普通の女子高生だと思っていたら、魔王の孫娘でした

桜井吏南

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6章 ラスボスへの道のり

102.幼馴染みのお姉ちゃん

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「事情はすべてわかりました。魔族代表に関して、私の玄孫であるルルと考古学者のロレンスが適任かと思います。姫様もよくご存じですよね?」
「もちろん。ロレンスは確かに適任かも知れないな。ルルはベレニの意志を継いだんだ? なんかあたしも嬉しいよ」
「はい。今でもルルは人間が大好きで、私の良き後継者です」

 ベレニさん家に招かれパパと龍くんが中心となり今までのことをざっと話した。そして適任と思われる人物の二人の名前が上がる。
 その瞬間お母さんの顔が微笑み言葉を返すと、ベレニさんも嬉しそうな笑顔で頷く。

「星歌、ルルちゃんは星歌より三つ年上で、姉妹のように仲が良かったんだぞ?」
「え、そうなの?」

 初めて聞くまさかの友達の存在に興味津々で、身を乗り出して大きな声で反応してしまう。
 もちろんまったく覚えてないけれど、姉妹のように仲が良かったんならまた仲良くなれるはず。義姉のマヒナには残念だっただけに、こっちは期待大だ。

「さっきルルにお嬢も来ていると連絡したら、すぐに帰ると言っていたよ。ロレンスにはひと段落したら、来るように伝えました。なのでぜひ今夜は泊って下さい。盛大な宴会をしましょう」

 ありがたいことに向こうも私と会いたいと思っているらしく、ますます楽しみになってきた。
 そして盛大な宴会はご馳走の予感。

「それはいい。久しぶりに酒にありつける」
「そうね。この街の地酒は格別なのよね」
「ワインも美味しい」

 大人達はご馳走よりもお酒のことしか頭になくすでに盛り上がっていたが、パパだけは冷静に三人を見ている。

「パパは宴会楽しみじゃないの?」
「楽しみだよ。でも酒は嗜む程度だけだから、あそこまで盛り上がれないんだ」

 絶対に私が誘拐されたことを根に持っている回答。
 しかも本人例のごとく我慢している様子もないから、これ以上気にする必要はない。
 それにすべてが終わって地球に戻れば、また龍くんとたまに夜通し吞むようになってくれるよね?

「そうなんだ。所で黒崎はどうしよう?」
「後でオレが話してくるよ。嫌ならご馳走だけ持っていけばいいし、参加したいのであればあんまりススメたくないんだが、数時間臭いをすべて消す方法がある」
「すべてって……まさか匂いと言う匂いも?」
「ああ。だからススメたくない」

 これまたすごい魔術と思いきや使い勝手が悪いポンコツだから、龍くんは言葉を渋らせ乗り気ではない様子。私も聞いてそれはダメじゃないかと思いつつ、決めるのは黒崎だから提案するだけすればいいとも思った。

 そこまでしても魔族と関わりたいって思ってくれたら、私としてはありがたいんだよね。だってそれってつまり魔族と人間の共存の可能性があると言うことだから。
 仲良くしなくてもいいからいざって言う時は、協力できる体制を取って欲しい。

「……シノブを倒して洗脳を解いた後に魔族と人間の大宴会を開催すれば、お互い腹を割って話し合えるのかな?」
「確かにそれはいいかも知れない。和平会議はもちろん必要だが、民達にも互いの種族のわだかまりを取り除く必要がある。問題はマヒナのような人間を憎む魔族をどう説得し、人間と関わらないようにするかだな」
「本当にそれ。嫌いだったら関わらなければ良いだけなのに、そう言う奴らは過激派が多いんだよ」

 マヒナの話になりお母さんとベレニさんは、頭を抱え大きなため息をつく。
 和平会議よりも問題なのは、仲間内なのかも知れない。
 私も嫌いなら関わらなければ良いと思うんだけれど、そう言う訳にはいかないんだろうな? その人達の言い分を聞いた上で、落としどころを見つけるしかないのかも?

 和平会議をするには、思っている以上に大変な道のりだ。


 ダッダッダッダッ

 乱暴な足音がこちらにやってくる。

 バタン

 乱暴に扉が開かれて現れたのは、ベレニさん似のロングヘアが似合う二十代ぐらいの女性。急いで来たのか息が荒い。そして扉はガタンと壊れた。
 突然のしかも衝撃的な登場に、私達は一斉に彼女を注目する。

 この人がルルさん?

「曾おじいちゃん、セイちゃんが来ているって本当?」
「ルル、お前はなんでいつもそうなんだ? いい加減に落ち着きある行動を取りなさいと、いつも言ってるだろう?」

 挨拶よりも先に目を輝かせ私を問う女性はやっぱりルルさんで、ベレニさんはさっきよりも大きなため息をつき愚痴をこぼす。

 台詞からしてこう言うことは日曜茶飯事?

「すみません。それでセイちゃんは?」
「はい。私が星歌です」

 謝罪するも反省の色はなく私を捜し続けるから、自ら手を上げ席を立ちルルさんを見つめた。するとルルさんの表情が和らいだと思えば涙を流し、一私の元へやって来てギュッと抱きしめる。

「セイちゃん、会いたかった。ある日曾おじいちゃんから突然、セイちゃんとはもう二度と会えないって言われたの。その後一年も経たないうちに、人間はおかしくなって魔族は敵だと言いだしてもう訳が分からなくって」

 私との再会を心の底から喜んでくれていて、当時の子供の無力で悲痛な思いがここぞとばかりに伝わってくる。
 これがもし私だと思うときっと大泣きして暴れて、パパと龍くんを困らしたんだろうな。
 ルルさんとの記憶は何一つないのは残念だけれど、再会出来て良かったんだとと思う。
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