普通の女子高生だと思っていたら、魔王の孫娘でした

桜井吏南

文字の大きさ
上 下
118 / 157
5章 私が目指す聖女とは

99.龍くんの本心2

しおりを挟む
「ねぇチョピ、パパとお母さんの様子、少しおかしくなかった?」
【おかしくなかったよ? ボクにはすごく元気で幸せそうに見えたけど】

 太陽の元へ戻る途中で腑に落ちない疑問をチョピに投げかけると、無邪気な答えが返って来るだけだった。
 しかし私の疑問はそう言うことだったりするから、余計に悩み首をかしげる。
 お母さんなんて特に元気に見えるのに、体調が悪いと言う。心配すると明らかに態度がおかしくてなり、パパと一緒に強制的に追い出されてしまった。

 私に言えない隠しごと?
 元気で幸せそうなのだから、大人達だけでシノブを倒しに行くとかではないと思う。

【セイカ、あまり深刻に考えなくてもいいんじゃない? セイカのパパとセイカのお母さんは仲良しだから】
「仲良し? ……!!」

 いくら私でもここまで言われたら察しがつき、これ以上考えるのは辞めて忘れることにした。




「あ、龍くん。体調は大丈夫なの?」
「ああ。動くだけなら平気だ」

 部屋に戻ると龍くんが来ていた。言葉通りなんともなさそうに見えるし、龍くんだから無茶はしないだろう。と

 陽と何か話したいのかな?

「師匠、オレ達は席をはずした方がいいか?」
「いいや。いてくれ」
「分かった」

 柄にもなく気を使う太だったけれど、龍くんは真顔に変わって首を横に振った。何かあると分かり陽を反射的にみると瞳の奥が怯えて、震えた手が太の袖をキツく握っている。

 嫌な予感?
 私にはまったくしない。

「陽、なんともないか? あんな騙し討ちのようなことしてすまなかった」
「……私ってやっぱり足手まといなんですね。そうならそうと、早く言って欲しかった。龍ノ介さんから頼りにしてるって言われて、すごく嬉しかったんです。でもそれは社交辞令的なもので、鵜呑みにしたらいけなかったんですよね?」
「違う。オレは本当に陽を頼りにしてるんだ」

 すっかり自分に自信をなくし涙をこらえ悲しげに意見する陽を、龍くんはいつもと違い懸命に誤解を解こうとする。

 そんなことしたら違う誤解をされそうだけれど、それはいいのだろうか?
 …………
 ってことはもしかしてもうそう言う展開なのか?
 龍くんだから早い?

「私馬鹿だから誤解してしまいます。龍ノ介さんのことが諦めきれず、今でもまだ大好きだから」

 私と太がいるにも関わらず、陽は勢い余っての二度目の告白。私も公開告白してしいる手前、それに対してはノーコメント。
 ただ公開告白と言うのは想像絶する以上恥ずかしく、聞いている私まで鼓動が高鳴り恥ずかしくなる。

 ……両親がいる前でキスした。
 だからパパはショックで倒れた。
 そうなるのも当たり前。

「それでいいんだ。今は世間体があるから、その答えは卒業式後でもいいか?」
「!! ……はい」
『はぁ~?』

 傲慢でしかない告白返しなのに、陽はそれでいいのか乙女モードになり顔を真っ赤に染まる。しかし私と太は信じられず龍くんの心情を疑い声を上げる。

 何そのオレ様的上から目線の台詞?
 好きならもうそれは仕方がないから言えば良いのに、なんでそんな台詞になったのか意味不明。これだと龍くんの好きという気持ちが伝わらない。

「龍くん、私の部屋で話そうか?」
「え、あうん……」

 どうしても文句を言ってやりたくって、でも陽の前じゃ言えないから、乗り気でない龍くんの腕を無理矢理引っ張り強引に自室に連れて行く。



「龍くん、陽のことどう思っているの?」
「前までは星歌の親友で近所のガキンチョでしかなかったはずなんだが、さっき太に言われて考えてみたら多分好きなんだろうな。十五歳も離れてオレ好みじゃないのになんでだろう? ステーフに正直に相談してみたら、それは本気の恋と言われたよ」

 率直な問いに、少し戸惑いながらも本音を打ち明けてくれた。
 もっと軽く物ごとを受け止めていると思いきや、ちゃんと深刻に受け止めちゃんと悩んでいる。
 これなら私が意見する必要話さそうだけれど、一つだけ腑に落ちない。

 本気の恋?
 龍くんが今さら?
 それとも女癖が悪くて二股掛ける人は、本気の恋をしたことがないの?
 だとしたらヨハンさんとステーフさんも遊びの恋だったってこと?
 龍くんと同じ考えのヨハンさん達はともかく、ステーフさんは二十八年も龍くんを待っていたんだよ。 ステーフさんが可哀想。

「それでどうするつもりなの? 陽と付き合うの?」
「正直オレ自身この事態に戸惑っていて、まだ心の整理が出来ていない。だからあんな風に言ったんだが、冷静になって考えるとありえないな。星夜に聞かれてたら冗談抜きで殺されてたわ」

 いつもの龍くんと違ってかなり弱気な答えに、さっきの答えを苦笑しながら反省する。

 確かにパパが聞いたら本気で殴りそうだけれど、私はそれを聞いて少しだけ安心した。 陽のことをちゃんと考えてくれているから、私はもう何も言わずに温かく見守っておこう。

 ステーフさんのことはもうしょうがないのかな? ステーフさんのことも本気になってと言ったら、二股掛けろと言っているのと同じ。
 いくら本気でも二股は日本では許されない。

「──パパに相談するの?」
「迷ってるよ。さすがのあいつでも、ドン引きして殴られ軽蔑されるかも知れない」

 私ではいいアドバイスは出来ないから、パパだったらちゃんと相談に乗ってくれる。
 と思ったのにどうやらハードルは高いらしく、言葉を渋らせ弱気な答えが帰って来た。

 いくらパパでもこればっかりは、そう簡単には信じてくれない?
 本気になった相手は娘の親友で、龍くんの日頃の行いが悪いから?

「まずは誠心誠意話せば分かってくれる思う。なんなら私が加勢しようか?」
「余計ややっこしくなるから止めてくれ」

 そんな龍くんが可愛そうになり親切心で言ったのに、今度は本気で迷惑そうに拒否。
 何もそこまでと思いつつ、そこまで恐ろしいパパに興味がわく。
 私も一度だけ滅茶苦茶怒られて大泣きするほど怖かった。でも今の龍くんの怯え方を見ると、そんなのは比較にならないほどなんだと思う。

 お母さんもパパが本気でキレると怖いと声を震わせ言ってたよね?
 そんなパパを見てみたいような見たくないような。

しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

ウルティメイド〜クビになった『元』究極メイドは、素材があれば何でも作れるクラフト系スキルで商売をして生計を立てていく〜

西館亮太
ファンタジー
「お前は今日でクビだ。」 主に突然そう宣告された究極と称されるメイドの『アミナ』。 生まれてこの方、主人の世話しかした事の無かった彼女はクビを言い渡された後、自分を陥れたメイドに魔物の巣食う島に転送されてしまう。 その大陸は、街の外に出れば魔物に襲われる危険性を伴う非常に危険な土地だった。 だがそのまま死ぬ訳にもいかず、彼女は己の必要のないスキルだと思い込んでいた、素材と知識とイメージがあればどんな物でも作れる『究極創造』を使い、『物作り屋』として冒険者や街の住人相手に商売することにした。 しかし街に到着するなり、外の世界を知らない彼女のコミュ障が露呈したり、意外と知らない事もあったりと、悩みながら自身は究極なんかでは無かったと自覚する。 そこから始まる、依頼者達とのいざこざや、素材収集の中で起こる騒動に彼女は次々と巻き込まれていく事になる。 これは、彼女が本当の究極になるまでのお話である。 ※かなり冗長です。 説明口調も多いのでそれを加味した上でお楽しみ頂けたら幸いです

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

〈完結〉毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

処理中です...