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6章 ラスボスへの道のり
106.魔王城へ続く洞窟
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「この洞窟を抜ければ魔王城。心して掛かるように」
洞窟を目の前にして、パパは重々しく口を開く。私達も真剣に受け止め、唾をゴクンと飲む。
魔王城へ続く洞窟。ラストダンジョン。
この日のために私達は修業したんだよね?
とは言え中途半端に終わった気がするけれど、ここに来たってことは攻略目途が立ったんだと思いたい。
「なぁ思ったんだが、スピカさんなら魔王城までの安全な抜け道を知ってるんじゃないか?」
「残念ながら、抜け道はないんだ。なぜならばここのモンスター達は、魔族を襲わない習性……はずだ」
ナイスだと思う太の疑問は一瞬でお母さんに論破されるも、知らなかった新情報を聞かされる。
おかしな間があったのは十四年前の知識だから。
洞窟のモンスター達は、魔族を狙わない。
つまり私とお母さんは、安全に進める?
「そんな話聞いたことないぞ?」
「言っても意味がなかっただろう? あたしはあの時つわりが酷く同行が出来なかったんだから」
「そうだったな。俺達がどう頑張っても魔族にはなれないんだからな」
パパ達にも初耳だったようで眉間にしわをよせるが、真相を知ったらすぐに納得。
確かに魔族じゃなかったら、雑学程度でしかない。
「だからあたしとセイカが先陣を切ってモンスターを眠らせる」
「それはダメだ。先陣は俺が切る」
「それこそ却下。君はいつも無茶を平気でする。あたしとセイカなら戦闘を極力を避けられるんだぞ?」
「今のモンスターが魔族を襲わない保証はないんだろう? しかも星歌はハーフで、今のお前はホムンクルスなんだ」
お互いの考えを曲げるつもりはまったくないようで、恐ろしいほどの目力でにらみ合い激しい火花を飛ばす。
突然始まる夫婦バトルに私達は反射的に距離を取り、小声で話し合う。
「お前らはどっちが一番効率的だと思う?」
「パパの案は駄目。絶対に大怪我を追う。断然お母さんの案」
二人には面と向かって言えなかったけれど、私は断然お母さん案に賛成。
いくら治るとしても、負傷したパパの姿なんてみたくない。
「私もその方が良いと思います」
「オレも」
「自分も。もう足手まといにはなりません」
「だよな? それにいざとなったらカマイタチを使えば、何も心配はないだろう?」
「私もそう思うわ。まったくセイヤは頑固者なんだから。仕方がないからスピカの加勢をしてくるわ」
盤上一致でお母さんの案を遂行する運びになり、やれやれと言わんばかりにヨハンさんは愚痴をこぼしながら二人の元に。
言い争いは今もまだ続いていた。
これでお母さんの案は採用されるよね?
もし駄目で襲われたとしても、龍くんの言う通りカマイタチがあるから先手なら大丈夫。
…………。
でももし駄目だったら、次はパパの案が採用?
全員で先手を取るのは、難しいことなんだろうか?
「チョピ、前に警備の人達を気絶させた技はモンスターにも有効?」
【半々かな? モンスターによってはボクの声を好む者もいるんだ】
「そうなんだ。それじゃぁ駄目だね」
チョピの能力を思い出し聞いてみたら、ある意味危険だったため落胆する。
半分でも気絶させればそれだけ戦力をそり落とせるけど、残りが群れを作って来たりしたら身も蓋もない。
【だったら我が先陣でもいい。我の威圧である程度は寄せつかないだろう】
「それ本当? ガーロット最高!!」
ガーロットから一番被害が少ないだろう提案される。
聞いた瞬間目からうろこで、嬉しさのあまりギュッとハグをする。
これならいけると思う。
「確かにこれは最強コンビだな」
元の姿に戻ったガーロットの背中に乗るパパを、お母さんは見上げ圧倒されつつ感心する。想像以上の物だった。
ガーロットの案をまずその場にいる人達に提案すると、龍くんはニヤッと不気味に笑い
コンビにしたら倍増するのでは
と言い出したんだよね?
確かにパパの威圧もすごいから私もそれに賛成し、ヨハンさんが加わってもなお揉めるに揉めていたパパ達に提案した。
それでやっとパパとお母さんも納得してくれ現在に至る。
「だろう? 二人とも思う存分威圧感を出してくれよ。お前の愛する娘のためにも」
「あんまり出されたら私達も二人に近づけなくない?」
「……ほどほどに」
ヨハンさんの冷ややかな突っ込みに、龍くんは冷や汗を流し言い直す。調子に乗ってそこまで考えてなかったようだ。
私達にも効果がある威圧だったら距離を取らないとだから戦闘は増えてしまう。
【安心しろ。我の威圧はモンスターのみ発効果があるものにしてる】
「さすが。ガーロットの威圧はモンスターのみに出来るんだって」
「そりゃぁ助かる。あ、先生から連絡だ。ちょっと待ってろ」
すぐに問題は解決していざ洞窟へと思いきや、そう言って龍くんは通信機を取り出し全員と通話できるようボタンを押す。
「先生、どうしたんですか? まったく連絡がなかったから、心配してたんですよ」
『すまんすまん。洗脳の実の研究に没頭していたらついな』
「何かわかったんですか?」
相変わらずのようで何よりである。待ちに待った情報にガーロットからパパは飛び降り、私達の元にやって来て勢いよく問う。私達は通信機に耳を方向ける。
『生産地はすでに爆破ずみだ。これでもう生産されることはないだろう。洗脳の実の成分分析も終わったのだが、解毒剤を作るには魔族の血が一滴。全員分だと成人魔族百人分の血が必要となる。やっぱりセイカに託すしかないようだ』
「そうなんですね。任せて下さい」
塵も積もれば山となる。
と言うことわざが、ここぞとばかり目に沁みる。
期待していただけに残念な結果になってがっかりとなるも、最後の砦は私だと分かってちょっとだけ良かったと思う。
やっぱりここまで来て私の力は必要がない。
結果、必要だったのはパパと龍くんの英雄だけだった。
と言われたら、さすがに凹んでしまう所だった。
洞窟を目の前にして、パパは重々しく口を開く。私達も真剣に受け止め、唾をゴクンと飲む。
魔王城へ続く洞窟。ラストダンジョン。
この日のために私達は修業したんだよね?
とは言え中途半端に終わった気がするけれど、ここに来たってことは攻略目途が立ったんだと思いたい。
「なぁ思ったんだが、スピカさんなら魔王城までの安全な抜け道を知ってるんじゃないか?」
「残念ながら、抜け道はないんだ。なぜならばここのモンスター達は、魔族を襲わない習性……はずだ」
ナイスだと思う太の疑問は一瞬でお母さんに論破されるも、知らなかった新情報を聞かされる。
おかしな間があったのは十四年前の知識だから。
洞窟のモンスター達は、魔族を狙わない。
つまり私とお母さんは、安全に進める?
「そんな話聞いたことないぞ?」
「言っても意味がなかっただろう? あたしはあの時つわりが酷く同行が出来なかったんだから」
「そうだったな。俺達がどう頑張っても魔族にはなれないんだからな」
パパ達にも初耳だったようで眉間にしわをよせるが、真相を知ったらすぐに納得。
確かに魔族じゃなかったら、雑学程度でしかない。
「だからあたしとセイカが先陣を切ってモンスターを眠らせる」
「それはダメだ。先陣は俺が切る」
「それこそ却下。君はいつも無茶を平気でする。あたしとセイカなら戦闘を極力を避けられるんだぞ?」
「今のモンスターが魔族を襲わない保証はないんだろう? しかも星歌はハーフで、今のお前はホムンクルスなんだ」
お互いの考えを曲げるつもりはまったくないようで、恐ろしいほどの目力でにらみ合い激しい火花を飛ばす。
突然始まる夫婦バトルに私達は反射的に距離を取り、小声で話し合う。
「お前らはどっちが一番効率的だと思う?」
「パパの案は駄目。絶対に大怪我を追う。断然お母さんの案」
二人には面と向かって言えなかったけれど、私は断然お母さん案に賛成。
いくら治るとしても、負傷したパパの姿なんてみたくない。
「私もその方が良いと思います」
「オレも」
「自分も。もう足手まといにはなりません」
「だよな? それにいざとなったらカマイタチを使えば、何も心配はないだろう?」
「私もそう思うわ。まったくセイヤは頑固者なんだから。仕方がないからスピカの加勢をしてくるわ」
盤上一致でお母さんの案を遂行する運びになり、やれやれと言わんばかりにヨハンさんは愚痴をこぼしながら二人の元に。
言い争いは今もまだ続いていた。
これでお母さんの案は採用されるよね?
もし駄目で襲われたとしても、龍くんの言う通りカマイタチがあるから先手なら大丈夫。
…………。
でももし駄目だったら、次はパパの案が採用?
全員で先手を取るのは、難しいことなんだろうか?
「チョピ、前に警備の人達を気絶させた技はモンスターにも有効?」
【半々かな? モンスターによってはボクの声を好む者もいるんだ】
「そうなんだ。それじゃぁ駄目だね」
チョピの能力を思い出し聞いてみたら、ある意味危険だったため落胆する。
半分でも気絶させればそれだけ戦力をそり落とせるけど、残りが群れを作って来たりしたら身も蓋もない。
【だったら我が先陣でもいい。我の威圧である程度は寄せつかないだろう】
「それ本当? ガーロット最高!!」
ガーロットから一番被害が少ないだろう提案される。
聞いた瞬間目からうろこで、嬉しさのあまりギュッとハグをする。
これならいけると思う。
「確かにこれは最強コンビだな」
元の姿に戻ったガーロットの背中に乗るパパを、お母さんは見上げ圧倒されつつ感心する。想像以上の物だった。
ガーロットの案をまずその場にいる人達に提案すると、龍くんはニヤッと不気味に笑い
コンビにしたら倍増するのでは
と言い出したんだよね?
確かにパパの威圧もすごいから私もそれに賛成し、ヨハンさんが加わってもなお揉めるに揉めていたパパ達に提案した。
それでやっとパパとお母さんも納得してくれ現在に至る。
「だろう? 二人とも思う存分威圧感を出してくれよ。お前の愛する娘のためにも」
「あんまり出されたら私達も二人に近づけなくない?」
「……ほどほどに」
ヨハンさんの冷ややかな突っ込みに、龍くんは冷や汗を流し言い直す。調子に乗ってそこまで考えてなかったようだ。
私達にも効果がある威圧だったら距離を取らないとだから戦闘は増えてしまう。
【安心しろ。我の威圧はモンスターのみ発効果があるものにしてる】
「さすが。ガーロットの威圧はモンスターのみに出来るんだって」
「そりゃぁ助かる。あ、先生から連絡だ。ちょっと待ってろ」
すぐに問題は解決していざ洞窟へと思いきや、そう言って龍くんは通信機を取り出し全員と通話できるようボタンを押す。
「先生、どうしたんですか? まったく連絡がなかったから、心配してたんですよ」
『すまんすまん。洗脳の実の研究に没頭していたらついな』
「何かわかったんですか?」
相変わらずのようで何よりである。待ちに待った情報にガーロットからパパは飛び降り、私達の元にやって来て勢いよく問う。私達は通信機に耳を方向ける。
『生産地はすでに爆破ずみだ。これでもう生産されることはないだろう。洗脳の実の成分分析も終わったのだが、解毒剤を作るには魔族の血が一滴。全員分だと成人魔族百人分の血が必要となる。やっぱりセイカに託すしかないようだ』
「そうなんですね。任せて下さい」
塵も積もれば山となる。
と言うことわざが、ここぞとばかり目に沁みる。
期待していただけに残念な結果になってがっかりとなるも、最後の砦は私だと分かってちょっとだけ良かったと思う。
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結果、必要だったのはパパと龍くんの英雄だけだった。
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