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6章 ラスボスへの道のり
114.最終決戦前夜 星歌編
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「太くんと喧嘩でもしたのか?」
「え、してないけど」
「だったらどこか調子が悪いのか? 審判の花で何かあったのか?」
「? 元気だけど、なんで?」
メッチャ私を心配するパパだけど、心当たりがまったくなくって眉を曲げて問い返す。
むしろ審判の花のおかげで絆は深まった。
幸せいっぱいのなのに、どうして検討違いなことばかり聞くんだろう?
そんな風に見える?
「夕食の時、微妙な表情を太くんとしてたから」
「あ、それでか。それはフェイリルの友達の肉だと思ったら、躊躇してただけ。でも残すのは悪いと思って、全部食べたけどね」
「それなら良かった。変なことを聞いて悪かったな」
理由が分かるとパパはホッと笑みを浮かべ、私の頭をワシワシとなでる。
本当にパパはどこまでも心配性なんだからね。
そんな些細なことにすぐ気づいて必要以上に心配する。親ってみんなそう言う者なのだろうか?
「ねぇパパ。ちょっと変な話をするけれど、気を悪くしないでね」
「それって母さんのことか?」
お母さんについて話をしようとすると、察しがついているのか言い当てられてしまった。笑顔から覚悟した表情に変わる。
パパは知ってる?
「母さんの身体はシノブが作ったホムンクルス。マヒナがシノブの協力者ならば、高い確率で罠を仕掛けているだろうな?」
「知ってたんだね? そんなことなったら大丈夫?」
「それはなんとも言えないな。だが父さんの役目は星歌を守り抜くことだから、見失ったりはしない。そう言うことはすべてが終わらせてからだ」
迷いない瞳で私を見つめながら強く言うけれど、まったくと言って良いほど安心はできない。不安が積もるばかり。
もしお母さんに裏切られたらパパはどうなっちゃうのかな?
もう二度と笑ってくれない?
「パパはここで待ってる?」
却下されると分かっていても、一応ダメ元で聞いてしまう。
もし万が一頷かれたら、それはそれで結構困る。パパ抜きでシノブには多分勝てない。
「それは無理だよ。星歌だって待ってるのは無理だろう?」
「うん。私はシノブの魂を浄化する。二度と転生しないように」
パパが強く決意をしたように、私だってそう強く決意する。
聖女としての役目とかトゥーランを助けたいとかじゃなく、私自身のためシノブの魂を浄化してすべてを終わらせよう。
「魂を浄化? そんなこと出来るのか?」
「審判の花の加護は、悪しき物だけ浄化出来るんだ。だからもしシノブに良心が残っていれば、いい人になるってこと」
信じられないと言う表情になっていた。
流石のパパも、シノブに良心が残っているとは思えないらしい。
そうだよね?
今まで散々苦しめられてきたんだから、そうなるのは当然。パパも人の子だった。
「それはつまりスピカがシノブの罠だとしても、悪しき部分を浄化をすれば正常に戻るんだな」
「は、そうだね。もしお母さんに何かあっても、シノブと一緒に浄化の光を浴びせればいいんだ。そしたらお母さんは元に戻るね。パパって天才!!」
私には全然思いつかなかった解決策をすんなり導き出すパパ。
私って結構薄情な奴? それとも愛の深さの違い?
そんなことを思いながらも、嬉しさのあまりパパにダイビング。
これで親子三人仲良く暮らせるし、パパの笑顔は消えない。
本当の意味で幸せになれる。
「明日は絶対に負けられないな。──戦闘モードを使っていいか?」
「え」
「大丈夫。この日のために気力強化してきたから、今度は絶対幻夢に負けたりしない」
「パパの大丈夫は、あてにならないよ」
パパの意気込みは相当なもので堅い決意と分かっても、その言葉を聞いた瞬間嫌な予感がよぎり頷けず。
久しぶりに聞く信用のない大丈夫。
戦闘モードを使わなくても、みんながいるから勝てるはず。いくらシノブでも一対七……お母さんがシノブ側に着いたとしても、二対七。一溜りがない。
それともパパは怠慢でシノブとやろうとしている? なんで?
「そんなこと言わないでくれ。ちゃんと仲間とは連携を取るが、相手をするのはシノブ一人じゃないんだ。少なくてもマヒナとニシキと言う仲間がいるだろう?」
「? 三人同時戦になるの? 一人一人」
「そんなわけないだろう? なんでそんな効率が悪いことをするんだ? 魔王戦の時だって直近の部下達と魔王五人だったぞ」
「え、そうなんだ。その時パパ達は三人だったよね?」
ゲームの知識はここでも無意味だった。
言われてみれば確かに一人一人で戦うのはあまりにも不利。最強クラスが一気に襲った方がいいに決まっている。
ゲームは所詮プレイヤー有利になるよう作られた物か。
でもそしたら三対五ってパパ達の方が不利だった?
「あの時は何度も死を覚悟したが、星歌の顔を見るまでは死ねないとも思った。だから勝てたんだと思う。全力で挑まなければ、やられるんだ。だから許して欲しい」
「……分かった……。でも絶対に死なないで。私を一人にしないで。パパがいない未来なんて考えたくもない」
そこまで言われたら認めざる負えない。
屁理屈を言えばそれでも今回は七人なんだから、四人になった所でたかが知れている。だけどそう言うことでもなさそう。
魔王戦は機会があったら詳しく聞いてみたかったけれど、たぶん聞いたらいけない怖い内容なんだろう。少なくても仲間が一人死んでいる。だから聞かずが花と言う奴だ。
「ありがとう。父さんにとって、何よりも勇気が湧いてくる魔法の言葉だよ。明日は一緒に頑張ろうな」
「うん。絶対お前は下がってろとか言わないでよ?」
「努力はするよ。でも最後は星歌に任せるから」
パパにしては珍しく一緒に頑張ろうと言ってくれる。
でもやっぱり私には前線には行かせたくない。美味しいとこだけ持っていけ。
という気持ちがバンバン伝わってくるけれど、そこはあえてスルー。
私は当初通り私に出来ることを精一杯頑張ろう。
「え、してないけど」
「だったらどこか調子が悪いのか? 審判の花で何かあったのか?」
「? 元気だけど、なんで?」
メッチャ私を心配するパパだけど、心当たりがまったくなくって眉を曲げて問い返す。
むしろ審判の花のおかげで絆は深まった。
幸せいっぱいのなのに、どうして検討違いなことばかり聞くんだろう?
そんな風に見える?
「夕食の時、微妙な表情を太くんとしてたから」
「あ、それでか。それはフェイリルの友達の肉だと思ったら、躊躇してただけ。でも残すのは悪いと思って、全部食べたけどね」
「それなら良かった。変なことを聞いて悪かったな」
理由が分かるとパパはホッと笑みを浮かべ、私の頭をワシワシとなでる。
本当にパパはどこまでも心配性なんだからね。
そんな些細なことにすぐ気づいて必要以上に心配する。親ってみんなそう言う者なのだろうか?
「ねぇパパ。ちょっと変な話をするけれど、気を悪くしないでね」
「それって母さんのことか?」
お母さんについて話をしようとすると、察しがついているのか言い当てられてしまった。笑顔から覚悟した表情に変わる。
パパは知ってる?
「母さんの身体はシノブが作ったホムンクルス。マヒナがシノブの協力者ならば、高い確率で罠を仕掛けているだろうな?」
「知ってたんだね? そんなことなったら大丈夫?」
「それはなんとも言えないな。だが父さんの役目は星歌を守り抜くことだから、見失ったりはしない。そう言うことはすべてが終わらせてからだ」
迷いない瞳で私を見つめながら強く言うけれど、まったくと言って良いほど安心はできない。不安が積もるばかり。
もしお母さんに裏切られたらパパはどうなっちゃうのかな?
もう二度と笑ってくれない?
「パパはここで待ってる?」
却下されると分かっていても、一応ダメ元で聞いてしまう。
もし万が一頷かれたら、それはそれで結構困る。パパ抜きでシノブには多分勝てない。
「それは無理だよ。星歌だって待ってるのは無理だろう?」
「うん。私はシノブの魂を浄化する。二度と転生しないように」
パパが強く決意をしたように、私だってそう強く決意する。
聖女としての役目とかトゥーランを助けたいとかじゃなく、私自身のためシノブの魂を浄化してすべてを終わらせよう。
「魂を浄化? そんなこと出来るのか?」
「審判の花の加護は、悪しき物だけ浄化出来るんだ。だからもしシノブに良心が残っていれば、いい人になるってこと」
信じられないと言う表情になっていた。
流石のパパも、シノブに良心が残っているとは思えないらしい。
そうだよね?
今まで散々苦しめられてきたんだから、そうなるのは当然。パパも人の子だった。
「それはつまりスピカがシノブの罠だとしても、悪しき部分を浄化をすれば正常に戻るんだな」
「は、そうだね。もしお母さんに何かあっても、シノブと一緒に浄化の光を浴びせればいいんだ。そしたらお母さんは元に戻るね。パパって天才!!」
私には全然思いつかなかった解決策をすんなり導き出すパパ。
私って結構薄情な奴? それとも愛の深さの違い?
そんなことを思いながらも、嬉しさのあまりパパにダイビング。
これで親子三人仲良く暮らせるし、パパの笑顔は消えない。
本当の意味で幸せになれる。
「明日は絶対に負けられないな。──戦闘モードを使っていいか?」
「え」
「大丈夫。この日のために気力強化してきたから、今度は絶対幻夢に負けたりしない」
「パパの大丈夫は、あてにならないよ」
パパの意気込みは相当なもので堅い決意と分かっても、その言葉を聞いた瞬間嫌な予感がよぎり頷けず。
久しぶりに聞く信用のない大丈夫。
戦闘モードを使わなくても、みんながいるから勝てるはず。いくらシノブでも一対七……お母さんがシノブ側に着いたとしても、二対七。一溜りがない。
それともパパは怠慢でシノブとやろうとしている? なんで?
「そんなこと言わないでくれ。ちゃんと仲間とは連携を取るが、相手をするのはシノブ一人じゃないんだ。少なくてもマヒナとニシキと言う仲間がいるだろう?」
「? 三人同時戦になるの? 一人一人」
「そんなわけないだろう? なんでそんな効率が悪いことをするんだ? 魔王戦の時だって直近の部下達と魔王五人だったぞ」
「え、そうなんだ。その時パパ達は三人だったよね?」
ゲームの知識はここでも無意味だった。
言われてみれば確かに一人一人で戦うのはあまりにも不利。最強クラスが一気に襲った方がいいに決まっている。
ゲームは所詮プレイヤー有利になるよう作られた物か。
でもそしたら三対五ってパパ達の方が不利だった?
「あの時は何度も死を覚悟したが、星歌の顔を見るまでは死ねないとも思った。だから勝てたんだと思う。全力で挑まなければ、やられるんだ。だから許して欲しい」
「……分かった……。でも絶対に死なないで。私を一人にしないで。パパがいない未来なんて考えたくもない」
そこまで言われたら認めざる負えない。
屁理屈を言えばそれでも今回は七人なんだから、四人になった所でたかが知れている。だけどそう言うことでもなさそう。
魔王戦は機会があったら詳しく聞いてみたかったけれど、たぶん聞いたらいけない怖い内容なんだろう。少なくても仲間が一人死んでいる。だから聞かずが花と言う奴だ。
「ありがとう。父さんにとって、何よりも勇気が湧いてくる魔法の言葉だよ。明日は一緒に頑張ろうな」
「うん。絶対お前は下がってろとか言わないでよ?」
「努力はするよ。でも最後は星歌に任せるから」
パパにしては珍しく一緒に頑張ろうと言ってくれる。
でもやっぱり私には前線には行かせたくない。美味しいとこだけ持っていけ。
という気持ちがバンバン伝わってくるけれど、そこはあえてスルー。
私は当初通り私に出来ることを精一杯頑張ろう。
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