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動きだす運命の歯車
71.お兄ちゃんの誕生日
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お兄ちゃんの誕生日は年度替わり前後の長期休暇中だから、今年もいつもと変わらず帰省中に迎えた。
「お兄ちゃん、お誕生日おめでとう。今日から大人だね?」
「ありがとうアカツキ。うん、そうだね? でも学園を卒業してからもう二年も経つし、今更って感じなんだよね?」
朝目が覚めてすぐにお兄ちゃんの部屋に行くと、お兄ちゃんは目覚めたばかりなのか、ベッドでボケッとしていた。
だから盛大にお祝いしながら、お兄ちゃんの胸元へダイビング。私を受け止めとっておきの笑顔を浮かばせるも、そんな素っ気ない答えが返ってくる。
確かに普通だったら学生のうちに成人なんだけれど、飛び級のお兄ちゃんはすでに社会人。実感が薄いかも知れない。
「そう言うものなの?」
「うん。アカツキも二十歳になればわかるよ。あ、そうだ。アカツキの二十歳の誕生日には、夜景がきれいに見えるレストランでお祝いしよう。……彼氏がいなければ……」
ニコニコ笑顔で約十一年後の約束を交わそうとするお兄ちゃんだけれど、何か不味いことが発覚したのか呟き凹んでしまう。
近くにいるのに聞き取れない。
?
「本当に? 約束だからね?」
「うん、約束のゆびきり」
とにかくこの素晴らしい約束を確定させるため、小指を差し出しお決まりのゆびきりを求める。たちまちお兄ちゃんは元気になり、小指を絡めてゆびきりげんまん。
これで約束は確定された。
十一年後が楽しみです。
「そう言えばお兄ちゃんって好きな人っているの?」
「え、いきなり?」
楽しみと同時にお兄ちゃんの彼女の存在が気になってしまい聞いてみると、お兄ちゃんの声は裏返りまじまじ見つめる。
この反応はどう言う意味?
すっかり私の愛するタスクへと成長してくれたお兄ちゃん。
いきなりそんな見つめられたら、鼓動が高鳴り恥ずかしくて視線を背けそうになってしまう。
そんな外見も中身もほぼ完ぺきのお兄ちゃんなのに、私が知る限り未だに恋愛経験がない。私としては大万歳なんだけれど、告白されても断るっているらしい。ひょっとして想い人がいるのでは? と周りからは噂となっている。
だからこの際はっきりさせたい。
それでその女がもし悪女だったら、アイザックに頼んで消してもらう。
「どうなの?」
「そんな人いないよ」
「本当に? 嘘ついたら針千本飲むんだからね」
「神に誓って絶対。もし彼女が出来たら真っ先に教えるよ」
どうやら本当らしい。
いらぬ約束までしてくれ、それはちょっと悲しくなる。
今はまだいないだけで、いらないわけではないらしい。
そりゃそうだよね。お兄ちゃんさえいれば彼氏なんかいらない。って思っている私とは違うか。
「え、ママとパパが、トレジャーハンターになるの?」
誕生日会が始まる前、両親から爆弾発言が告げられる。
そんな素振り一度も見せたことがなかったから、滅茶苦茶びっくりで声が裏返った。サクラもキョトンとしている辺り私と同じで初耳っぽいけれど、お兄ちゃんは驚かず頷いてるから事前に聞いているらしい。
「正確にはトレジャーハンターに復帰するんだけどね。本当はアカツキちゃんが初等部を卒業したらと思っていたんだけど、タスクが心配しなくて大丈夫と言ってくれたの」
え、そうだったの?
八年目にして初めて知る真実。
ママは地元の学校の教師をやっているんだけれど、まさか独身時代にトレジャーハンターだったなんて知らなかった。そう言えばパパとママのなれそめも知らない。
「うん、わかった。私も応援する。サクラお姉ちゃんもだよね?」
「もちろんです。ですがくれぐれも無茶はしないで下さい。お嬢様が悲しみます」
ここまでやる気がある両親を引き留める理由は私にはないので、快く了解して声援を送る。サクラも私が反対しなければ、反対はしない。
引き取られても五年以上も経つのに、まだ二人を両親だって思ってないみたいんだよね? 相変わらず私命で、お兄ちゃんは天敵。ただお兄ちゃんが大人になって、前ほど衝突がなくなっている。
これがもしお兄ちゃんがトレジャーハンターになると言ったら、最後まで反対して大泣きする。それでもって私も連れて行ってと駄々をこねていた。
「ありがとう。二人とも。気をつけていってくるわね」
「心配するな。父さんが母さんを絶対守る。こう見えても強かったんだぞ?」
よほど自信があるらしくパパ胸を張り豪語する。
これもまた初耳情報。
私が知っているパパは結構有名な考古学者で博物館の館長。だけど考古学者だからトレジャーハンターと言われれば、納得できるかな?
そうなってくるとママとパパは元パーティーメンバーで、結婚した可能性が高くなってくる。名の知れたトレジャーハンターだったかも知れない。
「へぇ~そうなんだ。パパ、カッコいい!! ねぇお兄ちゃんはママとパパがトレジャーハンターだったこと知ってた?」
「うん、魔法学園に入学する時教えてもらったんだ」
「私も知りたい。……でも今はお兄ちゃんの誕生日会だから、終わったら教えてね」
知れば知る程両親の過去が知りたくなり根掘り葉掘り聞きたい所だけれど、今はお兄ちゃんの誕生日会が先決だったため後回しにした。
早くお兄ちゃんに丹精込めて作ったプレゼントを渡したい。
去年まではお兄ちゃんの笑顔を描いてプレゼントをしていた。でも今年は特別な誕生日だから、アイリスに教えてもらって一生懸命ブレスレットを作ったんだよね?
散りばめられて魔石はモンスター狩りで採取。魔力を高める効果付き。いずれもここだけの秘密。
「そうね。じゃぁそろそろ始めましょうか?」
「だな」
こうしてお兄ちゃんの誕生日会は始まるのだった。
「お兄ちゃん、お誕生日おめでとう。今日から大人だね?」
「ありがとうアカツキ。うん、そうだね? でも学園を卒業してからもう二年も経つし、今更って感じなんだよね?」
朝目が覚めてすぐにお兄ちゃんの部屋に行くと、お兄ちゃんは目覚めたばかりなのか、ベッドでボケッとしていた。
だから盛大にお祝いしながら、お兄ちゃんの胸元へダイビング。私を受け止めとっておきの笑顔を浮かばせるも、そんな素っ気ない答えが返ってくる。
確かに普通だったら学生のうちに成人なんだけれど、飛び級のお兄ちゃんはすでに社会人。実感が薄いかも知れない。
「そう言うものなの?」
「うん。アカツキも二十歳になればわかるよ。あ、そうだ。アカツキの二十歳の誕生日には、夜景がきれいに見えるレストランでお祝いしよう。……彼氏がいなければ……」
ニコニコ笑顔で約十一年後の約束を交わそうとするお兄ちゃんだけれど、何か不味いことが発覚したのか呟き凹んでしまう。
近くにいるのに聞き取れない。
?
「本当に? 約束だからね?」
「うん、約束のゆびきり」
とにかくこの素晴らしい約束を確定させるため、小指を差し出しお決まりのゆびきりを求める。たちまちお兄ちゃんは元気になり、小指を絡めてゆびきりげんまん。
これで約束は確定された。
十一年後が楽しみです。
「そう言えばお兄ちゃんって好きな人っているの?」
「え、いきなり?」
楽しみと同時にお兄ちゃんの彼女の存在が気になってしまい聞いてみると、お兄ちゃんの声は裏返りまじまじ見つめる。
この反応はどう言う意味?
すっかり私の愛するタスクへと成長してくれたお兄ちゃん。
いきなりそんな見つめられたら、鼓動が高鳴り恥ずかしくて視線を背けそうになってしまう。
そんな外見も中身もほぼ完ぺきのお兄ちゃんなのに、私が知る限り未だに恋愛経験がない。私としては大万歳なんだけれど、告白されても断るっているらしい。ひょっとして想い人がいるのでは? と周りからは噂となっている。
だからこの際はっきりさせたい。
それでその女がもし悪女だったら、アイザックに頼んで消してもらう。
「どうなの?」
「そんな人いないよ」
「本当に? 嘘ついたら針千本飲むんだからね」
「神に誓って絶対。もし彼女が出来たら真っ先に教えるよ」
どうやら本当らしい。
いらぬ約束までしてくれ、それはちょっと悲しくなる。
今はまだいないだけで、いらないわけではないらしい。
そりゃそうだよね。お兄ちゃんさえいれば彼氏なんかいらない。って思っている私とは違うか。
「え、ママとパパが、トレジャーハンターになるの?」
誕生日会が始まる前、両親から爆弾発言が告げられる。
そんな素振り一度も見せたことがなかったから、滅茶苦茶びっくりで声が裏返った。サクラもキョトンとしている辺り私と同じで初耳っぽいけれど、お兄ちゃんは驚かず頷いてるから事前に聞いているらしい。
「正確にはトレジャーハンターに復帰するんだけどね。本当はアカツキちゃんが初等部を卒業したらと思っていたんだけど、タスクが心配しなくて大丈夫と言ってくれたの」
え、そうだったの?
八年目にして初めて知る真実。
ママは地元の学校の教師をやっているんだけれど、まさか独身時代にトレジャーハンターだったなんて知らなかった。そう言えばパパとママのなれそめも知らない。
「うん、わかった。私も応援する。サクラお姉ちゃんもだよね?」
「もちろんです。ですがくれぐれも無茶はしないで下さい。お嬢様が悲しみます」
ここまでやる気がある両親を引き留める理由は私にはないので、快く了解して声援を送る。サクラも私が反対しなければ、反対はしない。
引き取られても五年以上も経つのに、まだ二人を両親だって思ってないみたいんだよね? 相変わらず私命で、お兄ちゃんは天敵。ただお兄ちゃんが大人になって、前ほど衝突がなくなっている。
これがもしお兄ちゃんがトレジャーハンターになると言ったら、最後まで反対して大泣きする。それでもって私も連れて行ってと駄々をこねていた。
「ありがとう。二人とも。気をつけていってくるわね」
「心配するな。父さんが母さんを絶対守る。こう見えても強かったんだぞ?」
よほど自信があるらしくパパ胸を張り豪語する。
これもまた初耳情報。
私が知っているパパは結構有名な考古学者で博物館の館長。だけど考古学者だからトレジャーハンターと言われれば、納得できるかな?
そうなってくるとママとパパは元パーティーメンバーで、結婚した可能性が高くなってくる。名の知れたトレジャーハンターだったかも知れない。
「へぇ~そうなんだ。パパ、カッコいい!! ねぇお兄ちゃんはママとパパがトレジャーハンターだったこと知ってた?」
「うん、魔法学園に入学する時教えてもらったんだ」
「私も知りたい。……でも今はお兄ちゃんの誕生日会だから、終わったら教えてね」
知れば知る程両親の過去が知りたくなり根掘り葉掘り聞きたい所だけれど、今はお兄ちゃんの誕生日会が先決だったため後回しにした。
早くお兄ちゃんに丹精込めて作ったプレゼントを渡したい。
去年まではお兄ちゃんの笑顔を描いてプレゼントをしていた。でも今年は特別な誕生日だから、アイリスに教えてもらって一生懸命ブレスレットを作ったんだよね?
散りばめられて魔石はモンスター狩りで採取。魔力を高める効果付き。いずれもここだけの秘密。
「そうね。じゃぁそろそろ始めましょうか?」
「だな」
こうしてお兄ちゃんの誕生日会は始まるのだった。
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