普通の女子高生だと思っていたら、魔王の孫娘でした

桜井吏南

文字の大きさ
上 下
119 / 157
5章 私が目指す聖女とは

100.星に願いを

しおりを挟む
 夜食を終え自室に戻ろうとすると、太からさっきの続きを話したいと言われから自室で話すことに。
 もう公開告白系はこりごりだ。
 

「オレ星歌が好きなんだ。付き合って欲しい」
「はい、喜んで。よろしくお願いします」

 すごい今さら感があると思いながらも、やっぱり面と向かって言われるのは嬉しい。自然と笑顔が転び落ち二つ返事。

 私の片想いはようやく成就した。

「ありがとう。なら地球に戻ったらデートしよう。どこ行きたい?」
「デート? そうだよね。どこがいいだろう?」 

 想いが通じてそれで終わりではないことを気づかされる。
 恋人になったら何がしたいとか特に考えたことがなかったから、言われて目から鱗で今更ながらよく考えてみる。

 高校生のデートとは、どこに行くんだろう?
 遊園地?
 でも夏休みに陽と三人で行ったから、あえて二人で行かなくてもいいような?
 ゲーセン?
 元々二人で行く予定があったから、デートとは呼ばない気がする。
 
 あ!?

「満天の星空を眺めながら手を繋いで歩きたい」
「は、そんなんでいいのか? だったら早速夜の散歩に行くか?」

 前の願望をふっと思い出し頼むと太は拍子抜けしつつも、頷いてくれ手を差し伸べられる。




 今夜も夜空には満天の星と二つのメレが輝いていた。
 だんだんこの幻想的な夜空が普通になっているけれど、日本に戻ったら満天の星空はレアに戻るんだよね。
 そう思うと未練がちょっと残るかも?

「人間と魔族の和平会議にこぎつけたら、オレ達は地球に戻れるんだよな?」
「だと思うよ。その時はお母さんとチョピとガーロットも一緒に来ることになってる」
「へぇ~そりゃぁ楽しみだな」
「うん!!」

 少ししんみりと呟く太の問いに、私は明るく楽しみな未来を答える。
 そう言えば太には教えていなかったかも知れない。
 すると太の表情も明るくなり、私はますます嬉しくなり元気よく頷く。

「やっぱり星歌の笑顔は最高だな」
「え、いきなり何?」
「オレお前の笑顔がすげぇ好きなんだ。見ているだけで元気が湧いてくる」
「!!」

 くったくない笑顔で甘い台詞を耳元で囁かれた後、ギュッと抱きしめられる。あまりにも太らしくない行動にびっくりして、胸の鼓動が激しく高鳴り体温が急上昇。

 太ってそんなキャラだっけぇ?
 そう言えば私と違って恋愛経験がある上、師匠が龍くんだから二股は掛けないとしてもたらし?
 甘い台詞が次々と出てくるもの?

 太のことならなんでも知っていると思っていただけに、実はそうじゃないと知ってショックだった。

「星歌はこう言うの苦手か?」
「え、まぁいきなりでびっくりしただけ。恋人ってこれが普通なの?」
「普通って言うか女子はそう言うのが好きで、とにかくロマンティックなシチュエーションを演出すると喜んでくれた。でも気が抜けて素を見せていたら、幻滅され別れを切り出された」

 理由を話しているうちに、トラウマらしくシュンと小さくなる。

 今まで破局してもケロッとして見えたのは単なる強がりで、本当はダメージ受けていた。
 外見だけ好きになって、中身はお子様だから別れる。よく考えたら酷い話だ。
 そもそも太がお子様だってことは少し接点を持てば分かるはずなのに、何故彼女達は知ろうとしなかった?
 一目惚れですぐ告白しているのに、見た目と中身が違うからって振るなんてどうかしている。

「そうなんだ。でも私はありのままの太が好きだから、無理に背伸びしなくてもいいんだよ」
「本当か? 幻滅して離れて行かないか?」 
「もう八年も腐れ縁なんだから離れるわけないじゃん。太は外見イケメンでも中身は剣道大好きな悪餓鬼でしょ?」

 なんて言って太を元気づけたけれど、本当は私の知らない太を見るのが嫌なだけ。無理して演じてるって分かって、ホッとしている。

「……。ガキの頃から星歌は陽と同じぐらい大切で、何をするにも三人一緒だった。だからその関係を壊したくなくって、恋愛感情を封印していたのかも知れない」
「そうだね。私もそうだったんだと思う」

 私も太も鈍感な上に臆病の似た者同士。同じ悩みを抱えてきっかけ(洗脳)がなければ、私達の関係は今も友達以上恋人未満のまま。

 そう考えると結果オーライなんだろうか?
 なんて口に出して言ったら、人間性を疑われるから黙っていよう。

「オレ達同じ気持ちだったんだな。なんかそう思うとすげぇ嬉しい」

 気分は最高潮の中フッと我に返った瞬間、未だに私達は抱き合っていることに気づく。

 冷静になると恥ずかしい。

「少し歩こうか?」
「そそうだな」

 当たり障りのないこと切り出せば、頬を赤らませすぐに離され再び手をつなぐ。普通の手つなぎだったから、恋人つなぎに変えてみる。

「恋人になったけれど、しばらくは今まで通りでもいいよね」
「そうだな。焦ってもろくな結果は生まないし、オレはこうして星歌の笑顔が間近で見られるだけで幸せなんだ」
「私も同じだよ。太に私の背後を任せて良い?」
「おう、任せておけ。……星歌の聖剣があれば、オレは無敵になれる」

 太は胸を張り力強く頷き、いつものように調子に乗ってしまう。

 やっぱりこれが太の本心で少しは成長していると思ったんだけれど、こう言う所は何も変わっていない。
 
  確かに聖剣を使うことによって強くなるとは思うけれど、無敵になると言うのは虫が良すぎる。
 太が無敵だったら、パパと龍くんは最早神レベル?
 うん。あの二人は神レベルだね。
 でも万が一言葉の綾だって可能性もあるから、チャチャは入れずに嬉しく受け取っておこう。

「あ、流れ星」
「え、あ本当だ。願いごとしようぜ!!」
「うん」

 ここではそこまで珍しくない流れ星。今夜も次々に流れている。
 私も太も子供のようにはしゃぎ、願いごとに夢中となった。

 魔族と人間の和平会議が成功しますように。
 私も含めて、みんなが幸せでいられますように。

しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

ウルティメイド〜クビになった『元』究極メイドは、素材があれば何でも作れるクラフト系スキルで商売をして生計を立てていく〜

西館亮太
ファンタジー
「お前は今日でクビだ。」 主に突然そう宣告された究極と称されるメイドの『アミナ』。 生まれてこの方、主人の世話しかした事の無かった彼女はクビを言い渡された後、自分を陥れたメイドに魔物の巣食う島に転送されてしまう。 その大陸は、街の外に出れば魔物に襲われる危険性を伴う非常に危険な土地だった。 だがそのまま死ぬ訳にもいかず、彼女は己の必要のないスキルだと思い込んでいた、素材と知識とイメージがあればどんな物でも作れる『究極創造』を使い、『物作り屋』として冒険者や街の住人相手に商売することにした。 しかし街に到着するなり、外の世界を知らない彼女のコミュ障が露呈したり、意外と知らない事もあったりと、悩みながら自身は究極なんかでは無かったと自覚する。 そこから始まる、依頼者達とのいざこざや、素材収集の中で起こる騒動に彼女は次々と巻き込まれていく事になる。 これは、彼女が本当の究極になるまでのお話である。 ※かなり冗長です。 説明口調も多いのでそれを加味した上でお楽しみ頂けたら幸いです

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

〈完結〉毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

処理中です...