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第〇章・プロローグ――ミゼル
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「それでは班の発表をします。名前を呼ばれた者は前へ出て、手帳を受け取るように」
ライプフェルト大学のA棟第三講堂の、すり鉢状に並べられた席に着く四十人強の最終学年生を前にして、最終学年についての一通りの説明を終えたヘルガ・ビルギット・ハルストレムが言った。ハルストレムは恰幅のいい、ライプフェルト大学初とされる女性校長。彼女もまた魔獣士であり、一つの班番号につき三、四人ずつの学生の名前、そして担当講師の名前を読み上げていく間、赤い獅子の姿をした魔獣は行儀良く彼女の脇に座っていた。
名前を呼ばれた学生が、教卓で校章の入った深緑色の手帳を受け取って席に戻る。それを繰り返して、徐々に教卓に置かれた手帳は減っていき、
「――第十二班。エイミー・アルトナー、ラルフ・ニクラス・ベックマン、エミリオ・コルネット、フランシスカ・シュッツ。担当講師、クリストフ・デュクドレー」
シスカとエイミーを含む班が呼ばれた。名前を呼ばれた四人は講堂中央の階段を降り、教卓へと向かう。
十二班のうち、最初に手帳を受け取ったのはエミリオ・コルネット。どこか幼さを感じさせる顔立ちと短い黒髪を持ち、白いインナーに前開きの黒い長袖シャツを羽織った男子学生。黒いズボンの脇、ベルトに掛けて留められた革製の小さなバッグには、ライプフェルトの校章の入ったピンバッジが付いていた。
続いてシスカとエイミーが手帳を受け取る。席に戻る際にすれ違った二十一歳の男子学生ラルフ・ニクラス・ベックマンが、
「よろしく」
二人に向かい、爽やかに笑ってそう言った。その笑顔が似合わないと思える程、彼は他の生徒に比べて派手な格好をしていた。飛び抜けて高い身長に加えて、真紅に染められた長めの髪、下は色褪せたジーンズをはき、髪と同じ赤のシャツの上に着た黒革のジャケットには銀のスタッズ。空の拳銃用バックホルスターを腰に着け、赤茶色のエンジニアブーツを鳴らして歩く。
その後も数班分の名前が呼ばれ続けたのち、教卓の上の手帳が全て無くなったことを確認したハルストレム校長が言う。
「この後は担当の先生方に従うように。先生方はそれぞれの部屋にいらっしゃいます」
ライプフェルト大学のA棟第三講堂の、すり鉢状に並べられた席に着く四十人強の最終学年生を前にして、最終学年についての一通りの説明を終えたヘルガ・ビルギット・ハルストレムが言った。ハルストレムは恰幅のいい、ライプフェルト大学初とされる女性校長。彼女もまた魔獣士であり、一つの班番号につき三、四人ずつの学生の名前、そして担当講師の名前を読み上げていく間、赤い獅子の姿をした魔獣は行儀良く彼女の脇に座っていた。
名前を呼ばれた学生が、教卓で校章の入った深緑色の手帳を受け取って席に戻る。それを繰り返して、徐々に教卓に置かれた手帳は減っていき、
「――第十二班。エイミー・アルトナー、ラルフ・ニクラス・ベックマン、エミリオ・コルネット、フランシスカ・シュッツ。担当講師、クリストフ・デュクドレー」
シスカとエイミーを含む班が呼ばれた。名前を呼ばれた四人は講堂中央の階段を降り、教卓へと向かう。
十二班のうち、最初に手帳を受け取ったのはエミリオ・コルネット。どこか幼さを感じさせる顔立ちと短い黒髪を持ち、白いインナーに前開きの黒い長袖シャツを羽織った男子学生。黒いズボンの脇、ベルトに掛けて留められた革製の小さなバッグには、ライプフェルトの校章の入ったピンバッジが付いていた。
続いてシスカとエイミーが手帳を受け取る。席に戻る際にすれ違った二十一歳の男子学生ラルフ・ニクラス・ベックマンが、
「よろしく」
二人に向かい、爽やかに笑ってそう言った。その笑顔が似合わないと思える程、彼は他の生徒に比べて派手な格好をしていた。飛び抜けて高い身長に加えて、真紅に染められた長めの髪、下は色褪せたジーンズをはき、髪と同じ赤のシャツの上に着た黒革のジャケットには銀のスタッズ。空の拳銃用バックホルスターを腰に着け、赤茶色のエンジニアブーツを鳴らして歩く。
その後も数班分の名前が呼ばれ続けたのち、教卓の上の手帳が全て無くなったことを確認したハルストレム校長が言う。
「この後は担当の先生方に従うように。先生方はそれぞれの部屋にいらっしゃいます」
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