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5章 私が目指す聖女とは
81.説得しよう
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「星ちゃん、大丈夫?」
「うん、陽こそもう平気?」
悩みが解決したから陽の様子を見に行くため用意していると、陽の方から来てくれパパと同じく心配される。元気だと分かるとやっぱりホッとしてくれて、私もそんな陽の姿を見てなんともなさそうでホッとした。
「私も大丈夫。それにしてもあんなことで気を失うなんてなさけないよね?」
「そんなことないよ。もし陽が倒れていなかったら、私が倒れていたかも知れなかったし」
やっぱりそこを気にしていたから、私は明るく言葉を返し笑って見せる。
本当に陽が倒れたから私が陽を護ると言う使命感が生まれただけ。、
もし私が先に気を失っていたら、陽が私の立場だったと思う。そのぐらいあの時私も怖かった。
「そう言ってくれるとありがたいな。……これから私達はどうするべきなんだろう?」
「それなんだけど、さっさと審判の花に行ってシノブを倒して人間の洗脳を解けば、和平会議出来るはず。途中で魔族軍がいたら止めようと思う」
「異世界人で帰る私達には、結局お膳立てしか出来ないんだよね」
「あっ……」
私の考え抜いた結論は簡単に論破されてしまい言われてみればごもっとも過ぎて、自分の詰めの甘さが恥ずかしい。
和平会議をするのは人間と魔族なんだから、そこで話が決裂になる可能性がある。むしろ決裂する可能性が大。
洗脳が解けたとしても魔族嫌いの人間はいる。魔族だってマヒナさんのように人間嫌いな魔族もいる。いくら戦争だからと言っても家族や仲間を殺されていれば、憎むのは当然なこと。
そんなの分かりきっていたはずなのに、すべてが抜け落ちていた。
「セレス姫とアリア姫ならきっと和平会議がうまく行くように動いてくれると思けれど、魔族側もそう言う人がいれば良いんだけどね」
「そうだよね? そう言えば私達の知っている魔族は、お母さん以外全員攻撃的な人しか知らない」
人間は洗脳を解いて首謀者を見つけ出せば和平会議は出来るけれど、魔族はシノブを倒した所で応じてくれるとは限らない。
お母さんのような人間と魔族の共存を望んでいる魔族が少数派で、マヒナのような人間嫌いが多数派だったら?
考えたら不安要素しか思い浮かばない……。
……百聞は一見にしかずと言うように、一度魔族の街に行って人間に好意的な魔族を探すべきなんだろうか?
「確か審判の花に行く前に、魔族の街があるって言ってたよね?」
「うん、言ってた。だけど私達人間が入っても大丈夫かな?」
「そこは私が使っている変身薬の逆バージョンを使えば良いと思う」
「なるほど、その手があったね?」
さっきとは違い最後まで考えがある私の案に、陽も腑に落ちたようで表情も声も明るくなり賛成してくれる。
これならパパ達にも説得出来る。
そんな自信がついて今夜早速話をしようと意気込んでいたんだけれど。
「だと思ったから、ここで龍ノ介達と合流することにしたんだ」
「え、そうなの? さすがパパだね」
納得するまで根気よく説得しようと意気込み自分の素直な気持ちをぶつけてみたら、パパはキョトンと龍くんを呼び寄せた真相を語る。
つまり私のしたいことを本人よりも先に気づいていたらしい。あまりのことに拍子抜けして台詞が棒読みとなった。
本当に私のパパはすごいと再確認をする。
「セイカ、ありがとう。魔族のことも親身に考えてくれて。もちろんあたしも全面的に協力する」
「と言うより魔族代表はスピカでも良いんじゃない?」
『え?』
お母さんは感動して涙ながら私の手を握りそう言ってくれるのに、なぜかヨハンさんは首を傾げ思ってもいないことを不思議そうに言う。
私達は一斉にヨハンさんに注目をする。
魔族代表がお母さん?
「だってスピカは魔王一族で人間と魔族の共存を誰よりも望んでたじゃないの?」
「スピカは忍を倒したら俺達と一緒に地球へ行くんだから、魔族代表は無理だろう?」
「魔族代表は和平会議はそれを実行継続しないと意味がないんですよ」
いくらそれが一番の良い方法でも、私とパパは受け入れられない。
強い口調で反論出来ない正論を突きつける。
お母さんは私達と地球の日本に来てもらう。新しい思い出をたくさん作って、幸せな日々を送る。
それは決定事項。
「二人ともそれはスピカの意思なの?」
『え?』
「二人の考えを押し付けたりしてない? ちゃんとスピカの気持ちを聞いた?」
私達が思っていた反論出来ない正論は極論に過ぎなかった。
確かに当然地球に来るんだと思い込んでいたから聞いていない。
お母さんは地球へは来てくれずに……新たな魔王になるの?
私とパパより魔族が大切で、別々の道を歩むことになっても後悔はしない?
「セイカ、そんな顔をするな。あたしも二人と一緒に地球へ行くから」
「本当に?」
「ああ。言っただろう? あたしの未来はセイカとセイヤに任せるって」
不安はもろ顔に出ていたようで、お母さんに多分母親としての気持ちを無理矢理言わせてしまった。その証拠に微笑みの裏には、微かな悲しみが浮かんでいる。
お母さんもパパと同じだね?
自分のことよりも娘が第一優先。娘の私を何よりも大切にしてくれる。
でも本当にそれでいいの? いくら娘のためだからと言って、すべて犠牲にしてもいいの?
私がとんでもないワガママ娘になったとしても、お母さんは私のこと嫌いになったりしないのかな。
「そう。スピカがそれで良いのならば、私も魔族代表捜しを手伝うわ」
多分ヨハンさんもお母さんの気持ちに気づいたのか、それ以上は何も追求せずに魔族代表捜しに協力的になってくれた。
「うん、陽こそもう平気?」
悩みが解決したから陽の様子を見に行くため用意していると、陽の方から来てくれパパと同じく心配される。元気だと分かるとやっぱりホッとしてくれて、私もそんな陽の姿を見てなんともなさそうでホッとした。
「私も大丈夫。それにしてもあんなことで気を失うなんてなさけないよね?」
「そんなことないよ。もし陽が倒れていなかったら、私が倒れていたかも知れなかったし」
やっぱりそこを気にしていたから、私は明るく言葉を返し笑って見せる。
本当に陽が倒れたから私が陽を護ると言う使命感が生まれただけ。、
もし私が先に気を失っていたら、陽が私の立場だったと思う。そのぐらいあの時私も怖かった。
「そう言ってくれるとありがたいな。……これから私達はどうするべきなんだろう?」
「それなんだけど、さっさと審判の花に行ってシノブを倒して人間の洗脳を解けば、和平会議出来るはず。途中で魔族軍がいたら止めようと思う」
「異世界人で帰る私達には、結局お膳立てしか出来ないんだよね」
「あっ……」
私の考え抜いた結論は簡単に論破されてしまい言われてみればごもっとも過ぎて、自分の詰めの甘さが恥ずかしい。
和平会議をするのは人間と魔族なんだから、そこで話が決裂になる可能性がある。むしろ決裂する可能性が大。
洗脳が解けたとしても魔族嫌いの人間はいる。魔族だってマヒナさんのように人間嫌いな魔族もいる。いくら戦争だからと言っても家族や仲間を殺されていれば、憎むのは当然なこと。
そんなの分かりきっていたはずなのに、すべてが抜け落ちていた。
「セレス姫とアリア姫ならきっと和平会議がうまく行くように動いてくれると思けれど、魔族側もそう言う人がいれば良いんだけどね」
「そうだよね? そう言えば私達の知っている魔族は、お母さん以外全員攻撃的な人しか知らない」
人間は洗脳を解いて首謀者を見つけ出せば和平会議は出来るけれど、魔族はシノブを倒した所で応じてくれるとは限らない。
お母さんのような人間と魔族の共存を望んでいる魔族が少数派で、マヒナのような人間嫌いが多数派だったら?
考えたら不安要素しか思い浮かばない……。
……百聞は一見にしかずと言うように、一度魔族の街に行って人間に好意的な魔族を探すべきなんだろうか?
「確か審判の花に行く前に、魔族の街があるって言ってたよね?」
「うん、言ってた。だけど私達人間が入っても大丈夫かな?」
「そこは私が使っている変身薬の逆バージョンを使えば良いと思う」
「なるほど、その手があったね?」
さっきとは違い最後まで考えがある私の案に、陽も腑に落ちたようで表情も声も明るくなり賛成してくれる。
これならパパ達にも説得出来る。
そんな自信がついて今夜早速話をしようと意気込んでいたんだけれど。
「だと思ったから、ここで龍ノ介達と合流することにしたんだ」
「え、そうなの? さすがパパだね」
納得するまで根気よく説得しようと意気込み自分の素直な気持ちをぶつけてみたら、パパはキョトンと龍くんを呼び寄せた真相を語る。
つまり私のしたいことを本人よりも先に気づいていたらしい。あまりのことに拍子抜けして台詞が棒読みとなった。
本当に私のパパはすごいと再確認をする。
「セイカ、ありがとう。魔族のことも親身に考えてくれて。もちろんあたしも全面的に協力する」
「と言うより魔族代表はスピカでも良いんじゃない?」
『え?』
お母さんは感動して涙ながら私の手を握りそう言ってくれるのに、なぜかヨハンさんは首を傾げ思ってもいないことを不思議そうに言う。
私達は一斉にヨハンさんに注目をする。
魔族代表がお母さん?
「だってスピカは魔王一族で人間と魔族の共存を誰よりも望んでたじゃないの?」
「スピカは忍を倒したら俺達と一緒に地球へ行くんだから、魔族代表は無理だろう?」
「魔族代表は和平会議はそれを実行継続しないと意味がないんですよ」
いくらそれが一番の良い方法でも、私とパパは受け入れられない。
強い口調で反論出来ない正論を突きつける。
お母さんは私達と地球の日本に来てもらう。新しい思い出をたくさん作って、幸せな日々を送る。
それは決定事項。
「二人ともそれはスピカの意思なの?」
『え?』
「二人の考えを押し付けたりしてない? ちゃんとスピカの気持ちを聞いた?」
私達が思っていた反論出来ない正論は極論に過ぎなかった。
確かに当然地球に来るんだと思い込んでいたから聞いていない。
お母さんは地球へは来てくれずに……新たな魔王になるの?
私とパパより魔族が大切で、別々の道を歩むことになっても後悔はしない?
「セイカ、そんな顔をするな。あたしも二人と一緒に地球へ行くから」
「本当に?」
「ああ。言っただろう? あたしの未来はセイカとセイヤに任せるって」
不安はもろ顔に出ていたようで、お母さんに多分母親としての気持ちを無理矢理言わせてしまった。その証拠に微笑みの裏には、微かな悲しみが浮かんでいる。
お母さんもパパと同じだね?
自分のことよりも娘が第一優先。娘の私を何よりも大切にしてくれる。
でも本当にそれでいいの? いくら娘のためだからと言って、すべて犠牲にしてもいいの?
私がとんでもないワガママ娘になったとしても、お母さんは私のこと嫌いになったりしないのかな。
「そう。スピカがそれで良いのならば、私も魔族代表捜しを手伝うわ」
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