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ⅩⅥ.デザートのお供は楽しい会話

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 ペンちゃんオススメの店は雑誌にも載っている人気店らしく、開店三十分前に並びギリ初回組だった。

 そしてメイドさんに案内され席につき、メニューを見てびっくり。ところどころ意味不明な言葉あったけれど、ぎっしり並ぶデザートの数々。精霊用メニューもありさすがですと言いようがない。
 それで悩みまくったあげくに頼んだのが生クリームたっぷりの季節のフルーツ乗せパンケーキ。
 運ばれてきた物は、本当に生クリームが山盛りで苦笑する。

「古都音のすごいね?」
「生クリームってフワフワで雲みたいんだな?」
「二人にもおすそわけ」

 シュークリームタワーの空とチョコレートサンデーの海が物欲しそうに話し掛けてきたから、それぞれの皿に生クリームをここぞとばかりに積む。それでもまだ大量に残る生クリーム。

『古都音、ありがとう』
「どういたしまして。おかわりしても良いからね」
『うん!!』

 ここぞとばかりに喜ぶ双子。
 本当に美味しそうに食べだし、それは他の精霊達やうさちゃん達も同じ。そして

「美味しい~」

 一口食べて口の中で溶けてしまい味も甘過ぎないちょうど良い甘さでさっぱりしている。フルーツはシャキシャキしていて新鮮。

「うさのも美味しいよ。口の中で、味が変わるの。イチゴ、オレンジ、リンゴ、バナナ、チョコレート」
「あ、それは魔法のレシピで作られてるんですよ」
「さすがファンタジーの世界だな?ならこのサイダーもか?やけに炭酸が強い」
「はい、そうですよ。結構人気があるんですよ」
「へぇ~。今度俺も試してみよう」

 どうやら人気の秘密は美味しいだけではなく楽しめるようで、聞きながら私もそのうち魔法の料理を食べてみようと思った。
 探せばとある小説のに出てくる様々の味がある魔法のグミがあるかも知らない。
 それにしてもみんなデザートを食べていると言うのに、タヌキだけはメロンソーダのみ。そんなに苦手だったのだろう……でもバレンタインは毎年駆け回っていたよね?

「タヌキって甘い物苦手だったけぇ?」
「苦手ではないが好んでは食べないだけ。うさが全部食べきれないから、残りをオレが食べるんだ」
「ふーん。なら私のも少し食べる?」
「オレは残飯処理じゃねぇぞ?」

 納得の行く答えに何気なく言い差し出すせば、じっと目で突っ込まれる。
 そんな風に言ったつもりはなかったんだけれど、改めて考えるとそう聞こえなくもない。 悪いことをした?
「二人は本当に仲が良いよね?」
「さすがキツネさんとタヌキさんと言うだけのことがありますね?」

 そんな私達を見ていたライオンさんとコアラちゃんは微笑みながら、ライオンさんはまだしもコアラちゃんも似たような意見。
 さすがキツネとタヌキ? 確かに童話では良く一緒にいたような気がするけれど、その多くが悪さをして周囲を困らしていたような。
 何を言いたい?

「まぁキツネは高校の頃と少しも変わってないから、話していると高校の頃に戻っちゃうんだよな?」
「タヌキこそうさちゃんのパパって言う以外は、あんまり変わってないじゃない?」
「そうか?サンキューな」

てっきり馬鹿にされてると思って言い返したのに、なぜかニコッと笑いお礼をされてしまう。その意味も分からず首をかしげ不思議がる私を、ペンちゃんと言えばなにも言わずにクスクスと笑っている。多分これは怒るべき場面なんだろうけれど、こう言う雰囲気が好きだからそんな気が起きてこない。
 平和が一番。

「あそう言えば、ここには精霊達の身の回りの物を売ってる店があるの?」
「あ、それ俺も気になってたんだよね?」
「うさも!!」
「もちろんですよ。いくらサイズを合わせられると言っても、やっぱり専用に作られた物には敵いませんからね。行ってみます?」

 話題を変え少し気になっていた双子の身の回りのことを切り出すと、やっぱり誰もが思うことで心配しなくてもその店はあった。
 洋服は人形の服で賄えても日常品や家具は出来れば専用の物が欲しい。
 お金のことなら特典で各パーティーに30枚支給されていて、それだけあれば一週間の生活と遊ぶには困らないと言われている。学舎を卒業し無事冒険者になれたら乗り物と更に金貨50枚支給されるらしい。随分期前がいい話だけれど、世界をあげての大事業なのだから当然なのかも知れない。

「そうだな。後でちょっくら行ってみるか」
「賛成です。生地屋にも行きたいのですが、良いでしょうか?ポムに服を作りたいんです」
「それなら俺も寄りたい。ジャンヌがミントとお揃いが欲しいって言うんだ」

 双子には絶対に聞かせたくない嫌な話題再び。
 しかもライオンさんだけではなくコアラちゃんまで作れるとは。きっと作れると楽しいんだろうとは思うんだけれど、私にはどう考えても、やっぱり無理だな。

「ジャンヌちゃんはミントちゃんと仲が良いんですね」
「そうなんだよ。しかも言葉が通じ合うみたいで、仲良し姉妹みたいなんだ。今度写真と動画を見せてあげるね」
「はい、楽しみに待ってます」
「私も見たいです」

 可愛らしい会話に考えるより先に私も加わる。
 ライオンさんの猫ちゃんだけでも可愛いのに、そこにジャンヌまで加わったら萌え必死。考えるだけでもよだれが出そう。

「精霊はあらゆる生き物と会話が出来るんですよ」
「ほぉーならゴキブリともか?」
「タヌキ、何デリカシーないことを聞いてんの?」

 何を思ったのか聞いてはいけないものを興味津々とばかりに聞くもんだから、うさちゃん以外は一瞬にして顔を青ざめ食べるのを止めた。
 爬虫類や昆虫ならまだ良いけれど、よりにもよってなんでゴキブリ? 食事中にご法度でしょう?

「そうですよ。タヌキさん。あれは脳ミソがないので、会話は成立しません。食事中に話すことではありません」

 この世界にもゴキブリはいるらしく、ペンちゃんも嫌いらしい。

「すまんすまん。もし出来たら菫か桜に追い出してもらおうかと思ってな」
「抹殺して下さい。あいつらに生きる資格なんてありません。絶滅しろ」
「すみませんでした」

 絶対罪悪感がなく軽く謝るタヌキに、ペンちゃんは初めてぶちギレ酷いこと吐く。
 予想していた通り温厚な性格がキレると迫力が違う。これにはタヌキも圧倒されまくり深々と謝っている。
 そこまで言われたらいくらゴキブリでも気の毒に思えてくるのは私だけ? なんてこと言ったら雷落ちるから黙っておこう。

「精霊は動物と話せるなんてすごいですね?  ポムに通訳してもらいたいです」
「コアラちゃんナイスアイデア。私も双子に頼んで通訳してもらおう」

 ペンちゃんを落ち着かせるにはゴキブリから遠ざけるのが一番なので、気を聞かしてくれたコアラちゃんの話題に便乗する。それに本当に動物と話したいと思っていた。

「うさも動物さん達とお話ししたいな」
「うさぎさんなら猛獣使いなので、頑張れば叶いますよ」
「本当に? やった」
「うさちゃん、良かったね」

 無垢な少女の願いは意外と簡単に叶うことが分かった。ペンちゃんもようやく穏やかな表情に戻る。これで彼を刺激しなければ円満解決。
 私の職業は魔道師で満足はしているけれども、猛獣使いが動物と会話が出来るんなら転職するのも良いかも知れない。

「うん、所でコアラお姉ちゃんは何をするの?」
「魔導師と言われました」
「なら私と同じだね? ペンちゃん、職業ってどう決めるの? 適当?」
「その人の一番適してる職業です。と言っても人間の可能性は無限大なのですから、それに捕らわれてはいけません」

 ここで初めて知る基準を聞かされる。
 と言うことは、私は一番魔道師にむいていることになる。


人間の可能性は無限大。

か。
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