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お兄ちゃんの幸せを守りたい
11.協力者候補
しおりを挟む「どう? うまく潜り込めそう?」
「う~ん、あともう少し」
キッチンの片隅で綺麗で素早いタイピングに感心しながら聞いて見ると、浮かなくても早い答えが返ってきた。邪魔にならないように、それ以上何も聞かず画面をのぞき込む。
画面には次々に文字が打ち込まれ、次々と突破していく。
思わず私もやりたいと思ったけれど、まず銃の技術を習得してから。
「アカツキ、君魔力を貰うよ」
「え、貰う?」
ある画面にたどりついた途端、フレディはそう言って私の手を持ち画面にかざす。
手のひらが熱くなり、何か吸い取られていく妙な気分。
「最後のキーは魔力投入なんだ。ボクだけだとキツいんだよね?」
「なるほど。私の魔力量はそこそこあるからね」
理由をすぐに話してくれて納得する。
この世界の魔力は人限定でエルフが使う魔力とは系統が違う。魔法は種族によって魔力元が異なっている。
フレディはハーフだから人の魔力もあるにはあるけれど極めて少ないから、こう言う仕掛けは解除できない不便さがあるようだ。
私はまだ魔力量は図ってないけれど、多分平均以上はあると思う。
「これでよし。子供達の居場所は分かった」
「ここから近い?」
「島の中心部にある遺跡周辺らしいから、飛んで行けば二時間ぐらいかな?」
「なら最低でも半日掛かるか」
漫画のようにとんとん拍子で話が進んでいくかと思えば、さすがにそこまで都合良いはずもなく最初の壁が立ちはだかる。
いくらフレディが一緒だとしても、半日以上の外出は厳しい。
そんな事を言えば絶対にお兄ちゃんがついていく。
かと言ってお兄ちゃんを巻き込むわけには……。
「ねぇ警察を動かせられないかな? そうすれば組織も壊滅させられる」
「残念ながらボクの実力じゃ警察を動かせられるほどの物的証拠は入手できないよ」
ちょっとしたいいアイデアを閃き持ちかけてみると、首を横に降られバッサリ却下される。
ごもっと過ぎる理由。
さすがのフレディでも限界はあるらしい。
「そうか。だったら何かいい作戦を練るしかないか」
「それがいいよ。だけどやっぱり不安だから、あの人にも協力してもらおう」
「その人って信用できる人なの?」
「どうかな? アカツキはアイリスをどう思ってた?」
ここで新たなる人物が登場してお決まりの問いを投げ掛ければ、苦笑しながらとあるキャラの名を出し逆に聞き返されてしまう。
よく知る名前に驚きつつ、この島にいたことを思い出す。
アイリス。
魔法と科学の融合科学者で変わり者。
性別がない両性人獣族。簡単に言えばトカゲ人間だ。
興味がある事には全力投球だけれど、興味がない事には仕事であっても適当。
それでいて可愛い子と甘い物が大好き。良く言えば自分に正直な人。
サブキャラでは一番人気があって一度攻略対象キャラにするかの投票があったんだけれど、結果男性とは言い難いと言う意見が圧倒的多数で友情エンドか追加され終わった。
「アイリスか。まぁ口が堅いという部分は信用出来るけれど、今ってどんな感じなの?」
「今も大して変わらないよ。相変わらず好き放題研究をしていて、島の人達からすっかり変人扱いをされてるよ。きっとアカツキのことを気に入ってくれると思う。可愛い幼女だからね」
「それ全然嬉しくないから」
今のアイリスを聞いてみれば言葉通りの変わりない性格のようで、しかも可愛い子好きまでこの時のままと知り一気に不安になり気が重くなる。
確かに私は幼女だから可愛い。
まだほっぺはふっくらしていて、お腹もぽよぽよ。
可愛い子好きなら食べたくなるほど間違いなし。
……セクハラされなきゃいいけど。
「そんなに落ち込まなくてもいいだろう? 気に入ってもらえれば鬼に金棒なんだから」
「それもそうだね。なら明日紹介してくれる?」
「もちろん。そうするつもりだよ。あ、カリーナがやってくる」
不安に思つつも協力は必要なので紹介してもらうことで会話が終わると、フレディの耳はピクピク動きカリーナ登場を予感した。
私にはお兄ちゃんではない足音でしか分からなかった。踏み台から降り確かめれば、本当にカリーナがこちらにやって来て私と視線を合わさるとパッと花が咲き小走りに変わる。
「アカツキちゃん、こんなことにいらっしゃったのですね? フレディのお手伝いですか?」
「料理を作るとこ見ていたの」
お手伝いとは言えなくて、そう言うことにした。
実際に少しは見ていたから、まったくの嘘ではない。
「そうなんですか。アップルパイはもう焼けましたか?」
「はい。ちょうど焼き上がったので、お嬢様はマイケル様とタスクさんを呼んできてもらいますか?」
「了解です。アカツキちゃんも一緒に行きましょ?」
「うん」
仕事を頼まれたカリーナは張り切り当然のように私を誘う。フレディとの関係を誤解されたくなくて、すぐに頷きカリーナの手を取った。
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