普通の女子高生だと思っていたら、魔王の孫娘でした

桜井吏南

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5章 私が目指す聖女とは

91.聖剣の性能

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「星歌、オレが悪かった。謝るからそろそろ機嫌をなおしてくれよ」
「は、謝るから機嫌をなおせ? 許して下さい。じゃないの?」

 剣を取りに工房に一人で行く途中、後からついて来る龍くんはついに痺れを切らしたのか声を掛けられる。しかし言い方が上から目線でムッとなり、立ち止まり振り向き強気で私も上から目線で問い返す。

「……そうですね。ちょっと悪ふざけしすぎましたすみません。心から反省しているので、許して下さい」

 ここでようやく求められられていた答えが返ってくるけれど、そう言う謝罪じゃなくってもっと普通の誠心誠意がある謝罪が欲しかった。
 これでも龍くんなりに反省はしてるんだよね。……一応。

「しょうがないな。もう絶対に私を巻き込まないでよ」
「分かってるよ」

 いつものように私が折れて許してあげると、龍くんは笑顔になり固く約束してくれる。 今度はどの程度約束が守られるか見物。
 そして私達は肩を並べ歩調も合わせ、リリアンさん家を目指して歩き出す。



「なぁ星歌。聖剣を太に渡せば、高い確率で洗脳が解けるって知ってたか?」
「は、何それ? 私そんなの知らない。チョピ本当?」

 いきなりの爆弾発言に私の頭の中は大混乱。龍くんの顔を見るとかなりの真顔だったから、チョピなら何か知ってるだろうと思い抱き上げ早口言葉で確認する。

 もしそれが本当だったら嬉しいことは嬉しいけれど、それはつまり今日私は太に告白するってこと?
 え、え、嘘?

【セイカはまだ審判の花の加護を受けてないから、洗脳解除の付与は三割ぐらいなんだ。だから黙ってたの】
「そうなんだ。……良かった。私は審判の花の加護を受けてないから、洗脳解除は三割なんだって」
「良かったって、星歌は太に逢いたくないよのかよ?」

 三割だから効果がないだろうと思ったら不思議と落ち着けたのに、龍くんには理解されず痛い所を付いてくる。

 そりゃぁ顔を見て会話したいに決まってるじゃん。だけど今まであんなに告白するするって意気込んでたのに、いざ目前にすると告白する勇気はまだなかった。時間はたくさんあったはずなのに、私ったら今まで一体何をしてたんだろう?
 馬鹿みたい。

「……太は私のことどう想っているのかな?」
「それはオレに聞くんじゃなくって、太に聞くことだろう?」

 絶対に龍くんなら何か知っているはずなのに、返って来た答えはごもっともだけど冷たい物だった。

 いつもなら私の味方になって内緒の話もしてくれるのに、太に口止めされている? 何を?
 今でさえ自信喪失しているのにそんな変な疑惑を聞いてしまったら、ますます自信がなくなりどうしようもなくなり凹んでしまう。

「龍くん聖剣いる?」
「そこまで凹むことないだろう? そもそも太なら聖剣と言えば、尻尾を振ってもらってくれる。これは保証するから、自信を持てばいい」

 こうなったら剣を送ることにも再び億劫になって龍くんに渡そうとすれば、さすがに冷たくし過ぎだと思ったのか今さら煽てられても時はすでに遅しだった。




「セイカちゃん、聖剣はメリケンサック同様最高の出来になったわよ」
【ボクも調べる】

 工房について龍くんとリリアンさんの再会の挨拶が終わると、机の上に置いてある剣を鞘から抜きながら昨日と同じく大絶賛。
 レットシルバーの刃が光り輝く美しい剣。
 すると私よりもチョピの方が興味津々になり剣に近づき嗅ぎまわる。
 チョピは匂いで超レア効果が分かるらしく、昨日もメリケンサックを嗅いで調べてくれた。

【この剣には主の呪いや洗脳解除付与があるよ!!】

 いくらそれがすごいことだとしても、私にはすごくないと断言してもいい。
 とは言ってもそんなこと言ったらチョピはきっと悲しむだろうから、声には出せず肩を落とし深いため息をつく。

「その様子じゃあるんだな 洗脳解除付与」
「……はい」
「え、それは超レア効果じゃない? 全毒無効化も相当な物だけど、洗脳解除も同等よ」
「そうですよね。基本性能はなんだろう?」

 テイションが上がるリリアンさんには相槌を打って、テーブルに置かれている剣の認定書を読む。

 全能力30%UP。炎と水属性。状態異常軽減。

 だった。

 リリアンさんが言うように最高の出来で、聖剣と呼ぶに相応しい剣。文句なしの高性能だったから、本当にすごいぞ聖女の力。

 ……洗脳解除も認めないと駄目か。聖女の加護だもんね。

「どうやらセイカちゃんには武器職人の才能があるみたいね?」
「え、私が聖女だからじゃなくって?」

 初めて言われた私の才能。

「まぁそれもあるかも知れないけれど、元から素質はあるんだと思うの。だから使命が終わったら私の弟子にならない?」
「ありがたい申し出でですが、私は地球に帰るので無理です。すみません」

 取り柄も将来の夢もまったくない私にとっては嬉しい誘いだったけれど、ここに残るつもりなど一ミリもないため迷わず頭を下げ断った。

 でもこれが地球でのことだったら二つ返事で弟子入りしていたかも……海外ならともかく日本武器職……包丁を作る鍛冶職人って奴? 鍛冶職人はどうやったらなれるんだろう? 

「そう言う割には興味津々みたいね。これだったらもっと強く押せば落ちるかしら」
「え、あその……」

 ここでも顔に出ると言う欠点が表に出て突っ込まれるから、ドモってしまい龍くんの背後にサッと隠れる。
 
「残念ながら、オレと星夜が星歌の残留をけして許さないんでね。第一聖女が武器職人になったら、伝説級の武器が世の中に溢れても良いのか?」
「それは困るわ。私達の仕事がなくなる」
「これからはちゃんと未来を見据えて、勧誘するんだな」
「そうね。それじゃぁ私は奥で剣のメンテをするから、二時間後取りに来てくれる?」

 さすが龍くん。冷静な突っ込みのおかげで穏便収まりなかったこになり、リリアンさんは気まずそうに言いい剣を持ってそそくさと奥の部屋に行ってしまった。
 残された私達は顔を見合わせ笑い合う。
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