛娘にそっくりなジェレミー兄様は、魔力拒否症。
会いたくても、自分も名の知れた魔術師。
回復方法も無く、一目会うことも諦めていた孫の回復に、祖父は涙を流して喜んでいた。
母にそっくりに育ったジェレミー兄様の回復に、レッドドラゴンの事で叱られはしたが、許してもらえた。
そして、三年近くの年月を掛け、俺たちは皆の治癒を手に入れたのだ。
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