普通の女子高生だと思っていたら、魔王の孫娘でした

桜井吏南

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5章 私が目指す聖女とは

97.父の悩み

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 星歌と太くんの仲だったら公認出来ると思っていたはずが、現実では一切認められなかった。とっさに口を挟んでしまい邪魔をした結果、事態は最悪。
 星歌は何かを察しムッとなり、告白と同時にキスシーンを見せられるはめ……。
 その瞬間目の前が真っ白になり何かが崩れ落ちていた。

 星歌は怒ったのだろうか?
 嫌われて二度と口を聞いてくれなったらどうすればいい?
 そもそもなんで俺は二人の邪魔をしたんだ?
 このままだと星歌と同居する輝かしい未来が消えてなくなってしまう。

 謝ろう。
 土下座でもなんでもして、許してもらおう。

 そう思った俺は暗闇からようやく抜け出し、星歌に謝ろうとしたのだが辺りには横たわった男しかいなかった。

「星歌、スピカ、太くん?」

 辺りを警戒に見回し三人の名を呼んでも、人影がなければ返事もなし。

 愛想を尽かされ先に帰って……龍ノ介達を助けに行ったんだ。
 助けに行かなくてもあいつなら何とかすると思うんだが、……俺があおった……。

 こうなったら男を連れて我が家に帰り、ガーロットに稽古を頼もう。
 そして出来るだけ早くシノブを俺が倒す。
 例え星歌に嫌われたとしても、護る役目だけは太くんに譲りたくはない。




「星夜、早まるんじゃない」
「は?」

 龍ノ介の姿が映ると血相を変え、こちらに駆け足でやって来るなりの台詞。意味不明過ぎて首をかしげ聞き返す。
 俺だって、結構なダメージを追っている龍ノ介が気になる。

 実は本当に助けが必要だったのか?

「セイヤ、君はとんでもない勘違いをしてないか?」
「え、パパ。どうしたの?」

 スピカと星歌まで急いでやってきて、オレの心配をしてくれる。
 てっきり星歌に嫌われたと思い込んでいたため、これにはびっくりで星歌をまじまじ見つめてしまう。
 俺の顔を覗き込む星歌は、キョトンとした表情から心配そうな表情へと変わっていく。

「星歌、さっきは邪魔をしてすまなかった」
「やっぱりあれは邪魔されたんだね。なんで邪魔したの?」
「……星歌を太くんに取られるのが怖かったんだ」
「もうパパってば大げさなんだから。私の帰る場所はまだ変わらないし、これからもパパとの時間は大切にするつもり。それにパパにはお母さんがいるんだから、おあいこでしょ?」
「……そうだな」

 星歌は怒ることなくクスッっと笑い、こんなみすぼらしい俺を受け入れてくれる。
 感極まり星歌をギュッと抱きしめると、星歌も嬉し恥ずかしそうに抱き返す。
 不思議と心の余裕が出来た途端、我ながら無茶な行動に出ようとしたことに気づく。
 龍ノ介とスピカは見抜いていたから、焦ったたんだろう。

「ツヨシ、すまんな。セイヤにはあの通りセイカが必要だから、二人の仲を嫉妬せず認めて欲しいんだ」
「家族なんだからそれは当たり前だろう? オレだって家族は大切だ」
「そう言うとこは物わかりが良くって助かるぜ。ついでにオレと星歌の仲も、ある程度は許せよな? オレは星歌の父ちゃんなんだから」
「もちろんだ」

 背後で語られる会話。
 陽ちゃんを背負った太くんは当たり前のように胸を張って頷く。陽ちゃんはただ寝ているようだから心配は無用だろう。

 太くんの方が俺なんかよりずっと大人で、逆に俺の方が餓鬼でしかない。
 よく考えなくても星歌の選んだ相手なのだから、何も不安を感じることはなかった。





「この人は間違えなくα様ですね」
「となるとまさかこいつが洗脳の主犯?」
「彼ならありえるかも知れませんね」

 我が家に帰り星歌達は二階に行ってもらいセレス達に男を達に見てもらうと、セレスは信じられない様子で言葉を口にする。思わぬ大物に俺達は唖然となりまさかの可能性を話し合う。
 俺とαの面識はないが龍ノ介にはあるらしい。言われてそう言えばそんな奴いたなと言っていた。そしてスピカも名前を聞いた途端、難しい表情を見せる。

「そう言えばこいつに言い寄られたことがあって、その時完膚なきまでに振ったことがある」

 俺の知らない驚くべき過去だった。

 魔族を憎む人間がスピカに告白?
 そんなことってありえるのか?

「は? じゃぁこの洗脳騒ぎはただの逆恨みの復讐なのか? ……くだらなすぎる」
「まぁこう言うことって案外きっかけはそう言う物だったりするのよね。シノブだってセイヤにスピカを奪われて、さらに憎しみが増してるのよね?」

 龍ノ介も俺と同じく信じられないず問うのだが、ヨハンの台詞を聞いて確かと思ってしまい頷く。
 俺なら振られても愛する人の幸せを願うが、憎しみに変わると聞いたこともある。
 
 ……俺も星歌の幸せよりも自分の気持ちを優先させてしまった。
 俺もαと変わらない。

「……俺も道を踏み外してたらαになってたんだな」
「は? あ星歌に対してか。まぁそう考えるとαの気持ちも分からなくもないか」
「セイヤはこんな最低な人間じゃないだろう? それともツヨシを殺したいほど憎いか? セイカを殺すか?」
「それは絶対にない」

 そう思えば思うほどαに同情し言葉を発し、深いため息を付いてしまう。龍ノ介には分かってもらえたが、ムッとしたスピカは怒った口調で否定され問われる。
 それはないと断言できる俺は即座に否定。
 太くんに嫉妬はしたが、殺したいなど思わなかった。ましては俺が星歌を殺すなどありえない。

 なんで俺が星歌を殺す?

「だろう? こいつはあたしに振られたぐらいで、……魔族を憎みあたしを殺した。シノブより余計たちが悪い」

 スピカの様子がおかしい。
 怒っているように見えるだが、瞳の奥は怯えている。

「もう。αの尋問は私とリュウで行うから、スピカとセイヤは二人でよく話し合うこと。リュウノスケは今日と明日は安静にしていなさい。ステーフ。ちゃんと見張っておくのよ」
『はい!!』

 痺れを切らしたかのようなヨハンの力ある言葉に、俺達は呆気に取られ何も反論できず行動開始した。
 こうなったヨハンに意見出来る奴は、誰もいない。
 なんでこうなったんだ? 
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