普通の女子高生だと思っていたら、魔王の孫娘でした

桜井吏南

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5章 私が目指す聖女とは

92.太は大物?

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「おっさん、なんだよ。そのメリケンサック。超かっけぇじゃん!!」
「そうだろう? 星歌に作ってもらったんだ」

 外から興奮気味太の声と嬉しそうなおじさんの声を聞こえた。
 私でも星ちゃん特性のメリケンサックを見せてもらった時は、あまりの美しさにちょっと興奮したんだからつよしの気持ちは良く分かる。
 これでおじさんに嫉妬をしてくれたらありがたいんだけれど、おじさんを尊敬している太だから無理かな?
 好奇心を持った私は二人の元に行く。

「星歌に? だったらオレの剣を作ってくれるように頼んでみる」
「そうだね。星歌なら龍ノ介と武器職人の工房に行っているから、頼んで来なよ。陽ちゃん、案内してあげてくれないかい?」
「え、あはい」

 私の予想を斜め上のポジティブ回答に圧倒されてると、おじさんにはその回答が満足だったらしく後を私に託す。

 実は太の剣も作っていて取りに行ってる。とは言わなかったのは、貰った時の感動を減らさない配慮なんだろうな? 本当におじさんは星ちゃん思いだよね。

「陽、オレすぐ着替えてくるからここで待っててくれ」
「うん、慌てなくてもいいんだよ」

 そう言ったものの、太の頭の中は新剣のことで頭いっぱいだろうから聞いていない。
 その証拠に急いで大きな足音を立てながら、家の中へと入って行く。

「太くんは本当に前向きだね。あんな反応されるとは思わなかった」
「ですね。私にとっても予想外です。だけど星ちゃんには良かったんだと思います」

 そんな太を見届けながら、私とおじさんは微笑み合う。

 本気で剣を渡すことに躊躇して悩んでいる星ちゃんに見せてあげたい。
 そしたら照れながらもすごく喜んでくれるはず。
 太だってすでに剣が作られていてそれが聖剣だと分かったら、いくら鈍感でも星ちゃんの気持ちに気づいて勢い余って告白しちゃうかも知れない。
 二人して洗脳が解けたら告白するって意気込んでいるけれど、今でも周りから見たらもう付き合っているのと同然なんだよね?

「さっき龍ノ介から連絡が来たんだが、聖剣には洗脳解除の付与があるようで、ひょっとしたら太くんの洗脳が解けるらしい」
「それ本当ですか? もし洗脳が解けたら、いよいよですね」
「そそうだな」

 思ってもいない朗報に期待が高まり何も考えず思ったことを声に出せば、途端におじさんは複雑な表情を浮かべ元気なく相槌を打つ。
 いくら物分かりのいい最高の父親であっても、愛娘に彼氏が出来るとなるとそうでもないんだろうか?
 相手が良く知る太であっても、イヤ太だからこそいろんな意味で心配?

「大丈夫です。太は普段はお調子者だけど、やる時はやる男です。星ちゃんを絶対泣かせたりしま……と思います。もしそんなことがあったら私が太をブチのめします」

 安心してもらうため自信を持って言おうとしたはずなの、太のことを考えたら断言できなかった。

 そりゃ浮気とかDVはしないって出来るけれど、お子様だから無神経なことを言って泣かす可能性がある。その時は私が仲を取り持つ。

「知ってる。きっと俺と龍ノ介は星歌の相手は太くんでしか認められないと思う。それでもやっぱり父親だから、娘の彼氏には複雑な気持ちは抱くもんさ。陽ちゃんの父親だってそうだと思うよ」
「そうですね。心して置きます」

 なんとなく父親の複雑な心境を知り、太の置かれている立場も理解した。これもまた微笑ましい。

 私の場合はしばらく恋人を紹介する予定なんてないけれど、今から対策を考えた方が良いかも? 私も星ちゃんを見習って、もう少しお父さんと仲良くしてみようかな?




「どんな剣を作ってもらおうか? 魔術は絶対。炎・雷・水・風。素早さ重視もいいな」
「太、それは星ちゃんに任せなよ。あんまり注文ばかり言ったら、作ってくれないよ」
「うっ……、確かに。でも一つの属性でいいから魔術付与は欲しいんだ」

 期待を膨らませるだけ膨らませ上機嫌になっている太についかまいたくなり、それっぽく意地悪を言って困らせる。それでも魔術を重要視するのは太らしい。

 聖剣に魔術付与があるといいね?

 ……え?

 突然胸騒ぎが始まり反射的に辺りを見回すと、茂みの奥に姿は分からないけど人影が見えた。普通だったら村人だと思って気にもならないのに、なぜかすごく気になってイヤな予感もする。
 追いかけてこの胸騒ぎの原因を確かめたいけれど、私と太だけじゃ不安だけしかない。

 もし捕まったりしたらみんなに迷惑を掛けるから、ここはルーナスさんに教えてもらった式神の魔術を使ってみよう。

 そう思った私は地面に落ちている手頃な葉を二三枚拾う。
 式を尾行に使う時は、複数にさせた方が成功率が断然上がるそうだ。

「陽、何をしてるんだ?」
「しっ──。向こうに気になる人影があるから、式を作って尾行させるの」
「気になる人影? だったら式神に任せて、早く師匠の元に行こうぜ」

 こう言う時の太は私の言葉を疑わず親身になって聞いてくれるので、余計な説明をすることなく葉をおでこに付け言葉に出来ない文字を強く念じ式を制作。
 すると葉はゆらゆらと宙に舞い人影を目指し飛んでいく。

「うん、そうだね? でも太が突っ込まないなんて珍しい」
「そんなの当たり前だろう? オレ一人じゃ危険だってことぐらいちゃんと分かっている。もしシノブの腹心だったらどうするだ?」

 真剣な瞳で太らしくなくい慎重な答えが返ってきて、私もそう少なからず思っているから無言で頷いた。
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