普通の女子高生だと思っていたら、魔王の孫娘でした

桜井吏南

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6章 ラスボスへの道のり

101.お母さんの腹心

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 αは洗脳の実について何も語らず、歯に忍ばせていた毒カプセルを咬み自害した。
 食事を与える一瞬の隙をつかれたらしい。

 分かったことと言えば、αが主犯で、魔族を心の底から憎んでたと言うこと。それから共犯者の名前。
 共犯者については、セレス姫が責任をもって調べるそうだ。私達は当初の予定通り浄化の光を取得次第シノブを倒しに行くことに。



「ここはあたしの信頼する者が納めている人間と友好とする魔族街なんだが、正直今はどうなっているのか分からない」
「それなら大丈夫。この街は今も変わらず人間に好意的な魔族街」
「それならよかった。心置きなく入れるな」

 魔族街を目の前にして少し不安そうに話すお母さんだったけれど、ヨハンさんに教えられ元気となりGOサインをくだし歩き出す。続けとばかりに私達も後へと着いて行く。


「姫? 姫様?」
「ベレニ?」

 視界に入って来たのは、赤茶サムライヘアーで角が生えている眼帯をしたダンディーなおじさま。私達の顔を見るなり、驚き唖然と立ち止まる。
 そしてこれまた渋い声で言葉を発すると、お母さんはびっくりしてある名前を呟きながらおじさまに抱きつく。
 台詞からして二人は知り合いで感動の再会なんだろう。

 この人がお母さんの信頼出来る人。

「彼はスピカの元親衛隊隊長で、魔王討伐後は彼が魔族をまとめていた。人間に対しても好意的で、家族ぐるみの交流をしてたんだ」

 パパもマヒナの時とは違い相手に心を許しているようで、かなりフランクに紹介してくれる。
 そんな魔族がいたとはちょっと驚きだった。

「え、じゃぁ魔族代表はあの人でいいんじゃないの?」
「そうかも知れないけれど、彼にはもうこの街を護ることだけで精一杯なの。人間で言えば百歳ぐらいかしらね?」
「それだったら無理させられませんね」

 魔族の見た目はあてにならないことを思い出し、確かにと思い考えを納得する。

 そんなおじいちゃんに無理なんてさせられない。
 一層街を守るのも誰かに任せて、隠居しては良いのではとも思ってしまう。

「ベレニ、この子がセイカ。私に似て可愛いく成長しただろう?」
「ですね。お嬢、大きくなったな」

 感動の再会はもう良いのかお母さんはベレニさんに私を紹介すると、ベレニさんは二カッと笑い私の頭をゴシゴシなぜる。私にとっては初対面だから困惑してしまう。
 記憶がない私にとっては初対面みたいなもんだから、この場合なんて返せばいいのか分からない。

 マヒナと違ってこの人は良い魔族だから、出来れば仲良く? したい。そのためには素っ気ない返答をせずに好感度ある可愛らしいもの。でも変に媚びたらみんなにドン引きされる。

 だったら

「はい、よろしくお願いします」

 当たり障りのない返答をして難を逃れた。

「こちらこそな。いろいろ話したいので我が家に来てもらえますか?」
「私達も話したいことがあるから、お言葉に甘えて」

 話はスムーズに進み私達はさんの家に招かれることになったのだが、

「自分はやっぱりワゴンで待機しています」
「分かった。湖周辺で待っててくれ。夕方には一度戻るから」
「キャンピングセットも自由に使っててくれ」
「ありがとうございます」

 さっきから元気がなく大人しい黒崎が青ざめた表情で元気なくそう言うと、龍くんとパパは何かを察したのか理由を聞かず了解する。そして私達に背を向けた後鼻を塞ぎ、逃げるように去っていく。
 さすがにそんな態度を見てれば私でも察しがつく。試しに周囲を嗅いでみるも、いつもより強いハーブ系の匂いがするだけだった。

 それでも黒崎にしてみれば、耐えられない悪臭なんだよね?
 匂いに敏感だからと言っているけど、太陽は大丈夫なんだろうか?

「太陽は大丈夫なの?」
「オレは結構好きな匂いだな」
「少し強いけど平気だから、大丈夫だよ」

 不安になって聞いてみると、優しい答えにホッとする。
 ただ陽はちょっと苦手な匂いかもしれない。

「そうか。あの少年は魔族臭が苦手なのか。こればっかりは仕方がないからな。まぁセイカはほぼ無臭だから、気にすんな」
「そうそう。これはもう割り切るしかないよ」

 意外にも魔族チームはちっとも気にせず、どこか他人事のようにケロッと言われるだけだった。

 魔族は魔族臭のことなんて、ちっとも気にしてない?

「そう言うものなの?」
「ええ。だから人間と話す時は念のため、体臭消しの薬を飲んでいる。そもそも人間にだって人間臭と言うものがあって、特に中年の人間の一部は悪臭だ」
『…………』

 お母さんは私を安心させるために言ったんだと思うけれど、それは明らかに加齢臭のことであり私達は絶句する。特にパパと龍くんの顔は真っ青になり放心状態に陥った。
 魔族には加齢臭がない新発見より、魔族が加齢臭に敏感だと言うことに驚きだ。

  近い未来加齢臭がやって来るパパにとっては大問題。
 と言うか、お母さんは加齢臭の実態を知らないのだろうか?

「ん、どうした二人とも?」
「お母さんあのね。中年の悪臭って言うのは加齢臭と呼ばれていて、四十歳過ぎると人は誰しもあるの。だから多分パパも後十年ぐらいで……」

 何も分かってないお母さんに耳打ちする。
 
「そうなのか? セイヤ、安心して良い。あたしはどんなセイヤであっても愛している。もし酷くても体臭消しなら、あたしが簡単に作ってやるから」
「……ありがとう」

 私の教え方は下手だったのか不発に終わり、余計パパは落ち込み今にも泣き出しそうになるのだった。
 
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