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7 怪談ではありません
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ロイズ家に着くと、アスベルはロイズ夫人に挨拶をし、ヴィヴィと庭の四阿に向かった。
ロイズ家の庭も季節の花があちこちで咲き、明るく華やかな雰囲気だ。桜の木陰にお茶の用意がされ、二人きりになると、早速話をするようにとアスベルにせっつかれた。
「実は……アスベル様は、今学園内で交霊会が密かに流行っているのをご存知ですか?学園側は禁止してるんですが、禁止されればやりたくなるみたいですね。ひと月程前のある雨の放課後、旧校舎の図書館で、数組のカップルが交霊会を行なってたんです」
「交霊会を?危ないんじゃないのか?」
「ええ。晴れた日ならまだしも、雨の日の午後はただでさえ憂鬱になりやすく、悪い霊も普段より引き込まれやすいんです。本当はやらない方がいいんですよ、そんな日は」
「それで、その日はなんだか学園内の雰囲気がザワザワしてて、いつもなら数体の霊がその辺をフワフワと漂っているのを見かけるのに、なぜか一体もいなくって。胸騒ぎがして、影が濃くなっている旧校舎に向かったら、新校舎にいなかった霊たちが何かに引き寄せられるように集まってたんです」
「それで?」
「旧校舎に足を踏み入れた途端、重くてまとわりつくような、まるで水の中を歩いているような感覚に囚われたんです。その上たくさんの霊たちの思念…といっても感情の波のようなものですが…それが頭に響いてきて最悪の状態でした。その中を図書館の方に進んだんです。霊もそっちに向かってましたから」
「なんか、怪談みたいだね」
「リアル怪談話ですよ。今思い出しても冷や汗が出ますから。図書館の扉は霊たちが重なり合ってて、ドアノブが見えなくなるくらいでした。中からはラップ音や家具が倒れる音、男女の悲鳴が聞こえてきて、その度に扉に取り憑いてる霊がざわざわと揺れるんです」
「なんだか想像するだけで恐ろしいね」
「見えない人が羨ましいですわ。それで私、正体がバレたくないんで、髪を結びハンカチで顔を覆って、持っていた雨具を頭からスッポリと被った格好でそっと扉を開けたんです」
「部屋の中は真っ暗で、真ん中に置いてあったテーブルの上に蝋燭と文字盤が置かれてましたわ。まさに交霊術の真っ最中だったみたいです」
「文字盤に覆い被さるように霊がいたんですが、形が取れずに靄のようにゆらゆらと揺れてましたの。その部分だけが闇を溶かしたように真っ黒で、文字盤が霞んでよく見えませんでしたわ」
「ものすごく邪悪な感じでした。見ているだけで肌が泡立つような。全身から冷や汗が出るんですの。気を抜くと膝がガクガク震えて。悪い霊だと思いましたわ。それも今まで遭遇したどの霊よりも桁違いのエネルギーの!」
ロイズ家の庭も季節の花があちこちで咲き、明るく華やかな雰囲気だ。桜の木陰にお茶の用意がされ、二人きりになると、早速話をするようにとアスベルにせっつかれた。
「実は……アスベル様は、今学園内で交霊会が密かに流行っているのをご存知ですか?学園側は禁止してるんですが、禁止されればやりたくなるみたいですね。ひと月程前のある雨の放課後、旧校舎の図書館で、数組のカップルが交霊会を行なってたんです」
「交霊会を?危ないんじゃないのか?」
「ええ。晴れた日ならまだしも、雨の日の午後はただでさえ憂鬱になりやすく、悪い霊も普段より引き込まれやすいんです。本当はやらない方がいいんですよ、そんな日は」
「それで、その日はなんだか学園内の雰囲気がザワザワしてて、いつもなら数体の霊がその辺をフワフワと漂っているのを見かけるのに、なぜか一体もいなくって。胸騒ぎがして、影が濃くなっている旧校舎に向かったら、新校舎にいなかった霊たちが何かに引き寄せられるように集まってたんです」
「それで?」
「旧校舎に足を踏み入れた途端、重くてまとわりつくような、まるで水の中を歩いているような感覚に囚われたんです。その上たくさんの霊たちの思念…といっても感情の波のようなものですが…それが頭に響いてきて最悪の状態でした。その中を図書館の方に進んだんです。霊もそっちに向かってましたから」
「なんか、怪談みたいだね」
「リアル怪談話ですよ。今思い出しても冷や汗が出ますから。図書館の扉は霊たちが重なり合ってて、ドアノブが見えなくなるくらいでした。中からはラップ音や家具が倒れる音、男女の悲鳴が聞こえてきて、その度に扉に取り憑いてる霊がざわざわと揺れるんです」
「なんだか想像するだけで恐ろしいね」
「見えない人が羨ましいですわ。それで私、正体がバレたくないんで、髪を結びハンカチで顔を覆って、持っていた雨具を頭からスッポリと被った格好でそっと扉を開けたんです」
「部屋の中は真っ暗で、真ん中に置いてあったテーブルの上に蝋燭と文字盤が置かれてましたわ。まさに交霊術の真っ最中だったみたいです」
「文字盤に覆い被さるように霊がいたんですが、形が取れずに靄のようにゆらゆらと揺れてましたの。その部分だけが闇を溶かしたように真っ黒で、文字盤が霞んでよく見えませんでしたわ」
「ものすごく邪悪な感じでした。見ているだけで肌が泡立つような。全身から冷や汗が出るんですの。気を抜くと膝がガクガク震えて。悪い霊だと思いましたわ。それも今まで遭遇したどの霊よりも桁違いのエネルギーの!」
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