普通の女子高生だと思っていたら、魔王の孫娘でした

桜井吏南

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6章 ラスボスへの道のり

108.審判の花を求めて

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「二人して何してるの?」
【この辺に審判の花へと続く道があるみたいだから、ガーロットと捜してたの】
【さよう。おそらくこの岩で入口を塞いでいるのであろう。我なら簡単に粉砕できるが、ここから試練と言うことならば、セイカと聖女を護りし戦士が解決すべきだ】
【セイカのパパかリュウノスケなら簡単だよ】

 とにかく楽観的なチョピと慎重派のガーロットの答えに、私もそれを踏まえて考える。

 ガーロットの時と同じであれば、誰かと一緒に行く?
 今回は太と一緒にと思うも、太に岩を砕けるだろうか?
 聖剣は魔剣でもあるから岩でも粉砕出来るとか?

「あ、私が魔術を使えばいいんだ」
【そう言う方法もあったな】

 私自身が岩を砕く手段があることに気づく。私は護られる聖女ではない。

「? 星歌、俺にも分かるように話してくれないか?」
「あ、ごめん。二人が言うにはこの岩の先に審判の花へと続く道があるみたい。それでこの岩をどうしようかって話してたの」

 首を傾げ問う太にも分かるよう説明をする。

 みんなに集まってもらわないとね。

「だったら今回はオレを指名してくれ。おっさんのようにはいかないと思うが、オレだってちゃんと役目を果たせるはずだ」
「うん。そうするつもりでいるよ。そんな力まなくても、二人ならきっと大丈夫」

 お願いする前に真顔で志願される。
 明らかに緊張しているから、太の両手を握りニッと笑い緊張をほぐそうとした。



「本当に二人だけで大丈夫なのか?」
「セイヤ、こう言う時は二人を温かく見守って、あたし達はここで待ってればいいの。反対したらセイカに嫌われるぞ」

 直接の反対はない物の気が進まないようで何度となく確認される。痺れを切らしたお母さんの冷たく厳しい一言に、パパは顔を青ざめ言葉をなくす。

 このくだりは、これから先も度々繰り返されるんだろうな。

「太くんくれぐれも星歌をよろしく頼む」

 太の両肩をガシッと掴み私のことを強く頼む。

 反対しない変わりにこう来たか。
 本当にパパは心配性だ。きっと私が戻って来るまで生きた心地はしないだろう。

「任せてくれ。ちゃんと星歌のことは護るからさ。まぁ星歌は護られるだけの女じゃないけどな」
「…………」
「太そろそろ行こうか?」

 私には嬉しい答えでもパパには信じられられずムッとしたため、無理やり口を挟み先に話を進める。これ以上パパの気に障ることを言えば、意地けて自暴自棄になってしまう。


「なんかオレおかしなこと言ったか?」
「パパがありえないほどの心配性なだけ。だから気にしなくていいよ」

 けして大げさではない答えを軽く耳打ちして本題の入口を塞ぐ岩に注目する。
 まずはこれをどうにかしないといけない。

「聖剣なら真っ二つに斬れるんじゃないか?」
「う~ん。試してみるのもありだけど、それで折れたらどうすんの? それこそパパに同行の座を奪われるよ」
「た確かに。それは勘弁して欲しい」

 ガン無視しているとはいえ、今なお続く背後からの痛い視線。
 
 カマイタチでなら一発で木っ端みじんだとは思うけれど、それはやっぱり最終手段においておきたい。
 だとしたら私が使える魔術で砕けられそうなものは、炎系……?

 脳内に浮かぶ読めない文字を念じる。
 ドラム缶大の炎が産まれたと同時に、岩に目掛け思いっきり撃つ。
 勢いよく突進し盛大に爆発するも、多少削られるも砕けるまではいかなかった。
 だとしたら……。


 雷の魔術。
 土の魔術。
 風の魔術。
 水の魔術。
 習得した最大級の魔術をいろいろと繰り出してみるも結果は同じ。

「星歌、カマイタチを使ったらどうだ?」

 いろいろ試しても全敗の情けない私を見かねた龍くんは、呆れながら最終手段を提案する。

 それしかないですよね?
 私もここまで来たらもうカマイタチしかないと思っていたんだ。
 パパには悪いけれど、カマイタチはそんなに悪い物ではないよね?
 
 ドッカーン

 カマイタチを発動すると、岩はあっと言う間に跡形もなく木端微塵。入口が開通される。
 数か月前よりも、格段と威力があがっていた。それでいてカマイタチは一番しっくりいって使いやすい。

「さすがカマイタチだな。セイカのカマイタチもかっての父様のように綺麗なものだ。これなら危険はないだろう」
「そう言うものなの?」

 母さんの目の前で発動したのは、今日が初めてだった。
 目を輝かせ昔を思い出し安堵するお母さんに、カマイタチの実態を教えてもらう。思えば私はカマイタチは魔王の力であることぐらいしか知らない。

「ああ。そうだろう? リュウノスケ?」
「確かに魔王のカマイタチは、邪悪でどす黒いだったな」

 私のカマイタチは嫌な感じはしなく、色は無色透明だと思う。
 
 強いて言えば、風の魔術に似ているかな?

「魔王の力は繊細だからな。魔術よりも術者の心を写すと言われている。だからセイカが自信を持って使えば、きっとそれに応えてくれる」

 お母さんのおかげでカマイタチは使い方に注意さえすれば、魔術とそんなに変わらないんじゃと思い始めた。
 それでいてもしお母さんの言う通りならば、カマイタチを使い続けても魔族化は進まない?
 進まなかったらパパは悲しむことはなくなるから

「……カマイタチは使い続けても無害?……」
「そうそうなんだ。だから今一度考え直して欲しい。セイヤにはあたしから話を付けておくからな」

 明るく声をはずませてお母さんは言った。カマイタチを気兼ねなく使って欲しいと思っている。 
ここまで来たらパパの意見など通らない。

「魔族化がこれ以上進まないのであれば、星歌の好きにしなさい。ただし無理は禁物だ」
「パパありがとう。今分かったんだけど、カマイタチが一番使いやすいんだ。じゃぁいってきます」

意外にもパパも私と同じ考えだった。だから安心して今の気持ちを明るく打ち開け、いざ審判の花を求め出発する。
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