普通の女子高生だと思っていたら、魔王の孫娘でした

桜井吏南

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5章 私が目指す聖女とは

77.親子の時間

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 親子なんだから当然部屋は一室で良いわよね?

 ヨハンさんの気遣いは宿屋に泊まる時まで、発揮されてしまい反論する前に二部屋を予約された。嬉しい反面、初体験なのでちょっと緊張している。

「セイカとスピカはベッドで寝なさい。俺はソファーで充分だから」
「何言ってるんだい? こうしてベッドをくっつければ余裕で三人寝られるだろう?」

 ベッドは二つだけでパパなら絶対そう言うと思った解決策を提案するけれど、お母さんはそう言いながらベッドをくっつけ一つにする。
 これならなんとか三人で寝られる。

「まぁお前達がそれでいいんなら構わないが」
「私は問題ないよ。どう言う順番にしようか?」 
「もちろん、セイカが真ん中。昔は良くそうやって寝てたんだ。セイカ、ここに座って」
「うん」

 お母さんはそう言ながらベッドに座り隣パンパンと叩くから、言われた通りに座るとパパは私の隣に座った。
 まだお母さんが戻ってきて一週間しか経っていないのに、こうしてお母さんがいることが当たり前になってきている。

「セイカは、本当に可愛いな。私の宝物」
「俺もだよ」

 幸せそうに私をギュッと抱きしめ頬刷りをしだすお母さんを、パパも同じ感じで私達をギュッと抱きしめる。
 いきなりこれは一体なんのプレイと思いきや、二人のありったけの愛情が伝わってきて拒むことなど出来ず。

 私から甘える分にはどうってことないのに、いざスキンシップを取られると恥ずかしすぎる。
 思えばパパからスキンシップは滅多になくいつも私からだから馴れてないんだろうな? そう思うと今日のパパは珍しい。

「私もパパとお母さんも大好きだよ」

 私も二人にギュッと抱きつく。

「嬉しい。それなら今から温泉に行かないか? そして家族風呂に入ろう」
「そう言えばこの街は温泉地だったな。よし行こう」
「無理無理無理無理、絶対に無理!!」

 お母さんはともかくなぜかパパまで乗り気になるから、二人から離れ声を張り上げ全力で拒否。

 パパと混浴なんて、流石に私であっても無理ゲー。

「星歌、落ち着きなさい。トゥーランの温泉は専用着で入浴するんだ」
「え、そうなの?」

 慌てて真相を明かすパパに、キョトンとなる。

 そう言うことなら一緒に入っても問題はない。と言うより私も入りたい。

「家族風呂ならそんなのいらないだろう?」
『いるに決まってる』

 なのにお母さんはあっけらかんとありえないことを言い出すから、私とパパは言葉をハモらせ却下する。




 親子三人の温泉は夢のような楽しい時間だったけれど、夢は必ず目が覚める物で覚めた途端厳しい現実が待っていた。

「どうやらあたし達は誰かに尾行されているようだ」
「え、尾行?」
「数は分かるだけ四人。この程度であればたいしたことはないが、ここで騒ぎを起こせばいろいろ厄介だ」
「そしたら一旦巻いて、ヨハン達と合流した方が良いな?」

 尾行をされていると言うだけで怖くなり尻込みしてしまう私とは違い、パパとお母さんは冷静に判断しそうするべきか静かに話し合う。

 私も二人のように強くなりたい。
 この日のために強化合宿までしてたくさん魔術を使いこなせるようになったのに、いざと言う時何も出来ずただ護られるだけなんて情けないのもほどがあるよね?
 一緒に強くなろうと約束したつよしに笑われる。

「私も戦う」

 震える手を強く握りしめ、勇気をもって決意表明をする。

「無理しなくても父さんが──」
「セイヤ、セイカのやる気を尊重しよう」

 いつものようにすべてを背負おうとするパパの悪い癖が発動しかけるも、お母さんの助言の助言のおかげで多分なんとかなかったんだと思う。

 パパとお母さんもいるから、怖くなんてない。

 そう思ったら本当に怖いと言う気持ちがすっと消えて勇気に変わっていく矢先、

「星歌、危ない」

 パパの叫び声とともに私を強引に抱き寄せられるなり、銃声音が三発鳴り響く。
 これは私が狙われいち早く気づいたパパに庇われた。
 そして……。

「パパ?」

 最悪のシナリオしか考えられなくって頭を上げパパを見ると、想像を絶する信じられない物を目の当たりにしてしまい開いた口が塞がらない。

「さすがセイヤだな」

 お母さんはこうなることを予想してたのか、苦笑しつつやや呆れている。

 その信じられない物とは、発砲された弾を素手で受け止め粉々に砕き地面に捨てるパパの姿だっだ。

 銃弾を素手で受け止めるなんて、どこぞの戦闘漫画あるいはギャグ漫画ですか?
 確かにパパは人類最強の格闘家でも、あくまでも肉体は生身なんだよね?
 え、実は人造人間だったりする?

 ダダダッ

 考えがまとまらない中、今度は四方八方から銃撃の嵐に受けるけれどこれは結界ではじき飛ばされる。

「セイカ、ボーとしてないで攻撃魔術。ただし周りを巻き込まないように」
「え、あうん」

 お母さんの指示はむちゃぶりだけれど、ごもっともだと思い何も言わず深く頷く。

 敵にだけ攻撃出来る魔術を龍くんに教えてもらった。
 落ちついて発動させたい魔術を探し出し読めない文字を念じて、狙撃手がいるだろう方向を思い浮かべ力込めて投げ込む。
  解き放された無数の炎の矢は思い通りの場所へら勢いよく突撃。

 バァンバァンバァン

 数ヵ所から弾ける爆竹音よりすごい聞こえたと同時に、銃撃の嵐はピタリと止まる。

 私だってやれば出来ると分かった瞬間で思わずはしゃぎそうになる中、パパが飛び出し隠れている追っ手をほぼ瞬殺でなぎ倒していく。
 無双と言っても過言ではない。

 あっと言う間に決着がつきめでたしめでたしとなったけれど、代わりに周囲の注目の的になり多くの人達が眉を細めヒソヒソ話を始める。

「逃げるぞ」

 とパパは言って私を背負いお母さんをお姫様だっこすると、全速力でその場から立ち去り出口へと向かう。
     
 お姫様抱っこのポジションが、お母さんに奪われ少々複雑に思う。

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