78 / 79
動きだす運命の歯車
76.可愛い双子
しおりを挟む
『サクラ先輩、アカツキ先輩。一年間よろしくお願いします』
「こちらこそよろしく。何かあったら遠慮なく私達を頼ってね」
新入生の双子は、愛らしく鈴の音の声をハモらせお辞儀をする。
初めてまともな先輩呼びに私は嬉しくてこれ以上もない笑顔を浮かべ、無駄に張り切り先輩風を吹かせた。サクラは頷きはするも、黙って二人を見ているだけ。
そんな姿をアイリスは満足そうに遠くで見守っているのは言うまでもない。
双子の名前はイルゼとナタリー。一卵性双生児。
二人とも銀髪ボブヘアに、大きなお目目は緑と黄色のオッドアイ。一卵性で顔は瓜二つだけれど、左右逆だから簡単に見分けがつく。
何より私より小さくてとにかく可愛い。今日からきっとこの子達が初等部のアイドル。私は喜んで譲って引退する。
紹介された瞬間聞き覚えがある名前だったけれど、思い出せない。
「はい。今日から寮生活がとっても楽しみです」
「不安はないの?」
「イルゼと同室だから大丈夫。アカツキ先輩は不安だった?」
「私もお兄ちゃんと同室だったからね。それにサクラお姉ちゃんも一緒だから平気だったよ」
はじける笑顔で寮生活を楽しみにしている二人。四年前の私を見ているようだった。
私も二人のように寮生活……お兄ちゃんとの暮らしに夢を膨らましていたよね?
本当に今でも夢のような生活で、これが後一年で終わると思うと残念で泣けてくる。
「アカツキ先輩は四歳で入学したんだよね?」
「私達より二つも小さいのにすごいな」
「そうかな? じゃぁ二人の部屋に案内するね」
二人におだてられるだけおだてられて、すっかり気分を良くした私は二人を連れ部屋がある五階へと進む。
「ここが二人の部屋だよ。歓迎会の前にささっと片づけちゃおう」
『は~い』
二人の部屋はワンルームに段ボールを数個。
私とお兄ちゃんと同じようにダブルベットで、二つの机は横並び。テーブルと一つの大きめなソファ。
いかにも双子の部屋って感じだ。
ちなみにサクラとのカリーナちゃんの部屋は、半分が半個室になっていてプライベートは守られていた。ほとんどの生徒の部屋がそうなっている。
「……アカツキちゃん、ちょっといいですか?」
「え、うん。二人とも先に片付け始めちゃってね」
神妙な面持ちのサクラは私の耳元で囁かれ、何かあるんだと思って双子にそう言い残し部屋を出た。
「アカツキちゃん、あの双子にはけして気を許さないで下さい」
「え、ひょっとして匂い? 双子からどんな匂いがしたの?」
双子の部屋から少し離れた踊り場でサクラは誰もいないことを確認してから、再び私の耳元でひそひそと警告。サクラの特殊能力を知っている私はすぐに見当が付き、眉を細め聞き返す。
「はい。双子の臭いは私がブラックドラゴンに囚われた時に嗅いだ臭いと似ているんです。おそらく直系尊属かと思います」
「…………」
あまりにもの爆弾回答を投下され、言葉を失い頭の中がフリーズしそうになる。サクラの言葉に嘘はないだろう。
あの双子もゴットドラゴンの関係者。
アイリスの情報網に引っ掛かっていない、サクラの言い方、からして最悪双子の保護者はコゴットドラゴンの役員クラスの可能性大。
私達が潜入する前日にボスと幹部が数人訪れていたらしい。
サクラがいなかったらまんまと騙され、メロメロになっていた。多分アイリスも一緒に。
ゴットドラゴンは私にも目を付けている?
天才少女だからお兄ちゃんと同じで勧誘目的?
それともイロハだってバレた?
「お嬢様、しっかりして下さい。双子とはこれ以上関わらなければ、きっとなんとかなりますよ」
「私達は双子のお世話係だから、関わらない選択はないと思うよ」
「あっ……」
私もこんな双子に関わりを持ちたくないけれど、お世話係になったのは運の尽き。
初めて出来た可愛い後輩登場にねじが吹っ飛んでしまい、疑うことを完全に忘れていました。ゴットドラゴンは初等部を都合の良い幹部候補育成の場と勘違いしてるから、ジョーくんみたいな子が何人も入学しているって言うのに。
(教師によって更生中?)
一生の不覚。
サクラもそれに気づき呆然と立ちつくす。
「二人とも浮かない表情をしてどうしたの?」
「あ。グットタイミング。ちょっと耳を貸して」
「うん、何?」
フレディ登場で話せば何かいい案を出してくれると思って、今以上に慎重になり双子について今までの経緯を耳打ちする。
「その双子って舞台オリキャラじゃないかな?」
思いもよらない出所にハッとする。
舞台NG派の私にとっては、舞台自体を忘れていた。
あ、だから名前に聞き覚えがあったんだ。
「……サクラ悪いけど、双子の所に戻ってくれる? 私のことは先生に呼ばれたって誤魔化しといて」
「はい、分かりました」
前世の話なのでサクラにはここで退場をしてもらう。以前なら駄々をこねられていたけれど、最近は素直に聞き入れてくれるようになった。
「最近のサクラ変わったね」
「フレディもそう思う? ようやく自我と言うものを持ち始めて見たいで嬉しいんだ。こう言うのが親の気持ちなんだね」
「だと思う。それじゃぁ続きは僕の部屋で話そう」
「そうだね」
サクラの背中を見守りながら微笑ましくそう話し合いながら、私達は双子の詳しい話をするべく三階にあるフレディの部屋に向かう。
「こちらこそよろしく。何かあったら遠慮なく私達を頼ってね」
新入生の双子は、愛らしく鈴の音の声をハモらせお辞儀をする。
初めてまともな先輩呼びに私は嬉しくてこれ以上もない笑顔を浮かべ、無駄に張り切り先輩風を吹かせた。サクラは頷きはするも、黙って二人を見ているだけ。
そんな姿をアイリスは満足そうに遠くで見守っているのは言うまでもない。
双子の名前はイルゼとナタリー。一卵性双生児。
二人とも銀髪ボブヘアに、大きなお目目は緑と黄色のオッドアイ。一卵性で顔は瓜二つだけれど、左右逆だから簡単に見分けがつく。
何より私より小さくてとにかく可愛い。今日からきっとこの子達が初等部のアイドル。私は喜んで譲って引退する。
紹介された瞬間聞き覚えがある名前だったけれど、思い出せない。
「はい。今日から寮生活がとっても楽しみです」
「不安はないの?」
「イルゼと同室だから大丈夫。アカツキ先輩は不安だった?」
「私もお兄ちゃんと同室だったからね。それにサクラお姉ちゃんも一緒だから平気だったよ」
はじける笑顔で寮生活を楽しみにしている二人。四年前の私を見ているようだった。
私も二人のように寮生活……お兄ちゃんとの暮らしに夢を膨らましていたよね?
本当に今でも夢のような生活で、これが後一年で終わると思うと残念で泣けてくる。
「アカツキ先輩は四歳で入学したんだよね?」
「私達より二つも小さいのにすごいな」
「そうかな? じゃぁ二人の部屋に案内するね」
二人におだてられるだけおだてられて、すっかり気分を良くした私は二人を連れ部屋がある五階へと進む。
「ここが二人の部屋だよ。歓迎会の前にささっと片づけちゃおう」
『は~い』
二人の部屋はワンルームに段ボールを数個。
私とお兄ちゃんと同じようにダブルベットで、二つの机は横並び。テーブルと一つの大きめなソファ。
いかにも双子の部屋って感じだ。
ちなみにサクラとのカリーナちゃんの部屋は、半分が半個室になっていてプライベートは守られていた。ほとんどの生徒の部屋がそうなっている。
「……アカツキちゃん、ちょっといいですか?」
「え、うん。二人とも先に片付け始めちゃってね」
神妙な面持ちのサクラは私の耳元で囁かれ、何かあるんだと思って双子にそう言い残し部屋を出た。
「アカツキちゃん、あの双子にはけして気を許さないで下さい」
「え、ひょっとして匂い? 双子からどんな匂いがしたの?」
双子の部屋から少し離れた踊り場でサクラは誰もいないことを確認してから、再び私の耳元でひそひそと警告。サクラの特殊能力を知っている私はすぐに見当が付き、眉を細め聞き返す。
「はい。双子の臭いは私がブラックドラゴンに囚われた時に嗅いだ臭いと似ているんです。おそらく直系尊属かと思います」
「…………」
あまりにもの爆弾回答を投下され、言葉を失い頭の中がフリーズしそうになる。サクラの言葉に嘘はないだろう。
あの双子もゴットドラゴンの関係者。
アイリスの情報網に引っ掛かっていない、サクラの言い方、からして最悪双子の保護者はコゴットドラゴンの役員クラスの可能性大。
私達が潜入する前日にボスと幹部が数人訪れていたらしい。
サクラがいなかったらまんまと騙され、メロメロになっていた。多分アイリスも一緒に。
ゴットドラゴンは私にも目を付けている?
天才少女だからお兄ちゃんと同じで勧誘目的?
それともイロハだってバレた?
「お嬢様、しっかりして下さい。双子とはこれ以上関わらなければ、きっとなんとかなりますよ」
「私達は双子のお世話係だから、関わらない選択はないと思うよ」
「あっ……」
私もこんな双子に関わりを持ちたくないけれど、お世話係になったのは運の尽き。
初めて出来た可愛い後輩登場にねじが吹っ飛んでしまい、疑うことを完全に忘れていました。ゴットドラゴンは初等部を都合の良い幹部候補育成の場と勘違いしてるから、ジョーくんみたいな子が何人も入学しているって言うのに。
(教師によって更生中?)
一生の不覚。
サクラもそれに気づき呆然と立ちつくす。
「二人とも浮かない表情をしてどうしたの?」
「あ。グットタイミング。ちょっと耳を貸して」
「うん、何?」
フレディ登場で話せば何かいい案を出してくれると思って、今以上に慎重になり双子について今までの経緯を耳打ちする。
「その双子って舞台オリキャラじゃないかな?」
思いもよらない出所にハッとする。
舞台NG派の私にとっては、舞台自体を忘れていた。
あ、だから名前に聞き覚えがあったんだ。
「……サクラ悪いけど、双子の所に戻ってくれる? 私のことは先生に呼ばれたって誤魔化しといて」
「はい、分かりました」
前世の話なのでサクラにはここで退場をしてもらう。以前なら駄々をこねられていたけれど、最近は素直に聞き入れてくれるようになった。
「最近のサクラ変わったね」
「フレディもそう思う? ようやく自我と言うものを持ち始めて見たいで嬉しいんだ。こう言うのが親の気持ちなんだね」
「だと思う。それじゃぁ続きは僕の部屋で話そう」
「そうだね」
サクラの背中を見守りながら微笑ましくそう話し合いながら、私達は双子の詳しい話をするべく三階にあるフレディの部屋に向かう。
0
お気に入りに追加
481
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
オタクおばさん転生する
ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。
天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。
投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる