普通の女子高生だと思っていたら、魔王の孫娘でした

桜井吏南

文字の大きさ
上 下
138 / 157
7章 すべてを終わらせる

119.作戦会議?

しおりを挟む
「ここに主様曰くシノブとマヒナ様がいます」
 
 玉座に辿りついた私達にニシキは重々しく言う。

 ついにここまでやって来たんだ。この扉を開けたらあの時と同じ激しい戦闘になる。
 あの時は足手まといで最後の最後で美味しいとこだけ持っていったって感じだったけれど、今度は違うちゃんと役に立てる。

「──星歌、なんかあったらおっさんよりオレを頼れよ」
「え、太?」

 耳元で太が小声でらしくないことを呟く。

 彼氏に昇格したからやっぱりパパと仲良くするのは面白くないのかな?
 これが嫉妬?

 そう言ってくれるのは嬉しいから、手を強く握り笑顔になって頷く。

「おっさんと師匠にはシノブのことにだけ集中できるようにな」
「あ、なんだ。そう言うことか」
「は?」

 しかし私が思っていたのとは別の思惑だった。むしろパパと龍くんに気遣っている。
 私の喜びを返せと思い呆れるけれど、よく考えてみれば私の方がどうかしていた。

 勘違いした傲慢な私が馬鹿で恥ずかしい。
 そうだよね。
 今の状況を考えれば、少しでもパパと龍くんの負担を減らすのは当然。
 太考えは正しい。

 申し訳ない気持ちでパパに視線を向けると、いつものパパと違っている。
 荒々しい気を纏っていて、鋭い眼光は血に飢えた獣の……あの時の戦闘モードのパパ。

 前回は二時間気を整えが必要だったのに、今はいきなり変わったよね? それはつまり以前とは比較にならない程の強さを秘めているってこと。
 結局チートのパパが一番強くなった。
 龍くんもいつもと違う雰囲気で、私達と格の違いを感じる。

「ニシキ、シノブの他に何人いる?」
「マヒナ様と夫のニケル様です。後は主様の腹心シャニーとニケル様愛弟子のモーメント。ゾンビ兵になるかと思われます」
「マヒナは結婚してたのか?」
「はい。学生の娘と息子がいます」

 ここに来てあのマヒナが既婚者で、しかも二人の子持ちと言うことが発覚。
 意外に思ったのは私だけではなく太陽と龍くんもで、真顔から拍子抜けの表情に変わった。

 マヒナのことだから、子供に魔族が一番で人間は敵だって絶対教えてそう。

「お母さんは知ってたの?」
「まぁな。何度か会ったよ。ただ心を持たないホムンクルスだと思われていたから、特に紹介されることはなかったが」

 当然そうなお母さんが不思議に思い聞けば、歯切れの悪い答えが返って来る。

 いくらマヒナを見限ったとしても、完全には縁が切れないんだろうな。
 それが親だから。出来ることなら仲良くしたいんだと思う。

「そうなんだ。……お母さんは陽と一緒に後方援護に回る?」
「いいや。シノブはあたしとセイヤに任せてくれ。たとえどんな事情があったとしても、これは親の責任だ。そして最後はセイカに任せる。……望みは捨てたくないんだ」
「うん、任せて」

 今のお母さんはきっと世界で一番きれいで凛々しい母親なんだと思う。パパも同じ気持ちなのか、私を強い眼差しで見つめられ頷く。
 そんな二人の願いを叶えたいと思った。
 だからと言って弟を助けるために、私が命を落とすようなことはしない。弟が元に戻ったとしても、私が死んだら両親は余計悲しむ。
 だから何か良い方法が、──あっ!?

「ここで私がカマイタチを撃ったら、戦いは私達の優勢になるよね?」
「そうだな。試しにやってみろ」

 すごくいいアイデアをフッと思い出し提案しすると、龍くんはかなり乗り気で即答で賛成してくれる。
 が、
 突如軽蔑するような冷たい視線を背後から感じた。
 誰の視線かと思い辺り見回せば、黒崎が私を見てドン引している。

 きっと横暴な私に幻滅したんだろうけれど、一体私を美化されているんだろうか?
 本当の私を知っていたら、告白されなかった?
 別に黒崎に幻滅されても毛嫌いされても構わないけれど、勝手に美化して理想を押し付けるのは迷惑だ。
 
 ……なんかそれってすごくムカつく!!

 そう思えば思うほど無性に腹が立っていく。
 この怒りをカマイタチに乗せるべく一歩前に踏み出し、脳内に浮かぶ読めないも……いつもと違って文字がどす黒い?
 本能が使ってはいけないと警告する。

「星歌、どうした? 使わないのか?」
「うん。文字がどす黒くて嫌な感じがしたんだ」
「それは使わなくて大正解だ。魔王の力は繊細だから、黒いと言うことは穢れている証。セイカがカマイタチで不意打ちをしようとするから」

 不思議そうに問う龍くんに隠す必要がないから正直に話すと、お母さんから思わぬ答えが返って来てしまう。

 卑怯な人達に卑怯なことをしたらいけないの?
 正々堂々戦ったっても痛い目を見るって分かっているのに、それでもいけないこと?
 なんで?

「よく分からないけど、魔王の力って清きものなんだね」
「そうだな。本来魔王の力は、民衆を正しき道に導かなければいけないからな。父様も穢れた魔王の力を使い続けた結果、闇に心を支配され正気を失い地上最悪の魔王となった」
「……黒い文字の時は絶対に使わないと誓います」

 そこまで言われたら、納得がいかなくても怖くて使えない。
  いくら私が魔王の力を使えるとしても、民衆のためを思えば女魔王にならない方が良い。これは魔族の未来のためでもある。
 やっぱり新たなる魔王は、民衆の選挙で決めるべきだと改めて強く思う。

「星歌は無理しなくて良い。ここは父さんと母さん任せておけば良い」
「うん、そうだね。任せるよ」

 そう言うのは今言って欲しくないなと思いながらも、こんな所で揉めたくないから私が大人になった。

──そして扉が開かれる。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

〈完結〉毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!

暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい! 政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

処理中です...