普通の女子高生だと思っていたら、魔王の孫娘でした

桜井吏南

文字の大きさ
上 下
87 / 157
4章 それぞれの愛のかたち

68.似たもの同士

しおりを挟む
「やっぱりだめだ。何をしても繋がらない」
「リュウさんが間に合ってくれればいいのだが」

 気配消し魔術を使い慎重にリュウさんを捜索していたのに、最強級モンスターは一匹だけではなかった。
 確認が出来ただけでも三匹。
 気配消しのおかげでまだ見つかってはいないものの、行く手はすべて塞がれたため身動きが取れず。横穴で身を潜めている。
 更に洞窟内に強力な結界を張られているのか、通信機以外に試して見ても龍ノ介さんとは繋がらず。
 洞窟内にいるリュウさんはこの異変に気づいてくれたらしく、こちらに向かっているようだけれどペースが亀並み。つまり最強級モンスターは三匹だけではなく、他にも最強級レベルのモンスターがいて苦戦しているってこと。
 そんな生死の危機にさらされているのに、それほど恐怖に脅えることもなく冷静にいられた。

「この状況って明らかにおかしいよね? この洞窟は実習で何回も使っているのに、最強級モンスターに今まで出会ったことがなかった。そもそも出現するんであれば、選んだりしないよね?」
「確かにそうだな。……誰かが意図的に召喚したとなると犯、人は腕のいい召還士だろう。自分だけならリュウさんの仕業かも知れないが、佐藤も一緒なのだからそれはないからな」

 リュウさんの教育が鬼畜なのは今は置いといて、黒崎くんの話を元にしてもう一度よく考えてみる。

 召還士が誰かと言うことより、なぜこの洞窟に複数召喚したんだろう?
 相当な理由がない限りこんなことしないはず。となると普通に考えれば、私達の命を誰かが狙ってることになる。
 でも私にはまったく見当が……そう言えば前に星ちゃんのあてつけのように、聖人の双子にされてとんずらしてたままだった。
 まさかそれが原因?
 とんずらしただけで命を狙われる物?
 それとも?

「黒崎くんには命を狙われる心当たりがあったりする?」
「あまり言いたくないのだが、あるとすれば自分が村瀬と共にいることだろう。裏切り者だと思われても当然だ」
「あ……」

 黒崎くんの方に原因があるかもと思い聞いて見たら、言葉を渋らせ言って欲しくない原因を答えられる。でもそれが一番可能性が高い。
 理不尽でも星ちゃんの命が狙われているのは確か。当然仲間の私達の命も狙われている。

「だとしたら私達は余計に強くならないとね? 倒せなくても逃げ延びれるようにしないと迷惑をかけちゃう」
「地球に帰る選択肢はないのか?」
「地球ではみんなで帰るから私一人だけは……足手まといだから帰れと言われたらしょうがないけど」

 今だってすでに足手まといと言われれば、悲しいけれどそうなんだよね?
 サポート魔術に優れていても、攻撃魔術はからっきし。相当補助魔術の腕を上げないと、役には立たない。
 せめて太の洗脳が解けて任せられるまでは、帰れと言われないように頑張るつもりでいる。
 でもだからと言って今最強級モンスターに挑もうとは思わない。
 挑んだら確実に死んで、みんなに迷惑を掛けるだけ。

「佐藤は本当に仲間思いなのだな? 自分も佐藤達と同じように普通の出会いたかった。……村瀬には本当に悪いことをしたと思ってる」

 優しい言葉で返してくれるも。言っているうちに墓穴を掘ったらしく凹む。
 慰めたいけれど、それについては許してはいけないんだと思う。許したらきっと黒崎くんは似たような過ちを繰り返す。そしたら相手も傷つくし、黒崎くんだって傷つく。だから。
 もちろん心を入れ替えた黒崎くんはいい人だって分かったから、交流は深めていく。失恋の辛さは私にも知っているから、偉そうだけど助言はする。

「その教訓を生かせれば、次の恋はきっとうまく行くんじゃないかな? その時は私で良ければ相談に乗るよ」
「やっぱり村瀬のことは諦めなければいけないだろうか?」

 後から聞いた話完膚なきまでに玉砕したはずなのに、まだ諦めていないことに驚くしかなかった。

 玉砕しても諦めきれず思い続ける。
 何度だって告白し続ける。
 それは情熱的である意味素敵なことだとは思うけれど、黒崎くんには残念ながら望みはない。
 これ以上粘り続けたら逆に嫌われるだけ。

「まぁ星ちゃんの幸せを影ながら見守るだけならいいんじゃない?」

 思うだけなら本人の自由で、相手にも嫌われることがない。
 だけどそれはとっても辛いことだから、私には耐えられないから諦めた。

「もちろんそのつもりでいる。自分達は似たもの同士だな?」
「え、いきなり何?」
「だって佐藤も館先生に報われない恋愛をしてるだろう?」
「もうしてないよ」

 話はいい話でめでたく終わろうとしていたはずなのに、いきなり仲間意識されたあげく変な誤解をされてしまう。
はっきり否定した物の胸がチクリと痛み出す。黒崎くんの澄んだ瞳が見てられなくって、慌てて視線をそらした。

 これじゃぁまるで龍ノ介さんのことがまだ好きなんだと言っているようなもん。

 バーン

 どこからともなく激しい爆音が響き出す。

─陽、聞こえるか?
「龍ノ介さん?」

 一向に繋がらなかった通信機から、必死になって私を呼ぶ龍ノ介さんの声が聞こえた。

 何もかもが最悪です。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

〈完結〉毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!

暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい! 政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

処理中です...