転生先は乙女ゲームの非実在妹でした 〜最推しキャラがお兄ちゃんなので、渋々私はブラコン末期になりました〜

お兄ちゃんと一緒

６２．ライバル登場？

「ねぇさっきから視線が痛いのは気のせいだと思う？」
「アカツキに注目が集まるのは無理がないと思うよ。なんせ天才兄の更に上を行く天才妹なんだからね？」
「……そう言われると、こうなるのは当然か」

　図書室に行くため学園の校舎に足を踏み入れるなり、次々と感じる視線に違和感を持つ。不思議に思ってフレディに確認すると、当然とばかりに納得の行く答えが返ってくる。

　そりゃぁ注目を浴びますよね？

「アカツキちゃん、入学おめでとう」
「え、あ、ヘンゼルさん。ありがとうございます」

　突然背後から女子生徒に声をかけられ振り向き見上げれば、去年の文化祭でお兄ちゃんと同じ生徒会をしてた人だった。
　お兄ちゃんの後輩でストレートの緑髪の清楚な美人。あろうことかお兄ちゃんに片想いをしているらしい。
　それでなのか私を妹のように可愛がってくれるのは良いけれど、恋敵なのだから出来ることなら距離をある程度取りたい。
　しかし素っ気ない態度を取るのは悪いから、無垢な少女を演じている。

　まぁそんなに警戒しなくても、モブだから自然消滅するんだろう。

「こんな所で何をしてるの？　もしかして迷子？」

　迷子になるわけない。
　この女私をなんだと思ってる？
　私はそんなにガ……りっぱなガキか。

「ううん。図書室にフレディお兄ちゃんと行こうとしてたの」
「そうなの？　入学初日からアカツキちゃんは本当に偉いわね？」
「エヘヘ、誉められちゃった」

　無邪気な少女を演じるのは気色悪くて、フレディの呆れた眼差しがいつだって痛い。
　しかし相手を欺くため仕方がない。

「そんなお利口さんのアカツキちゃんに、入学祝を兼ねて今度の休みに美味しいカフェ専門店でなんでもおごってあげる」 
「本当ですか？　でも今度の休みはお兄ちゃんに町を案内してもらうんです」
「そうなの？　ならまた今度ね」

　本当に予定があったため、うまく断ったつもりのはず。
　ヘンゼルも一件笑顔のまま答えてくれたけれど、小さく舌打ちして微かに睨まれどこかに行ってしまう。    

「ねぇ私今睨まれなかった？」
「うん。一瞬だったけどね。彼女は誰なの？」
「私の恋敵。生徒会の書記じゃなかったっけぇ？」
「そうなんだ。あんまり彼女と関わらない方がいいかも？　なんか腹黒っぽい。八方美人あるいは女王様？」
「え、なんか怖い」

　フレディにも分かったらしくヘンゼルのことを教えれば、相当に悪印象を持ったのか聞いてるだけで寒気がしてきた。

　そう言う人って頭脳明晰で表向きは人当たりも良く信頼が厚いから、自らの手を汚さずに周囲をコントロールして相手を蹴落とすんだよね？
　この世で一番敵に回したくないタイプ。

「大丈夫だよ。なんせアカツキはまだ幼女。普通だったら有効なはずの、「せっかく入学祝を兼ねてカフェに誘ったのに、兄との約束優先して断られてしまいました。アカツキちゃんはお兄ちゃんが大好きなんですね」を悲しげな笑顔で言っても、そりゃぁそうだと言われるだけ。誰も君をブラコンでキモいとは言わないからね」
「確かに」

　しかしそれは私には通用しない方法だった。多分不発に終わることが良く分かる。

　十五歳ならブラコンはキモいとなるかも知れないけれど、五歳になる子ならブラコンは当然。
　友達より家族を優先しても、誰も文句は言わない。

「それに鋭いマイケルがいるしタスクが君を嫌うなんて考えられないからね。下手なことしたらぶちギレて彼女はジーエンド。あ、ここだ」

　ここで彼女がモブキャラの理由が分かり、丁度いい具合に図書室にたどり着く