転生腹黒貴族の推し活

叶伴kyotomo

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2 推しの人生に要らない者

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「私。ですが、すぐお隣が帝国ですので色んなお話がすぐに入ってくるんですよ」

ニコニコしながら意味ありげにリリーを見ると、フンと鼻で笑っているが、いつまでその態度でいられるかな。

「帝国では近年、貴族間で非常に恥ずかしい騒動があったようで。ねぇリリー嬢。の貴女はもちろんご存知ですよね?」

当事者を強調して言うと、リリーは両目を見開いて驚いていた。

少しずつ、顔色も悪くなっている。

いやぁ、そんなに怯えられるとやりがいがありますわぁ。

俺の話をしている間に、フロル様は俺の指示を聞いてくれた、フロル様の友人達によって後ろ側へ身を隠すように下がった。

そして、話を聞きつけたヨハン弟であるアルミスがこの事態を見守ってくれている。

アルミスは兄とは違い、話の分かる優秀な貴族だ。

黒髪で緑眼の彼は子猫のように愛らしい容姿をしているが、芯はしっかりしており公爵家の事をきちんと考えている。

兄の行動にも頭を悩ませていた所を突いて、今回の見届け人になる様に、裏から手を回しておいた。

「お前は一体何の話をしているのだ」

話の読めないヨハンがイラついた声を出すが、今の話の流れで察しのつかないヨハンにこちらがイラつく。

「ヨハン様は察しが悪い様ですので、私が簡単に説明しますね。そちらのリリー嬢は、帝国内で不特定多数の既婚未婚を選ばず貴族・貴族以外の異性と関係を持った事で国を追われた令嬢なんですよ」

「なっ!?」

「えっ!?」

「うわぁ…」

ヨハンも驚いていたが、話を聞いていたギャラリーからも声が上がる。

フロル様もさすがに驚いたようで、手で口元を押さえている。

分かります。

貴族でしかも学生で、既婚未婚を問わず身分の差も問わず異性と関係を持つって、中々すごいよな。

俺はコッソリ隣国のギルドに登録して活動しているんだけど、まぁ彼女の噂話はすごかった。

もちろん帝国の貴族の醜態なので外国には漏らしたくない話なのだろうが、色んな男に手を出しまくっていたリリーはそれ以上に恨みも買っているわけで。

相引きの時に利用した宿屋やら、店やら場所やら何やらかんやら。

可哀想なくらい筒抜けになっていたのだ。

帝国では厳しい修道院へと送られたとなっていたが、彼女に甘い親族が裏から手を回していた様で、我が国にお忍びで留学となった様だ。

隣国なんて近すぎるし、そんな令嬢なら監視くらい付けなければ結局はなるのに、何か目的でもあったんだろうね。

「しっかり反省するように言われていた様ですが、もしやこちらでも同じような振る舞いをするとは子爵も大変ですねぇ。そもそも、フラネス子爵家とは存在しないそうで。本当はパッショル子爵家でしたね。リリー嬢と関係を持ったのはいる様ですし、そちらの達も大激怒しているみたいですね。そろそろパッショル子爵の元へ抗議のお手紙が届く頃では?」

「なっ複数名…!?」

自分だけと思っていたようで、ヨハンは驚愕の顔でリリーを見ている。

先程の愛しい者のはずなんですがね。

「そ、そんなの嘘ですわヨハン様!この人嘘をついてるんですよ!」

真っ青になりながらヨハンに縋るリリーに、ヨハンは確かにとこちらを睨み付けてくる。

「私が嘘をつくメリットなど何処にもありませんが?貴女が帝国で行ったことは事実でしょう。調べればすぐに分かる事ですよ。と言うか、すでにこちらに話が回って来ています。知っている人は知っている話です。こちらでの振る舞いも何人も証人がいらっしゃいますからね。すぐにでも子爵からご連絡が来るのでは?」

ハッキリと言い切ると、一人の令嬢がこちらに歩み寄ってきた。

キラキラな金髪縦ロールの似合う、美少女であるプラム伯爵家のハイリ嬢である。

王都近くで手広く作物を作っている為、トーレ王国の台所の一つと言われている大きな一族の令嬢である。

「ハイリ嬢?」

訝しげなヨハンには目もくれず、ハイリ嬢はリリーを見据える。

「リリーさん。私の従姉妹の婚約者が随分とお世話になったようね」

「ヒッ!」

何故それを?という様にリリーはまたも目を見開く。

「聞いたところ、他にもお相手が沢山いらっしゃるのね。驚いたわ。そちらのお家の方々も貴女のご実家に抗議のお手紙を送ったそうよ」

キッパリとハイリ嬢が告げると、そんなつもりは…とリリーは怯えだす。

「まぁ。でしたらどんなおつもりで?貴族である以上、他の婚約者のいらっしゃる殿方との接し方位学んでいるはずでしょう?帝国でもこちらでも何がしたかったのか分かりませんが、そろそろ恥をお知りになったら?ご実家から絶縁か修道院かは存じませんが、ご自分のしでかした事をキチンと反省なさることね」

美少女の怒りは怖いなと思いつつ、ハイリ嬢が言いたいことを言うまでしっかりと待つ。

言いたいことを言ったハイリ嬢は、真っ青なリリーを一瞥すると、俺に向き直る。

「ギル様。私の親族や親しい友人以外も被害に遭っておりますの。こちらの文書、よろしかったら使ってくださいませ」

そう言って、ハイリ嬢は俺に分厚い封筒を手渡す。

多分中身は被害にあった方々のリストだろう。

「ありがとうございますハイリ嬢」

「いいえ、こちらこそ一早く情報を頂けて助かりましたわ。父や親族も大変感謝しておりました。それでは、私も動かなくてはなりませんので。ご機嫌よう」

「ご機嫌よう」

ハイリ嬢はそれだけ言うと、ヨハンやリリーには目もくれずその場を後にする。

動くと言うことは、今回の件についてお家ごと動くのだろう。

ニヤリとしつつ、俺はヨハンに向き直る。

「ヨハン様」

「な、何だ」

さすがにハイリ嬢の発言が効いた様で、ヨハンの返事が弱くなっている。

「今回の件はご実家にも報告が行くと思いますよ。今日は大人しくご帰宅されたらよろしいのでは。ね、アルミス様」

すぐ近くまで近づいていた弟に、ヨハンは驚く。

「あ、アルミス」

「…兄様。今日という今日は許しませんよ。さ。帰りますよ。ジェフ、お願いします」

アルミスは逆毛を立てる猫のように怒っていた。

そして、幼馴染で婚約者でもある伯爵令息のジェフを呼びつけると、数人の生徒と共にヨハンを取り囲む。

「ギル殿、フロル様。愚兄が申し訳ございません。お詫びは必ず。お先に失礼させて頂きます」

そう言って俺とフロル様に頭を下げると、そのままヨハンを連れていく。

そして、その場に残されたリリーに、学園の女性職員が声を掛ける。

「リリー・フラネスですね。お父上から急ぎのご連絡とのことで使者の方がいらしています。付いて来てください」

「…はい」

そう言ってその場を後にするリリーは、俺に視線をよこしたが、ニッコリと目は笑わずに笑顔を向けると、意外にも俺を睨みつけてくる。

そして、廊下の柱の裏に居る令嬢に縋るような目を向けていた。

ほほう?

多分それ相応の処分が下るだろうけども、これは注視しとかないといけなそうだね。



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