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13 推しとの協力
しおりを挟む「…出産には何が必要なんだ」
俺が静かに声を掛けると、大きなドラゴンは静かに俺を見据えている。
『お主に何が出来る。この地には赤い葉も無い』
赤い葉?
レッドドラゴンリーフか!!
「テオ、レッドドラゴンリーフ今持ってる!?」
「あ、ああ」
俺とドラゴンの会話を不思議そうに見ていたテオに、レッドドラゴンリーフを強請ると、すぐさま腰の袋から取り出す。
手の平に収まるサイズの、真っ赤なギザギザした葉だ。
『なんと!!赤い葉を持っているというのか!!』
ドラゴンの声にコレだと確信し、俺はテオに頼み込む。
「テオ、コレをドラゴンに渡しても良い?お礼は必ず準備するから」
「分かった」
「ありがとう!!」
テオに礼を言うと、レッドドラゴンリーフを手に取り、ゆっくりとドラゴンに近づく。
『…良いのか人間よ。その葉は人間にとっても貴重なモノであろう』
「良いよ。さあ」
俺はゆっくりとドラゴンの側に葉を置くと、テオの側に戻る。
テオは、俺を守る様に両腕で抱き締めてくれる。
子を産もうとしているドラゴンが葉を口にすると、先程までの呻き声が落ち着き、呼吸が落ち着いてくる。
そして、小さな白い光がお腹から溢れ出す。
「これがドラゴンの出産か…」
「キレイだね…」
キラキラとした光がドラゴンを包み、大きな渦を巻きながら卵の形になっていく。
そして、ゆっくりと形になったソレは、コツンと音を立てて地面に転がった。
出産を終えたドラゴンが優しく語りかけると、卵は宙に浮きピッタリと脇に収まった。
大人の顔の大きさ位の卵は薄いピンク色だ。
他のドラゴンは黒か緑が多いので、やはりレッドドラゴンは違うのだと分かる。
見惚れていると、大きなドラゴンが愛おしそうに小さなドラゴンに頭を擦り付け、こちらを見た。
『人の子よ。我が名はファビ。こちらは妻のキャルだ。まさか赤い葉を持っているとは…。礼を言おう。何を望む』
ファビと名乗ったドラゴンが、機嫌良さそうに話しかけてくる。
レッドドラゴンリーフと言いたいが、先程無いと言っていたし。
レッドドラゴンリーフはテオに貰ったモノだし。
ドラゴンに願いを叶えてもらえるチャンスなんて、そうそう無いことだけど。
俺だけの一存ではいけないと、テオを見る。
「テオ。こちらのドラゴンがお礼で何を望むかって聞いているんだけど…。レッドドラゴンリーフはテオのだったし」
「!?」
ドラゴンからのお礼の提案に、さすがのテオも驚いていた。
「ギー…。確かにあの薬草は俺のモノだったが、君がドラゴンと会話が出来なければ渡すことも出来なかった。出産前で気の立ったドラゴンに襲われてもおかしくない状態だったんだ。俺も君にお礼を言わないといけない立場だよ。礼はギルが貰うべきだろう。ここには目当てのものは無い様だが、ドラゴンに聞いてみたらどうだ?」
テオの言葉に、希望が湧いてくる。
「俺がお礼を貰ってもいいの?」
「もちろん」
「ありがとう」
力強く頷いてくれるテオに、ホッとしながら礼を言い、俺はドラゴンに向き直る。
「実は、レッドドラゴンリーフを探しているんだ」
俺がそう言うと、ファビは目を見開いた。
『??先程のものはどうしたのだ』
「こちらのテオが手に入れてくれたんだ。あまり人間の世界でも出回るものでは無いし、俺はレッドドラゴンリーフを自分の所で栽培したいんだ」
『…理由は何だ』
ファビに聞かれ、俺は兄様を救いたい為に薬草を探し回っている話した。
魔力拒否症という病気の事。
出回っているドラゴンリーフでは、一時的に現在の症状の緩和をする事しか出来ず、病状の進行は止められない事。
レッドドラゴンリーフになら何か効能があるのではないかと探している事。
ドラゴンは静かに話を聞いていた。
『魔力拒否症…。我らレッドドラゴンと似た症状であるな』
「似た症状!?」
レッドドラゴンて最強クラスの強さじゃないの!?
どう言う事かと聞くと、ファビはレッドドラゴンの成り立ちについて教えてくれた。
レッドドラゴンは、他のドラゴンとは違い魔力に対する免疫を持たずに産まれてくる。
その為にレッドドラゴンリーフが必要なのだとか。
ファビの説明をテオに通訳のように話しながら、俺達は会話を進める。
「しかし、ここにはレッドドラゴンリーフは無いのだろう?なぜ二匹はここに?」
テオの問いに確かにと思い、ファビに問うと、ファビの後ろにいたキャラが静かに説明を始める。
『私達は雄同士の番。子を成す可能性が低いとしてそれぞれが別の相手をあてがわれたが、私達はそれを望まなかった。共に生きる為に、群を出てこの地に来たのだ』
そして、子供を成す事は出来たのだが、体力が持ちそうになかったという事だった。
「群れが居る所にはレッドドラゴンリーフが自生してるって事?」
『いいや、違う。我らが産まれる時に授けられているものが赤い葉だ』
「授けられている…?」
頭が混乱していると、二匹のドラゴンは卵を見つめる。
『この子が産まれた時に、必ず手にしている。それを地に植えると育つのだ』
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