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8章(エピローグ)物語は続いていく
131.会いたくない人
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「お母ちゃん、ただいま。セイヤおじちゃん達を連れて来たよ」
「おかえりなさい。皆さまいらっしゃいませ」
おじさんに肩車されご機嫌のミシェルちゃんが元気の良い声に、リンさんは視線を上げ以前と変わらない笑顔で私達を迎えてくれる。
防具屋は特に被害がなかったのか、前と同じ外見と店内。
「スピカ?」
どうやら先客がいたらしく、私達に気づくなり驚きを隠せない小声が聞こえた。聞き覚えがあって出来れば二度と会いたくなかった人。
彼女は洗脳とは関係がなく魔族を憎んでいるのだから、今でも当然その意志は変わらない。
「ナーシャ、久しぶりね?」
多分何も知らないスピカさんは、懐かしい知り合いに愛想良く声を掛けた。ナーシャさんの表情が一瞬引き攣るけれど、すぐに笑顔を作り愛想良く手を振る。
何事もないといいんだけど
「ナーシャ、ちょうどいい。話したいことがあるから、ちょっと付き合ってくれ」
「え、ヒナタちゃんも一緒ならいいわよ」
空気を読み龍ノ介さんはナーシャさんを連れ出そうとすると、なぜか私の動向をご指名されてしまう。
なぜ私?
「ナーシャさんといつの間に仲良くなったの?」
「龍ノ介FCメンバーだから?」
それ私も聞きたい。
心の底で突っ込みながらも、無理やりそれらしい理由を作る。
星ちゃんもナーシャさんが魔族を憎んでいることを知らない。
せっかくすべてが丸く収まったのに、龍ノ介さんの元カノが魔族を憎んでいるなんて知ったら心痛めるよね?
そうならないためにも、ここは頷いた方が良い。
「陽、いいか?」
「はい、構いません」
「え~ヒナタお姉ちゃんもいっちゃうの?」
「うん、ごめんね。なるべくすぐ戻ってくるからね」
残念がるミシャルちゃんに約束をして、私は龍ノ介さんとナーシャさんの後を追う。
私だって出来ることならミシェルちゃんと遊びたい。
「リュウノスケ様そんな警戒しなくても、騒ぎを起こしたりしないので安心して下さい。聖女様のお言葉通り私達魔族否定派は、魔族禁止の新都市を作ることにしました」
「そうか。それが一番いいな」
異様な空気が静かに流れる中、先に口を開いたのはナーシャさんだった。
以前と違いずいぶん融通の利いた考えで、龍ノ介さんだかでなく私もホッと肩をなでおろす。
星ちゃんの祈りは洗脳を解くだけでなく、魔族嫌い・人間嫌いの人達にもちゃんと声が届いている。
星ちゃんは本当にすごいことをやり遂げたんだ。
「それにしても洗脳のきっかけが、スピカに振られた腹いせだったんですね? これには魔族否定派の私達でさえも、魔族に同情しています」
「確かにオレもそれを聞いた時は、ありえねぇった思ったよ。男の風上にも置けん奴」
「私もです。男のと言うか人間のクズですよ」
話の流れ的に当然αのことになり、ここでもボロクソ評価。
彼の存在は偉大だったはずが、真相判明した現在評価は地の底に落ちたとか。過激な人達からは、死んで当然だと言う始末。
遺体を聖都の一等地に埋葬される予定が、死刑囚と一緒の地に変更されるらしい。
同僚達からも不満爆発。悪行、パワハラなどが次々出るわ出るわ。ここまでの最悪だと分かれば、同情なんか一切ない。全責任がαにある。
「確かにそうね。でも私もそうなのかも? 洗脳されてないのに魔族はすべて敵だと信じ、魔王の孫娘であるセイカちゃんを亡き者にしようとしてしまった。どうして距離を取ると言う選択肢を考えなかったのかしら」
「ナーシャが魔族を憎む理由はしっかりしてるんだから、あんなオヤジとはまったく違う。逆に距離を取る選択をしてくれてありがとうな」
「リュウノスケ様」
私の言い方がいけなかったのか、途端に落ち込むナーシャさん。龍ノ介さんは優しく言葉を掛ける。そんな龍ノ介さんのお胸元で、ナーシャさんは泣き出してしまう。
二人の関係は元婚約者。ナーシャさんには夫も子供もいる。
ましては龍ノ介さんと考え方も違うんだから、再び恋愛感情が芽生えるはずがない。
そう思っていてもこんな場面見せられると、惨めな気持ちになってしまう。
なんで私はここにいるんだろう?
「私、みんなの元に戻ります」
「え、戻らないで。私はヒナタちゃんに用があるの。そしてこれは絶対に違うから」
泣きたい気持ちをこらえてそう言って立ち去ろうとしたのに、ナーシャさんは龍ノ介さんからすぐに離れ私の手を掴む。そして懸命に弁解される。
龍ノ介さんは黙っているけれど、気にくわないのかムッとなった。
それはどっちのムッなんだろうか?
「え、私に?」
「そう。はい。これ。ヒナタちゃんに渡しておくわね」
と言われて渡されたのは、ヨハンさん達と同じパールピンクの魔石が埋め込まれてる指輪が三つ。
龍ノ介さんとの婚約指輪に違えないけれど、なんで私に。しかも三つ?
「どうして?」
「私達既婚者組には、洗脳が解けた今もう必要ない物なのよ。強いて言うなら邪魔」
「その言い方ちょっと酷くないか? だったら売ればいいだろう?」
「リュウノスケ様の財産分与をしたので、お金には一切困ってないんです。ですからリュウノスケ様の新しい婚約者候補の託します」
「こ婚約者候補??」
声が裏返り、気が動転しそうになる。
まだ恋人になってもいないのに、いきなり婚約候補はないと思います。気が早過ぎると言うより、早とちり?
どうすればいいか分からずに困っていると、龍ノ介さんが指輪を横取りポケットに突っ込む。
「陽には時が来たら、新しいのを渡すつもりだ。これはオレが売ってこれからの軍資金にする」
龍ノ介さんらしくない素っ気ない口調と台詞。頬が赤く染まっていた。
滅茶苦茶嬉しいです。
「おかえりなさい。皆さまいらっしゃいませ」
おじさんに肩車されご機嫌のミシェルちゃんが元気の良い声に、リンさんは視線を上げ以前と変わらない笑顔で私達を迎えてくれる。
防具屋は特に被害がなかったのか、前と同じ外見と店内。
「スピカ?」
どうやら先客がいたらしく、私達に気づくなり驚きを隠せない小声が聞こえた。聞き覚えがあって出来れば二度と会いたくなかった人。
彼女は洗脳とは関係がなく魔族を憎んでいるのだから、今でも当然その意志は変わらない。
「ナーシャ、久しぶりね?」
多分何も知らないスピカさんは、懐かしい知り合いに愛想良く声を掛けた。ナーシャさんの表情が一瞬引き攣るけれど、すぐに笑顔を作り愛想良く手を振る。
何事もないといいんだけど
「ナーシャ、ちょうどいい。話したいことがあるから、ちょっと付き合ってくれ」
「え、ヒナタちゃんも一緒ならいいわよ」
空気を読み龍ノ介さんはナーシャさんを連れ出そうとすると、なぜか私の動向をご指名されてしまう。
なぜ私?
「ナーシャさんといつの間に仲良くなったの?」
「龍ノ介FCメンバーだから?」
それ私も聞きたい。
心の底で突っ込みながらも、無理やりそれらしい理由を作る。
星ちゃんもナーシャさんが魔族を憎んでいることを知らない。
せっかくすべてが丸く収まったのに、龍ノ介さんの元カノが魔族を憎んでいるなんて知ったら心痛めるよね?
そうならないためにも、ここは頷いた方が良い。
「陽、いいか?」
「はい、構いません」
「え~ヒナタお姉ちゃんもいっちゃうの?」
「うん、ごめんね。なるべくすぐ戻ってくるからね」
残念がるミシャルちゃんに約束をして、私は龍ノ介さんとナーシャさんの後を追う。
私だって出来ることならミシェルちゃんと遊びたい。
「リュウノスケ様そんな警戒しなくても、騒ぎを起こしたりしないので安心して下さい。聖女様のお言葉通り私達魔族否定派は、魔族禁止の新都市を作ることにしました」
「そうか。それが一番いいな」
異様な空気が静かに流れる中、先に口を開いたのはナーシャさんだった。
以前と違いずいぶん融通の利いた考えで、龍ノ介さんだかでなく私もホッと肩をなでおろす。
星ちゃんの祈りは洗脳を解くだけでなく、魔族嫌い・人間嫌いの人達にもちゃんと声が届いている。
星ちゃんは本当にすごいことをやり遂げたんだ。
「それにしても洗脳のきっかけが、スピカに振られた腹いせだったんですね? これには魔族否定派の私達でさえも、魔族に同情しています」
「確かにオレもそれを聞いた時は、ありえねぇった思ったよ。男の風上にも置けん奴」
「私もです。男のと言うか人間のクズですよ」
話の流れ的に当然αのことになり、ここでもボロクソ評価。
彼の存在は偉大だったはずが、真相判明した現在評価は地の底に落ちたとか。過激な人達からは、死んで当然だと言う始末。
遺体を聖都の一等地に埋葬される予定が、死刑囚と一緒の地に変更されるらしい。
同僚達からも不満爆発。悪行、パワハラなどが次々出るわ出るわ。ここまでの最悪だと分かれば、同情なんか一切ない。全責任がαにある。
「確かにそうね。でも私もそうなのかも? 洗脳されてないのに魔族はすべて敵だと信じ、魔王の孫娘であるセイカちゃんを亡き者にしようとしてしまった。どうして距離を取ると言う選択肢を考えなかったのかしら」
「ナーシャが魔族を憎む理由はしっかりしてるんだから、あんなオヤジとはまったく違う。逆に距離を取る選択をしてくれてありがとうな」
「リュウノスケ様」
私の言い方がいけなかったのか、途端に落ち込むナーシャさん。龍ノ介さんは優しく言葉を掛ける。そんな龍ノ介さんのお胸元で、ナーシャさんは泣き出してしまう。
二人の関係は元婚約者。ナーシャさんには夫も子供もいる。
ましては龍ノ介さんと考え方も違うんだから、再び恋愛感情が芽生えるはずがない。
そう思っていてもこんな場面見せられると、惨めな気持ちになってしまう。
なんで私はここにいるんだろう?
「私、みんなの元に戻ります」
「え、戻らないで。私はヒナタちゃんに用があるの。そしてこれは絶対に違うから」
泣きたい気持ちをこらえてそう言って立ち去ろうとしたのに、ナーシャさんは龍ノ介さんからすぐに離れ私の手を掴む。そして懸命に弁解される。
龍ノ介さんは黙っているけれど、気にくわないのかムッとなった。
それはどっちのムッなんだろうか?
「え、私に?」
「そう。はい。これ。ヒナタちゃんに渡しておくわね」
と言われて渡されたのは、ヨハンさん達と同じパールピンクの魔石が埋め込まれてる指輪が三つ。
龍ノ介さんとの婚約指輪に違えないけれど、なんで私に。しかも三つ?
「どうして?」
「私達既婚者組には、洗脳が解けた今もう必要ない物なのよ。強いて言うなら邪魔」
「その言い方ちょっと酷くないか? だったら売ればいいだろう?」
「リュウノスケ様の財産分与をしたので、お金には一切困ってないんです。ですからリュウノスケ様の新しい婚約者候補の託します」
「こ婚約者候補??」
声が裏返り、気が動転しそうになる。
まだ恋人になってもいないのに、いきなり婚約候補はないと思います。気が早過ぎると言うより、早とちり?
どうすればいいか分からずに困っていると、龍ノ介さんが指輪を横取りポケットに突っ込む。
「陽には時が来たら、新しいのを渡すつもりだ。これはオレが売ってこれからの軍資金にする」
龍ノ介さんらしくない素っ気ない口調と台詞。頬が赤く染まっていた。
滅茶苦茶嬉しいです。
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