99 / 157
5章 私が目指す聖女とは
80.聖女として
しおりを挟む
「あれ、ここは私の部屋?」
気がつくそこは自分の部屋のベッドだった。チョピは枕元でまだ眠っている。
「星歌、体の調子はどうだ?」
「うん。大丈夫」
「それなら良かった。熱も下がったみたいだな」
丁度部屋に入ってきた浮かなく深刻な表情をしたパパがすぐにやって来て、おでことおでこをくっつけ具合を確認される。
頭痛やだるさも消えていて気分もすっきりしているから、安心させるため元気に頷いて見せた。すると私の顔をのぞき込みパパはホッとし微笑む。
この調子だとどうやら私は意識を失ったみたいだけど、だからと言って私はなぜ自分の部屋にいるんだろう?
レジストに行くまで家は封印と言っていた……まさかここはもうレジスト?
慌てて窓から外を見ると廃墟化した場所で、夕焼け空になり始めている。
「ここはどこ?」
「さっきと同じ村だよ。ここで龍ノ介達と合流することにしたんだ。順調に行けば明後日には到着するらしい」
「ありがとうパパ」
だから私と陽がくつろげるように家を出してくれた。心優しいパパらしい配慮だとすぐに分かり、嬉しくてパパに抱きつきお礼を言う。さっきとは違い心の底からの感謝。
「これくらいどうってことないさ。それより星歌のおかげでアンデッド化は阻止され、すべて村の人達と協力し埋葬を終えた」
「え、生き残りがいたの?」
「ああ。二十人弱だがな。ヨハンの知人家族は全員無事だったよ」
「そうなんだ」
思わず良かったと言いそうになったけれど、多くの人が亡くなっているんだから不謹慎だと思ってゴクンと言葉を飲み込む。
知り合いが生きていたら、他の人はどうでも良いって思ってはいけない。二十人とは人口に対してどのぐらいなのか気にはなったものの、聞いてどうすると思う内容だしもしあまりにも少ない人数だったらショックが大きい。
魔王軍はどのぐらい奇襲をするのだろうか? さすがに人間はそこまで馬鹿じゃないから、もう奇襲対策を完璧にしていると思いたい。
むしろ逆ギレした人間が、魔族に奇襲を掛けないか心配だな。
「それじゃぁ父さんは復旧作業に戻るな」
「うん。そう言えば陽は?」
「陽ちゃんも部屋で休ませてる。星歌も今日はゆっくしてなさい」
今日の所はパパの言うとおり、ゆっくりさせてもらうことにする。
無理矢理聖女の役目を果たすんじゃなく納得出来ることをしたいし、パパ達ともちゃんと話し合う。
聖女だったら民達の安全を第一優先に考えるべきだろうけれど、あいにく聖霊であるチョピ自身が役目より自分を大切にしてと言ってくれている。私だってそれは願い下げだ。
でもこうやって残酷な現状を目の当たりにしたら、なんとか助けたいと思ってしまうのが人情と言うもの。
となるとさっさと審判の花まで行って祈りを捧げフェイリルに加護を受ける。
試練とはどんな物だが分からないけれど、さすがにそれぐらいは聖女としてやり遂げて見せる。
そしてそのまま魔王城に直行してシノブを倒し……と言っても戦いの中心はパパと龍くんになるんだよね? それとも浄化の光だったら、私でもシノブを倒せるかな?
「結局シノブって何者なのんだろう?」
今さらながらその疑問に辿り着く。
一度死んだと思われたラスボスが異世界で生きていて、やっぱりラスボスで私達の行く手を阻む。
考えられる可能性としたら、地球に来たのは影武者かコピー人間。あるいは命からがら逃げ帰って来た。
シノブも実はお母さんと一緒でホムンクルスだから、体は脆く滅茶苦茶弱いと言うオチはないのかな? もしそうだったらパパが瞬殺して、人間と魔族の和平会議は簡単なのにね。
なんて軽い現実逃避をしてしまうけれど、いくらなんでもそれはないだろうと思い苦笑する。
【セイカ、どうしたの?】
「え、チョピ? ちょっとこれからのことを考えていただけ」
まだ寝ているとばかり思っていたチョピから声を掛けられ、慌てて視線を下げたいしたことないと答える。
もし私の心を読まれてたら恥ずかしい。
【これからのこと? 審判の花に行くんでしょ? そして人間の洗脳を解いて、魔族と和平会議が出来ればいい】
どうやら心を読まれてはいなかった。
当然とばかりにチョピが思うこれからのことを淡々と話し出す。しかもシノブのことが完全に抜け落ちている。確かにシノブさえいなければ、聖女の役目は簡単なのかもしれない。
「前にも言ったと思うけど、そのためにはまずシノブを倒さないといけないの」
【うん、知ってるよ。でもそれはセイカのパパ達に任させればいいんじゃないの?】
「だからと言って全部丸投げには出来ないでしょ?」
会話をしても弱冠とんちんかんなやり取りに、まずはチョピとの対話が必要なんだと思った。
チョピの望みは、人間と魔族が手を取り合う平和な世界にすること。
それには洗脳を解くのも必要だけれど、シノブがいたらそんな世界は訪れない。そして洗脳を行った主犯を見つけ出し、説得する必要がある。
そこまですべて理解してるんだろうか?
【ボクの望みを叶えるには、いろいろなことを片付けていかないと駄目なんだよね? そこまでちゃんと考えていなかった。ごめんなさい】
私の心を読んだのかシュンとなったチョピは、自らちゃんと反省し謝罪。
そんな姿は愛らしいけれど可哀想になり、そっと抱きあげモフモフする。
フサフサで気持ちいい。
「分かってくれれば、いいんだよ。これから一緒にどうしたらいいか考えよう」
【ありがとう。でも審判の花には行くんだよね?】
「うん、それは一刻も早く行きたい。もう人間と魔族を戦わせたくないんだ。だから魔王軍と遭遇したら、迂回なんかしたくない……」
【なんだ。もう答えは出てるんだね? それならボクも協力するよ】
まずはチョピと一緒に考えようとしたはずが、いつの間にか答えが出ていたことに気づきハッとなった。
そうか。
悩んで考えなくても私の答えは、最初っから決まっていた。聖女の役目も私のやりたいことも同じだったんだね。
気がつくそこは自分の部屋のベッドだった。チョピは枕元でまだ眠っている。
「星歌、体の調子はどうだ?」
「うん。大丈夫」
「それなら良かった。熱も下がったみたいだな」
丁度部屋に入ってきた浮かなく深刻な表情をしたパパがすぐにやって来て、おでことおでこをくっつけ具合を確認される。
頭痛やだるさも消えていて気分もすっきりしているから、安心させるため元気に頷いて見せた。すると私の顔をのぞき込みパパはホッとし微笑む。
この調子だとどうやら私は意識を失ったみたいだけど、だからと言って私はなぜ自分の部屋にいるんだろう?
レジストに行くまで家は封印と言っていた……まさかここはもうレジスト?
慌てて窓から外を見ると廃墟化した場所で、夕焼け空になり始めている。
「ここはどこ?」
「さっきと同じ村だよ。ここで龍ノ介達と合流することにしたんだ。順調に行けば明後日には到着するらしい」
「ありがとうパパ」
だから私と陽がくつろげるように家を出してくれた。心優しいパパらしい配慮だとすぐに分かり、嬉しくてパパに抱きつきお礼を言う。さっきとは違い心の底からの感謝。
「これくらいどうってことないさ。それより星歌のおかげでアンデッド化は阻止され、すべて村の人達と協力し埋葬を終えた」
「え、生き残りがいたの?」
「ああ。二十人弱だがな。ヨハンの知人家族は全員無事だったよ」
「そうなんだ」
思わず良かったと言いそうになったけれど、多くの人が亡くなっているんだから不謹慎だと思ってゴクンと言葉を飲み込む。
知り合いが生きていたら、他の人はどうでも良いって思ってはいけない。二十人とは人口に対してどのぐらいなのか気にはなったものの、聞いてどうすると思う内容だしもしあまりにも少ない人数だったらショックが大きい。
魔王軍はどのぐらい奇襲をするのだろうか? さすがに人間はそこまで馬鹿じゃないから、もう奇襲対策を完璧にしていると思いたい。
むしろ逆ギレした人間が、魔族に奇襲を掛けないか心配だな。
「それじゃぁ父さんは復旧作業に戻るな」
「うん。そう言えば陽は?」
「陽ちゃんも部屋で休ませてる。星歌も今日はゆっくしてなさい」
今日の所はパパの言うとおり、ゆっくりさせてもらうことにする。
無理矢理聖女の役目を果たすんじゃなく納得出来ることをしたいし、パパ達ともちゃんと話し合う。
聖女だったら民達の安全を第一優先に考えるべきだろうけれど、あいにく聖霊であるチョピ自身が役目より自分を大切にしてと言ってくれている。私だってそれは願い下げだ。
でもこうやって残酷な現状を目の当たりにしたら、なんとか助けたいと思ってしまうのが人情と言うもの。
となるとさっさと審判の花まで行って祈りを捧げフェイリルに加護を受ける。
試練とはどんな物だが分からないけれど、さすがにそれぐらいは聖女としてやり遂げて見せる。
そしてそのまま魔王城に直行してシノブを倒し……と言っても戦いの中心はパパと龍くんになるんだよね? それとも浄化の光だったら、私でもシノブを倒せるかな?
「結局シノブって何者なのんだろう?」
今さらながらその疑問に辿り着く。
一度死んだと思われたラスボスが異世界で生きていて、やっぱりラスボスで私達の行く手を阻む。
考えられる可能性としたら、地球に来たのは影武者かコピー人間。あるいは命からがら逃げ帰って来た。
シノブも実はお母さんと一緒でホムンクルスだから、体は脆く滅茶苦茶弱いと言うオチはないのかな? もしそうだったらパパが瞬殺して、人間と魔族の和平会議は簡単なのにね。
なんて軽い現実逃避をしてしまうけれど、いくらなんでもそれはないだろうと思い苦笑する。
【セイカ、どうしたの?】
「え、チョピ? ちょっとこれからのことを考えていただけ」
まだ寝ているとばかり思っていたチョピから声を掛けられ、慌てて視線を下げたいしたことないと答える。
もし私の心を読まれてたら恥ずかしい。
【これからのこと? 審判の花に行くんでしょ? そして人間の洗脳を解いて、魔族と和平会議が出来ればいい】
どうやら心を読まれてはいなかった。
当然とばかりにチョピが思うこれからのことを淡々と話し出す。しかもシノブのことが完全に抜け落ちている。確かにシノブさえいなければ、聖女の役目は簡単なのかもしれない。
「前にも言ったと思うけど、そのためにはまずシノブを倒さないといけないの」
【うん、知ってるよ。でもそれはセイカのパパ達に任させればいいんじゃないの?】
「だからと言って全部丸投げには出来ないでしょ?」
会話をしても弱冠とんちんかんなやり取りに、まずはチョピとの対話が必要なんだと思った。
チョピの望みは、人間と魔族が手を取り合う平和な世界にすること。
それには洗脳を解くのも必要だけれど、シノブがいたらそんな世界は訪れない。そして洗脳を行った主犯を見つけ出し、説得する必要がある。
そこまですべて理解してるんだろうか?
【ボクの望みを叶えるには、いろいろなことを片付けていかないと駄目なんだよね? そこまでちゃんと考えていなかった。ごめんなさい】
私の心を読んだのかシュンとなったチョピは、自らちゃんと反省し謝罪。
そんな姿は愛らしいけれど可哀想になり、そっと抱きあげモフモフする。
フサフサで気持ちいい。
「分かってくれれば、いいんだよ。これから一緒にどうしたらいいか考えよう」
【ありがとう。でも審判の花には行くんだよね?】
「うん、それは一刻も早く行きたい。もう人間と魔族を戦わせたくないんだ。だから魔王軍と遭遇したら、迂回なんかしたくない……」
【なんだ。もう答えは出てるんだね? それならボクも協力するよ】
まずはチョピと一緒に考えようとしたはずが、いつの間にか答えが出ていたことに気づきハッとなった。
そうか。
悩んで考えなくても私の答えは、最初っから決まっていた。聖女の役目も私のやりたいことも同じだったんだね。
0
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説

ウルティメイド〜クビになった『元』究極メイドは、素材があれば何でも作れるクラフト系スキルで商売をして生計を立てていく〜
西館亮太
ファンタジー
「お前は今日でクビだ。」
主に突然そう宣告された究極と称されるメイドの『アミナ』。
生まれてこの方、主人の世話しかした事の無かった彼女はクビを言い渡された後、自分を陥れたメイドに魔物の巣食う島に転送されてしまう。
その大陸は、街の外に出れば魔物に襲われる危険性を伴う非常に危険な土地だった。
だがそのまま死ぬ訳にもいかず、彼女は己の必要のないスキルだと思い込んでいた、素材と知識とイメージがあればどんな物でも作れる『究極創造』を使い、『物作り屋』として冒険者や街の住人相手に商売することにした。
しかし街に到着するなり、外の世界を知らない彼女のコミュ障が露呈したり、意外と知らない事もあったりと、悩みながら自身は究極なんかでは無かったと自覚する。
そこから始まる、依頼者達とのいざこざや、素材収集の中で起こる騒動に彼女は次々と巻き込まれていく事になる。
これは、彼女が本当の究極になるまでのお話である。
※かなり冗長です。
説明口調も多いのでそれを加味した上でお楽しみ頂けたら幸いです


〈完結〉毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは

公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる