普通の女子高生だと思っていたら、魔王の孫娘でした

桜井吏南

文字の大きさ
上 下
130 / 157
6章 ラスボスへの道のり

111.審判の花

しおりを挟む
【ルピーラ? どうも見当たらないと思ったら、モンスターにされてたのね】
「ルピ」

 フェイリルはその子を上手くキャッチする。

 それはないんじゃないの?

 心の底で激しく突っ込んでしまうけれど、それでも良かったのかフェイリルに泣きつく。

「誰その子?」
【この子は私の使い魔の一匹。チョピの許可を貰って似せて作らせたの】
「一匹って他にもいるの?」
【うん。寂しくならないように三十匹。まとめてルピって言うの】
「!?」

 あまりの多さに驚きである。

 こんな可愛い子が後二十九匹いるなんて、そこはもはやパラダイス。
 早くそこに行って賜りたい。

【ムー。セイカはボクだけでいいの。ルピ達に心を奪われちゃ駄目】

 そんな私のやましい心を読み取ったチョピは、ムッと怒りながら私へダイビング。
 フェイリルと違って、こっちはものすごい焼きもち焼き。
 まぁそこがすごく可愛いんだけど。

「本当にチョピは甘えん坊さんだね。太、この子はルピーラ。フェイリルの使い魔のルピなんだって。全部で三十匹いるみたい」
「三十匹? それはすごいな」

 さすがに太も多く感じたのか興味津々の眼差しでルピーラを見つめる。キョトンと不思議損に首を傾げるルピーラに、フェイルは微笑み何かを耳打ちした。

「ルピルピ」

 たちまちルピーラはご機嫌になり太の肩にちょこんと乗り、寄り添い尻尾を使い甘え始める。

 滅茶苦茶可愛い。

「おい星歌。こいつは何を言ってるんだ?」

 困り果てる太を助けたいけれど、残念ながら私にもルピーラの言葉は分からない。
 でもなんとなく予想はつく。

【助けてくれて、ありがとうだよ。ルピの言葉は術者の私には分からないんだ】

 フェイリルの通訳は、予想通りの答えだった。
 言葉が分からなくてもチョピとルピーラは似ているから、なんとなく分かる。

「助けてくれてありがとうだって。ルピの言葉はフェイリルにしか分からないみたい」
「へぇ~。助かって良かったな」
「ルピ!!」

 感謝の気持ちが伝わり、二人は仲良くなった。




 審判の花が咲いている場所は、洞窟なのに色とりどりの花が咲き乱れている草原。それから本当にたくさんのルピがいて、こちらも色とりどりだった。
 まさしくここは楽園である。

【セイカ、早くを審判の花の加護を受けて帰ろう】
「そそうだね。みんなが心配するもんね。太はここで待っててくれる?」
「分かった」

 チョピの怒りは収まらず。
 これ以上怒らせて嫌われたくないから、変な汗をダラダラ流し話を合わせる。
 それにチョピの言う通り早く戻らないと、特にパパが心配する。

「ねぇ、チョピ。審判の花の加護ってどうやって受けるの?」

 辺りを見回しても泉はないので、今回はみそぎではない?

【ボクが審判の花を摘んでセイカの髪に着けるんだ。そしたら聖女の力がパワーアップして、悪しき物だけを浄化できるようになるよ】
「そしたら人間の洗脳が解けるようになるね。……もしやシノブも?」

 随分可愛らしい加護の方法に笑顔がほころびそれと同時にふと偽善者らしい考えが思い浮かぶ。

 万が一にもシノブに良心がほんの少しでも残っているんならば、悪しき心を浄化したら善人になる?
 …………。
 善人になってもそれまでの悪行が許される訳でもないから、むしろそっちの方が生き地獄かも?
 それでも中には善人シノブを見て許し認めてくれる人がいると思うけれど、私は絶対に許さないし認めない。浄化したら顔も見たくない。

【良心があればね。良心がなかったら、魂ごと浄化されて消滅するだけ】
「さっきと同じやり方でいいの?」

 記憶を持って転生できるスキルを持っているシノブ。今まではその辺を深く考えずに倒すことだけを考えていたけれど、それじゃ意味がないって今さら気づいた。魂が消滅する倒した方が断然いい。もし転生して数十年後に再び地球までやって来たら、たまったもんじゃない。
 絶対ここで決着をつける。

【うん。それに浄化の光でも可能だよ。でも強力になるから一発撃ったら、しばらく動けなくなるけどね】
「そうなんだ。だったら失敗は絶対に許されないか」

 チョピは軽く言うけれど、結構重大なことで最終手段にしようと思った。
 パパにとどめを刺してもらうしかやっぱりないらしい。

 パパはもう心を傷つけられたりしないだろうか?
 それが一番の心配。
 今はお母さんもいるから大丈夫だと思うけれど、よく考えたらお母さんの身体は忍が作ったホムンクルス。
 何か罠を仕掛けている可能性があるかも知れない。
 そうなったらあの時とは比べ物にならないぐらいに傷つくんだよね?
 精神崩壊。
 パパはその可能性に気づいているんだろうか?

 今夜そのことも含めて二人だけで話せれば良いな。

【セイカ、始めるよ。いい?】
「うん。でも一凛しかない審判の花を摘んでもいいの?」

 いざ儀式と言う所で、そもそもの疑問を抱く。
 綺麗な花畑の中心に一凛だけ光り輝くピンクのハートの可愛らしい小さな花が連なって咲いている。そう藤みたい。
 これを花飾りにするのはセンスがいいとは思うんだけど、これを摘んだら審判の花はなくなってしまう。

 審判の花がなくなったら、災いが訪れる?

【大丈夫。ボクが摘めば新しい審判の花が咲くから】

 私の考えすぎだった。

「そうなの? なら問題ないね」
【うん。じゃぁ始めるよ】

 ポキ

 審判の花を摘むというより、躊躇なく強引に茎を折る。まったくありがたみを感じられない。

 そんなんでいいの?

 思わず突っ込みそうになるも、儀式を邪魔したらいけないのでぐっと堪えた。

【セイカは、聖女になって良かった?】

 無邪気にそう問われるけれど、なんて言えばいいのか分からず答えに悩む。

 聖女になって良かったと思ったことはない。私が聖女にならなかったらトゥーランに来ることはなかったんだから、今も変わらず平凡な日々を送っていただろう。
 だけど聖女になってトゥーランに来れたから、お母さんと会えた。チュピとも仲良くなれた。私の過去を知れた。
 太と両想い……これは来なくてもそのうちなれたかも?
 シノブのことを考えると、聖女になれて良かったのかな?

「全部終わらないとその答えは出せないや」
【それもそうだね。でもボクはセイカが聖女になってくれて良かった。セイカのこと大好きだから】

 悩みに悩んだ末の答えを正直に伝えると、チョピも素直な気持ち言い私の髪にそっと審判の花を着け頬にキスをする。
 聖女の泉の時のようにたちまち辺りがパッと明るくなリ、ルピ達は私達の周りにやって来て歌い出す。

 これはもう儀式の締めなんだろうね?

「私もチョピのこと大好きだよ」

しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

〈完結〉毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!

暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい! 政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

処理中です...