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Ⅱ.二重生活を始めよう
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「だーだー」
「あー!!」
「うるさい。……あれ?」
双子達の声で、目が覚める。
目を開け飛び込んできた光景は、クマのぬいぐるみを引っ張り合う双子達。
一瞬何がなんだか分からず慌てて起き上がり辺りを見回すと、そこは確かに少々汚い自分の部屋なのに夢の双子が飛んでいる。
私に気づいた双子は、ぬいぐるみを放り出し私の胸元にダイブ。
『ダッダッ』
おはようと言っている気がした。
余計頭の中がパニックを起こし、何がなんだかまったく分からない。
これはまだ夢の続き??
それともこれは現実で、私は本当に異世界に召喚された?
だけどそれならどうして私は双子と一緒に、元の世界に戻って来たんだろうか?
「……そうだ。タヌキに電話してみよう。まだ登録されていて番号が変わってなければいいんだけど……」
一人では解決出来そうにないから一緒に召喚されたタヌキと連絡を取ることにし、スマホを取り電話帳からタヌキのデーターを捜す。
しかしもう十五年以上も前でガラゲーからスマホ。電話会社も変更してるため当然ながら見当たらず。
それなら昔のガラゲーにと思い隣の部屋に取りに行くと、知らない番号から電話が掛かってくる。
時刻はまだ朝の八時前。
いつもなら怖くて訳のわからない電話など無視するのだけれども、タヌキだったらいけないと思い恐る恐る電話に出る。
『キツネさんですか?』
「え、うさちゃん?」
愛らしい声の主に、少々驚き聞き返してしまう。
双子達はまたぬいぐるみを巡り喧嘩を始め引っ張りあうので、もう一体のデブねこさんのぬいぐるみを差し出す。
すると海が飛び付き、無事喧嘩は収まる。
『パパ、キツネさんだけど、なんかしゃべり方が変だよ』
「うっ……」
きっとうさちゃんにはまったく悪気がないんだろうけれど、気にしていることをずばっと言われてしまいイヤな気持ちになる。
夢の中ではそんなこと言われなかったのに、どうして?
『は? キツネ?』
「お、おはよう。夢じゃなかったみたいだね?」
『おはよう。そうらしいな?だけど…魂だけか』
不思議そうなタヌキになり何事もないかのように話すと、何かを納得したのか呟きクスッと笑う。
魂だけ。
?
「え、どうしたの?」
『いいや、なんでもない。これから母校にこられるか?』
「うん。今起きた所だから、一時間もあれば行けるよ。ただ午後から用事があるけどね」
私には理由を教えてくれず、そのまま本題に話は進む。
そう答えながら、急いで着替え始める。
我が家から母校までは、徒歩二十分も掛からない。
今は起きたばかりと都会に行くので用意する時間も含めたら、一時間は必要。
そして向こうが母校を指定してきた所を見ると、やっぱり近場に住んでいるのだろう。
あるいは実家暮らし。
『なら一時間後に正門でな』
「うん」
と言われ私が頷くと、電話が切れた。
「キツネさん、ごめんなさい」
「うさちゃん?」
待ち合わせの場所に着くとフリルとリボンが付いたワンピース姿のうさちゃんが私に抱きつき、元気がなく今にも泣き出しそうな声で謝られる。
しかし何の件だか分からずキョトンしていると、シャツにGパン姿のタヌキもやって来てこっちは爽やかに笑う。
「うさにキツネの障害のことを理解できる範囲で話したよ。そしたらちゃんと分かってくれて、こうなった」
「そう言うことか。うさちゃん、ありがとう。ちゃんと反省してくれて」
「怒ってないの?」
「うん、うさちゃんは優しい良い子だから、怒るはずがないでしょ?」
意外にもそう言う所は昔からタヌキは理解があり、その娘も幼いながら理解してくれたことが嬉しくて涙が出そうになる。
少しながら感じていた不安はさっと消え去り、反省するうさちゃんを強く抱きしめ笑顔でそう言う。
するとうさちゃんの顔に満開に花が咲く。
うさちゃんには笑顔が似合う。
しかしそれは自殺行為だと気づいた途端、血の気が一気に引きビクビクしながらタヌキを見上げる。
残念ながら私には学習能力が欠損しているから、同じ過ち繰り返す愚かな人間。
「タヌキ様、殺さないで」
「は、殺すわけないだろう? ……お前がうさに何かしなければ」
「しないよ。絶対に」
さっきとは違い穏やかに見えたタヌキだけれど、やっぱそれは当然譲れないらしい。
私もするつもりはまったくないので、首を強く横に振った。
話す内容が内容のため喫茶店では話せなく、近くにあると言うタヌキの家にお邪魔することになった。
驚くべき事に私が住んでいるマンションの同じ通りにある、以前から気になってはいた可愛らしい一軒家。
それでいて職業は、公務員だと言うことが判明。
人生負け組の負け組である私とは違い、タヌキはほぼ勝ち組。
妬ましくもなる。
「まさかこんな漫画のような展開になるなんてな」
「そうだね。でもなんで戻って来ちゃったんだろうね?私ならこんなつまらない世界、簡単に捨てられるのに」
タヌキの苦笑しながらの言葉に対し、私はつい日頃から思っている愚痴を零す。
あの時は夢だと思い込んでいたから冷めた反応をしていたけれど、現実だって分かってたら魔法の一つもぶっ放していた。
それに冒険することは子供の頃から憧れていて、中高の頃はハリガネと方位磁石を携帯していたもんだ。
馬鹿見たく小説の魔法の呪文を暗記して……今で言う中二病だったに違えない。
選ばれたと言うのに、なんで戻されたの?
「は、お前ペンギンの話を聞いてなかったのか? オレ達が異世界に行けるのは、寝てる時だけなんだぞ。なんでもオレ達の肉体は二つの世界に存在していて、魂とこのリングだけが行き交うことが出来るらしい」
ガッカリしている私を、タヌキは聞いていなかった新事実を教えてくれる。
「ごめん。タヌキの睨みが怖くて、半分以上聞いてなかったんだよね? なるほどそう言う設定なんだ」
「自業自得だな」
馬鹿のように明るくアホらしいことを言って納得する私に、タヌキは冷たく返答し呆れきりため息をつく。
確かにタヌキに睨まれる原因を作った私が悪いんだから自業自得。
この件に関しては反論する要素がない。
「それじゃ寝るか」
「これから用事があるんだろう?」
「うん。ライオンさんの握手会なんだ」
冗談半分本気半分で言ってみると、すかさず突っ込みが入る。
これからライオンさんの握手会だから、コンタクトを取れるチャンス。
本当はやってはいけないんだけど、空か海に頼んでバレないように私の連先の手紙を渡す。
それでライオンさんも会いたいと言われたら、握手会後合流すればOK。
すると双子達妖精と遊んでいたうさちゃんがこちらにやって来る。
「キツネさん、うさもライオンさんに会いたい。一緒に行っても良い?」
「でもこう言うの参加券がないと駄目なんだろう?」
「当日販売があるから大丈夫だよ」
「なら決まりだな。仕度するから待ってろ 」
コンタクトを取りたいのはこの親子もそうだったらしく、話はトントン拍子に決まり二人は支度を始める。
暇になった私は煎餅をボリボリ食べながら、スマホのアプリで遊ぶ
『だぁーだぁー』
「空海どうしたの?」
『あー』
そこに双子が仲良く何かを持ってきて、私の目の前におく。
それはひらがなを覚えるタブレット。
「くー」
「かい」
それぞれの名前の文字を押しながら、楽しそうに機械の声に復唱する。
「きちゅえ」
続いて私を指差し“きつね”と押しながら、赤ちゃん語で呼ばれる。
あってるような際どい言葉。
うさちゃんが教えたんだから仕方がないとことだけど、双子にはちゃんとした名前で呼んで欲しい。
「私の名前はことね」
『こ・と・え?』
「そう。空海はお利口さんだね?」
教えると不思議そうに復唱。
頭をなぜ誉めると、喜ぶ双子。
「ことえ」
「ことえ」
飛び回り連呼され恥ずかしいけれど、それ以上に嬉しかったりする。
「あー!!」
「うるさい。……あれ?」
双子達の声で、目が覚める。
目を開け飛び込んできた光景は、クマのぬいぐるみを引っ張り合う双子達。
一瞬何がなんだか分からず慌てて起き上がり辺りを見回すと、そこは確かに少々汚い自分の部屋なのに夢の双子が飛んでいる。
私に気づいた双子は、ぬいぐるみを放り出し私の胸元にダイブ。
『ダッダッ』
おはようと言っている気がした。
余計頭の中がパニックを起こし、何がなんだかまったく分からない。
これはまだ夢の続き??
それともこれは現実で、私は本当に異世界に召喚された?
だけどそれならどうして私は双子と一緒に、元の世界に戻って来たんだろうか?
「……そうだ。タヌキに電話してみよう。まだ登録されていて番号が変わってなければいいんだけど……」
一人では解決出来そうにないから一緒に召喚されたタヌキと連絡を取ることにし、スマホを取り電話帳からタヌキのデーターを捜す。
しかしもう十五年以上も前でガラゲーからスマホ。電話会社も変更してるため当然ながら見当たらず。
それなら昔のガラゲーにと思い隣の部屋に取りに行くと、知らない番号から電話が掛かってくる。
時刻はまだ朝の八時前。
いつもなら怖くて訳のわからない電話など無視するのだけれども、タヌキだったらいけないと思い恐る恐る電話に出る。
『キツネさんですか?』
「え、うさちゃん?」
愛らしい声の主に、少々驚き聞き返してしまう。
双子達はまたぬいぐるみを巡り喧嘩を始め引っ張りあうので、もう一体のデブねこさんのぬいぐるみを差し出す。
すると海が飛び付き、無事喧嘩は収まる。
『パパ、キツネさんだけど、なんかしゃべり方が変だよ』
「うっ……」
きっとうさちゃんにはまったく悪気がないんだろうけれど、気にしていることをずばっと言われてしまいイヤな気持ちになる。
夢の中ではそんなこと言われなかったのに、どうして?
『は? キツネ?』
「お、おはよう。夢じゃなかったみたいだね?」
『おはよう。そうらしいな?だけど…魂だけか』
不思議そうなタヌキになり何事もないかのように話すと、何かを納得したのか呟きクスッと笑う。
魂だけ。
?
「え、どうしたの?」
『いいや、なんでもない。これから母校にこられるか?』
「うん。今起きた所だから、一時間もあれば行けるよ。ただ午後から用事があるけどね」
私には理由を教えてくれず、そのまま本題に話は進む。
そう答えながら、急いで着替え始める。
我が家から母校までは、徒歩二十分も掛からない。
今は起きたばかりと都会に行くので用意する時間も含めたら、一時間は必要。
そして向こうが母校を指定してきた所を見ると、やっぱり近場に住んでいるのだろう。
あるいは実家暮らし。
『なら一時間後に正門でな』
「うん」
と言われ私が頷くと、電話が切れた。
「キツネさん、ごめんなさい」
「うさちゃん?」
待ち合わせの場所に着くとフリルとリボンが付いたワンピース姿のうさちゃんが私に抱きつき、元気がなく今にも泣き出しそうな声で謝られる。
しかし何の件だか分からずキョトンしていると、シャツにGパン姿のタヌキもやって来てこっちは爽やかに笑う。
「うさにキツネの障害のことを理解できる範囲で話したよ。そしたらちゃんと分かってくれて、こうなった」
「そう言うことか。うさちゃん、ありがとう。ちゃんと反省してくれて」
「怒ってないの?」
「うん、うさちゃんは優しい良い子だから、怒るはずがないでしょ?」
意外にもそう言う所は昔からタヌキは理解があり、その娘も幼いながら理解してくれたことが嬉しくて涙が出そうになる。
少しながら感じていた不安はさっと消え去り、反省するうさちゃんを強く抱きしめ笑顔でそう言う。
するとうさちゃんの顔に満開に花が咲く。
うさちゃんには笑顔が似合う。
しかしそれは自殺行為だと気づいた途端、血の気が一気に引きビクビクしながらタヌキを見上げる。
残念ながら私には学習能力が欠損しているから、同じ過ち繰り返す愚かな人間。
「タヌキ様、殺さないで」
「は、殺すわけないだろう? ……お前がうさに何かしなければ」
「しないよ。絶対に」
さっきとは違い穏やかに見えたタヌキだけれど、やっぱそれは当然譲れないらしい。
私もするつもりはまったくないので、首を強く横に振った。
話す内容が内容のため喫茶店では話せなく、近くにあると言うタヌキの家にお邪魔することになった。
驚くべき事に私が住んでいるマンションの同じ通りにある、以前から気になってはいた可愛らしい一軒家。
それでいて職業は、公務員だと言うことが判明。
人生負け組の負け組である私とは違い、タヌキはほぼ勝ち組。
妬ましくもなる。
「まさかこんな漫画のような展開になるなんてな」
「そうだね。でもなんで戻って来ちゃったんだろうね?私ならこんなつまらない世界、簡単に捨てられるのに」
タヌキの苦笑しながらの言葉に対し、私はつい日頃から思っている愚痴を零す。
あの時は夢だと思い込んでいたから冷めた反応をしていたけれど、現実だって分かってたら魔法の一つもぶっ放していた。
それに冒険することは子供の頃から憧れていて、中高の頃はハリガネと方位磁石を携帯していたもんだ。
馬鹿見たく小説の魔法の呪文を暗記して……今で言う中二病だったに違えない。
選ばれたと言うのに、なんで戻されたの?
「は、お前ペンギンの話を聞いてなかったのか? オレ達が異世界に行けるのは、寝てる時だけなんだぞ。なんでもオレ達の肉体は二つの世界に存在していて、魂とこのリングだけが行き交うことが出来るらしい」
ガッカリしている私を、タヌキは聞いていなかった新事実を教えてくれる。
「ごめん。タヌキの睨みが怖くて、半分以上聞いてなかったんだよね? なるほどそう言う設定なんだ」
「自業自得だな」
馬鹿のように明るくアホらしいことを言って納得する私に、タヌキは冷たく返答し呆れきりため息をつく。
確かにタヌキに睨まれる原因を作った私が悪いんだから自業自得。
この件に関しては反論する要素がない。
「それじゃ寝るか」
「これから用事があるんだろう?」
「うん。ライオンさんの握手会なんだ」
冗談半分本気半分で言ってみると、すかさず突っ込みが入る。
これからライオンさんの握手会だから、コンタクトを取れるチャンス。
本当はやってはいけないんだけど、空か海に頼んでバレないように私の連先の手紙を渡す。
それでライオンさんも会いたいと言われたら、握手会後合流すればOK。
すると双子達妖精と遊んでいたうさちゃんがこちらにやって来る。
「キツネさん、うさもライオンさんに会いたい。一緒に行っても良い?」
「でもこう言うの参加券がないと駄目なんだろう?」
「当日販売があるから大丈夫だよ」
「なら決まりだな。仕度するから待ってろ 」
コンタクトを取りたいのはこの親子もそうだったらしく、話はトントン拍子に決まり二人は支度を始める。
暇になった私は煎餅をボリボリ食べながら、スマホのアプリで遊ぶ
『だぁーだぁー』
「空海どうしたの?」
『あー』
そこに双子が仲良く何かを持ってきて、私の目の前におく。
それはひらがなを覚えるタブレット。
「くー」
「かい」
それぞれの名前の文字を押しながら、楽しそうに機械の声に復唱する。
「きちゅえ」
続いて私を指差し“きつね”と押しながら、赤ちゃん語で呼ばれる。
あってるような際どい言葉。
うさちゃんが教えたんだから仕方がないとことだけど、双子にはちゃんとした名前で呼んで欲しい。
「私の名前はことね」
『こ・と・え?』
「そう。空海はお利口さんだね?」
教えると不思議そうに復唱。
頭をなぜ誉めると、喜ぶ双子。
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