普通の女子高生だと思っていたら、魔王の孫娘でした

桜井吏南

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4章 それぞれの愛のかたち

61.義姉の望み① 

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 目的地まではルーナスさんの希望で車で行くことになった。車だと三時間ぐらいで着くようで、帰りは空間移動魔術を使うとかで日帰り旅行になるらしい。
 チョピのせいで朝食抜きの危機になったけれど、私の落ち込みを哀れんだパパがホットケーキを作ってくれ飢え死には免れた。
 チョピはすっかり反省していて、バックの中で不気味なぐらい大人しくしている。



「セイヤは、マヒナのことは覚えてるだろうか?」
「はい、結婚してからもよく遊び来ていました。ただ俺のことを嫌っているようで、毎回毎回バトルを挑まれて苦い思い出しかありませんが」

 しばらくしてようやくルーナスさんは口を開き確認すれば、パパは頷き苦い顔になり話し出す。

 結婚してからもよく遊びに来てたと言うことは、マヒナさんと言う人はお母さんと親しい間柄で私のことも知っている?
 そしてパパを嫌っているって……魔族?

「そりゃぁそうだろう? 大好きで尊敬している義母をマヒナが憎む人間に取られたのだからな? しかもいくら魔王を倒した実力者とは言え、普段のお前は頼りないし優しすぎる偽善者でしかないからな」
「アハハ、それよく言われました。俺としてはもっと仲良くしたかったんですけどね」
「は、母??」

 すごいことをさらりと言ってもパパは当然に受け答え今度は苦笑するけれど、私は信じられず耳を疑い声を裏返させ問い返す。

 今、お母さんのことを大好きで尊敬してる母って言った?
 何それ?
 私に姉がいたなんて初耳……。

 確かにお母さんにバツがついていて、その時に産んだ異父姉がいてもおかしくはない。
 パパも知っているから問題はない……。
 だけどそれでもあまり良い感じがしないのは、やっぱり私がお子様だからだろう。

「安心しろ。マヒナはスピカの養子だ。スピカの初恋で教育係だった人の、忘れ形見を引き取ったと聞いている。母親もマヒナが産まれてすぐ死んだそうだ」
「そう言うことか。……前夫がいてその時産んだ子だと思った…」

 私にとっては最悪な展開は免れ、ホッと安心する。
 お母さんの初恋の子供なら別にどうってことない所か、そう言う理由で養子として引き取ったんなら美談になると思う。
 ただ理由がなんであれパパを嫌っている人とは関わりたくないし、向こうだってパパの娘である私を嫌っているはずだから仲良くしなくてはいいはず。
 お母さんには申し訳ないけど。

「それでの要件は聞いてます?」
「セイカが聖女であると教えたら、頼みたいことがあると重々しく言われてな。そしてついでにセイヤにも言いたいことがたくさんあると」
「え、私に?」
「……言いたいことがたくさんある。骨の二三本折れるのを覚悟しといた方が良いか」
「!? だったら行くのを辞めよう」

 さっきから驚くことばかりで心臓に悪く、今度はげっそりするパパを見てストップをかける。

 んな危険な人物に会うことなんてない。
 なんで呼び出されわざわざ会いに行ったら、骨を二三本も折られなきゃいけないの?
 しかも頼みごとをするって、どこまで図々しい人なんだろうか?

「セイカは折られんから安心しな。マヒナはセイカを実の妹のように可愛がっていたんだぞ?」

 意外なことだったけれど、そう言う問題じゃない。
 しかもパパが折られるのには否定しないって駄目じゃん。

「パパに危害を与える人の頼みなんて聞きたくないです。そもそも頼みごとがあると言うならば、ならそっちが頼みに来るのが筋だと思います」
「確かにそれは言えてるな」
「星歌、驚かせてすまない。言葉の綾だから、本当に折られたりはしないよ。父さんもマヒナに話があるから、会いに行こう」

 強きな姿勢で正論をならべ拒否しあと少しでルーナスさんを言いくるめられそうになるも、パパは車を止め私を見つめ髪をなぜながら優しくそう言い行く意思を主張する。
 本当にパパはどこまでも人が良くってここまで言われたら、これ以上拒否が出来なくて認めざるおえない。
 でも認めたくなくって、言葉を渋らせていると

「セイカ、良いことを教えてやろう? マヒナにセイヤを傷つけたら絶交。と言えば効果抜群だよ」
「だったら会ったらすぐ言います。そして取り敢えず話だけ聞くことにします」
「ありがとう。星歌」

 乗り気にはなれないけれどルーナスさんの助言を信じ、しょうがないからそう言い行く選択をする。パパは嬉しそうにお礼を言う。

 ……パパはずるい。




 しかし


 目的地に辿り着き車から降りると、パパの顔色が真っ青に染まった。

「……スピカの匂いだ」
『え?』
「あっちの方からしてくる。星歌、行くぞ」
「え、あちょっと待って」  

 信じがたいことを唖然と呟き驚く私達に構うことなく、私をお姫様抱っこして走り出す。冷静さを失っていても、私を気遣ってくれている。

 お母さんの匂い?
 確かになんかハーブ系の優しい匂いが微かに薫るけれど、お母さんって死んでいるんだよね?
 ここでは二十八年前のことだから、残り香と言う可能性はなさそう。

 ……だとしたら罠?
  忍ならやりかねない。

 不意に嫌な予感が頭の中を駆け抜ける。

「パパ、待っ──」

 とにかくパパを落ち着かせようと声を掛けるのだが、すでに遅かった。
 炎が私達に目掛けて勢いよく襲ってくる。

 防御魔術を──

 防御魔法を発動させようとしていると、パパは近くの高い木に跳び移る。
 炎は私達のいた場所で大爆発。辺り一面炎の海に変わった。

 間一髪。

「星歌、怪我はないか? すまん軽率だった」
「うん、してない。でも本当に軽率だよ」

 これにはようやくいつものパパに戻り、思いっきり自分の過ちを反省する。
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