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エピローグ 新しい家族
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「やっぱりここの桜は綺麗だな」
「本当ね」
あの時と同じように咲き誇る桜に、あたし達は心を奪われる。
あれからあたしは知世のおかげでなんとか一命を取り戻し、あたしの誕生日である今日五つ子達と藍さんを抜かした全員であの桜を見に来た。
あたし達のことはみんなにばれているはずなのに、今日まで誰も触れることはなかった。馬那斗も何事もなかったように、怪我を負ったあたしのことを優しくいたわってくれている。
軽蔑されたってしょうがないのにね。なんか罪悪感で押しつぶされそう。でもそれも今日で終わり。今日でちゃんとお別れをしてもう二度と会わないって決めた。
「馬那斗、今日でお別れね」
「え?」
いきなり話を切り出すあたしに馬那斗は驚き口を開けたままあたしを見つめる。
瞳の奥はなぜか淋しげで怯えていた。
「あたしは馬那斗が軽蔑するような人間なの。もう知っているでしょう?」
十分分かっているのに、そう言葉にするとすごく辛い。
「だからもうあたしのことなんか忘れて、今の家族と仲良く幸せに暮らすのよ」
あふれ出そうな涙を堪えるのが精一杯で、笑うことが出来ない。抱きしめたいが、もうあたしにはそんな資格がないんだ。
「いやだ。僕はお姉ちゃんと暮らしたいんだ。お姉ちゃんがどんな人でも僕の本当のお姉ちゃんだろう?」
だけど馬那斗は軽蔑するどころか、そう言って泣きながら抱きつく。
なんでそんな優しいことが言えるの?
嬉しくてあたしも堪えていた涙が溢れ出す。
「ありがとう馬那斗。だったら………」
「深沙湖。お前も北海道に行って、これからは真っ当に生きるんだ」
あの時から一言も話してない神さんは、厳しい口調でキッパリと言う。
やっぱり神さんはあたしのこと怒っているんだ。
当たり前だよね。
あたしも実は少しだけどこか違う場所で、普通の生活をしようかって考えていた。それもいいかもね。だけどそのことを聞いた知世は笑い始め、神さんを鋭い視線で睨み付けた。
「あなたって案外バカなのね」
「何?」
「深沙湖はもうこちらの人間なの。どんなに真っ白な物でも一度黒を混ぜれば、消して取り除くことなんかできない。だから深沙ももう二度とまともな道には戻れない」
正論過ぎて、今まで甘い考えをしていた自分が愚かなことに気付かされた。
神さんも黙ったまま、知世から視線をそらす。そう私はもう裏の人間、足を洗うことなど出来ない。
「兄貴、知ちゃんに一本取られたな」
陽気に遙さんが笑い出し、屑さんは笑いを堪えている。
「馬那斗も深沙と一緒に暮らすことは、そう言うことだって覚悟しているんでしょうね?」
子供に対しても知世は厳しい現実を突きつけたが、それも正論だった。
「もちろんだよ。僕はそれでもお姉ちゃんと一緒に暮らしたい」
そう迷うことなく馬那斗は元気良く頷き、いつもの明るい笑顔を浮かばせる。
馬那斗ってあたしよりちゃんと物事を考えてしっかりしているんだね。頼りになる弟だ。
「……まったくこれから騒がしくなる」
「神さん………」
神さんの一言にあたしは耳を疑ってしまった。
だってそれってこれからもあそこに住んで良いってことだよね。
「良かったわね。深沙湖ちゃん」
「はい、これから姉弟共々宜しくお願いします」
十年前の約束はまだ叶えられそうもないけど、これから少しづつ二人の距離を縮めていきたい。そして出来れば十年後は二人で寄り添って生きて行けてたら素敵だね。
ねぇ、神さん?
おしまい。
「本当ね」
あの時と同じように咲き誇る桜に、あたし達は心を奪われる。
あれからあたしは知世のおかげでなんとか一命を取り戻し、あたしの誕生日である今日五つ子達と藍さんを抜かした全員であの桜を見に来た。
あたし達のことはみんなにばれているはずなのに、今日まで誰も触れることはなかった。馬那斗も何事もなかったように、怪我を負ったあたしのことを優しくいたわってくれている。
軽蔑されたってしょうがないのにね。なんか罪悪感で押しつぶされそう。でもそれも今日で終わり。今日でちゃんとお別れをしてもう二度と会わないって決めた。
「馬那斗、今日でお別れね」
「え?」
いきなり話を切り出すあたしに馬那斗は驚き口を開けたままあたしを見つめる。
瞳の奥はなぜか淋しげで怯えていた。
「あたしは馬那斗が軽蔑するような人間なの。もう知っているでしょう?」
十分分かっているのに、そう言葉にするとすごく辛い。
「だからもうあたしのことなんか忘れて、今の家族と仲良く幸せに暮らすのよ」
あふれ出そうな涙を堪えるのが精一杯で、笑うことが出来ない。抱きしめたいが、もうあたしにはそんな資格がないんだ。
「いやだ。僕はお姉ちゃんと暮らしたいんだ。お姉ちゃんがどんな人でも僕の本当のお姉ちゃんだろう?」
だけど馬那斗は軽蔑するどころか、そう言って泣きながら抱きつく。
なんでそんな優しいことが言えるの?
嬉しくてあたしも堪えていた涙が溢れ出す。
「ありがとう馬那斗。だったら………」
「深沙湖。お前も北海道に行って、これからは真っ当に生きるんだ」
あの時から一言も話してない神さんは、厳しい口調でキッパリと言う。
やっぱり神さんはあたしのこと怒っているんだ。
当たり前だよね。
あたしも実は少しだけどこか違う場所で、普通の生活をしようかって考えていた。それもいいかもね。だけどそのことを聞いた知世は笑い始め、神さんを鋭い視線で睨み付けた。
「あなたって案外バカなのね」
「何?」
「深沙湖はもうこちらの人間なの。どんなに真っ白な物でも一度黒を混ぜれば、消して取り除くことなんかできない。だから深沙ももう二度とまともな道には戻れない」
正論過ぎて、今まで甘い考えをしていた自分が愚かなことに気付かされた。
神さんも黙ったまま、知世から視線をそらす。そう私はもう裏の人間、足を洗うことなど出来ない。
「兄貴、知ちゃんに一本取られたな」
陽気に遙さんが笑い出し、屑さんは笑いを堪えている。
「馬那斗も深沙と一緒に暮らすことは、そう言うことだって覚悟しているんでしょうね?」
子供に対しても知世は厳しい現実を突きつけたが、それも正論だった。
「もちろんだよ。僕はそれでもお姉ちゃんと一緒に暮らしたい」
そう迷うことなく馬那斗は元気良く頷き、いつもの明るい笑顔を浮かばせる。
馬那斗ってあたしよりちゃんと物事を考えてしっかりしているんだね。頼りになる弟だ。
「……まったくこれから騒がしくなる」
「神さん………」
神さんの一言にあたしは耳を疑ってしまった。
だってそれってこれからもあそこに住んで良いってことだよね。
「良かったわね。深沙湖ちゃん」
「はい、これから姉弟共々宜しくお願いします」
十年前の約束はまだ叶えられそうもないけど、これから少しづつ二人の距離を縮めていきたい。そして出来れば十年後は二人で寄り添って生きて行けてたら素敵だね。
ねぇ、神さん?
おしまい。
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