転生腹黒貴族の推し活

叶伴kyotomo

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1 推しの婚約者

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「ヨハン…。そちらの令嬢との噂が大きくなっている。いい加減節度を守ってくれ」

学園の中庭で、フロル様は婚約者であるダイヤ公爵家のヨハンに苦言を呈していた。

ヨハンはこの国の三大公爵の一つ、ダイヤ公爵家の嫡男である。

無造作な茶髪と緑の瞳を持つ、チャラチャラした見た目のまぁまぁのイケメンではある。

しかしまぁ良い所の坊ちゃんが少し不良ぶってみました系の、いわゆるヒョロ貴族でもある。

俺はこのヨハンが気に入らなかった。

俺を馬鹿にしてきたこともだが、婚約者であるフロル様に対する態度の悪さは目に余るものがある。

今も、婚約者であるフロル様がいらっしゃるというのに、明らかに見た目の劣るケバケバしい令嬢をそばに置いている。

「いい加減にしろフロル!!貴様とはなんだ!俺が誰を愛でようが俺の自由だ!」

「怖いですわぁヨハン様ぁ」

ヨハンにしだれ掛かるようにくっつく令嬢は、帝国から留学してきたのリリー・フラネスだ。

帝国のフラネス子爵家の令嬢で、ふわふわ茶髪でクリクリな茶色い瞳が男子生徒に大人気!気取りが痛い令嬢である。

去年こちらに留学に来たのだが、男好きのようで色んな男子生徒と浮世を流している。

見た目は中の上にもならず、スタイルも特別良い訳でもない。

しかし男好きしそうな仕草や話し方、甘え方を熟知しているようで、ついつい鼻の下を伸ばす馬鹿な貴族が多いようだ。

「大丈夫さリリー。俺が守る」

「ヨハン様ぁ」

婚約者がいる、しかも貴族の令息が他の女子生徒にうつつを抜かすなど、どういった弊害があるのかも理解できないヨハンに頭痛がする。

数ある中庭の中でも小さい中庭だが、人目は十分にある。

先程から呆れたような視線を投げている感覚がまともな生徒や、面白いものを見るような顔をしている生徒達の視線に、被害者であるフロル様が晒されているなど腹立たしい。

フロル様の友人達も心配そうにハラハラしており、ここは一肌脱ぎましょうかと前に出る。

まぁ、一肌脱ぐどころかヨハン達の息の根を止めるつもりなんですけどね。

「おやおや。卒業前というのに、いつまで学生気分でいるつもりなんでしょうねぇ」

ワザとらしく馬鹿にしたように話しながら、フロル様を庇うように前に立ち、ヨハンを睨みつける。

「ギル殿…」

少しホッとしたようなフロル様の声に感動しつつ、それを顔には出さずに大丈夫ですよと頷いて見せる。

「なんだ。ではないか。何のつもりだ」

俺を見て小馬鹿な態度を取るが、ヒョロ貴族には魔力も武力も負ける気はしないので、フンと鼻を鳴らしてやる。

「あなたは良く私を田舎者と言いますが、すぐはそちらの女性の故郷の帝国だって理解できてます?」

小馬鹿どころか心底馬鹿にしたように言うと、ヨハンは苛立った顔になる。

三大公爵家の嫡男ともあろう男が、感情を顔に出しすぎじゃない?と心底呆れつつ、ヨハンの隣でシナをつくっているリリーに視線を向ける。

「確か令嬢は帝国からというテイでいらしているのですよね?」

「何が言いたいのかしらぁ。ヨハン様ぁ」

「貴様、さっきから何のつもりだ!」

遂に声を荒げ始めたヨハンに、両肩をすくめて見せる。

相変わらず気の短い男だ。

きっと色んな所も短いんだろうなこの腐れち○こ野郎は。

そんな事を考えていることはお首にも出さず、俺は目の前の腐れ外道どもを地獄に送るための演説を始める。






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