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4章 それぞれの愛のかたち
57.鬼ファザコン
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「ただいま、星歌」
「パパ、おかえりなさい」
太と顔を合わせられないので一人淋しくキッチンでカツを揚げる準備をしていると、パパが姿を見せ笑顔で言うから私も笑顔になり言葉を返し抱きつく。
外見が更にワイルドになっていて久しぶりの無精ひげ。覇気が感じられる。
するとほんの少しパパの身体が拒まって、いつもと違って抱き返してくれない。ショックでパッと手を離す。
「今父さん臭いから」
「え、確かにちょっと汗臭いし男臭いけど、そんなの当り前じゃん。まさか気にしてるの?」
「当たり前だ。娘にパパは臭いから嫌いと言われたら、俺は生きていけない」
だけどいかにもパパらしい理由を弱弱しく答えられ視線を下に向ける。
だからパパは帰ってくるとお風呂に入って朝シャンもしていたんだね?
そんな情報どこから仕入れてきた……女友達が父親は加齢臭がして嫌だって言っているぐらいだから、娘を持つ父親なら当たり前の悩みなのかな?
前にパパにも加齢臭するのか気になり聞いて見たけれど、龍くんにまだしないとガチで怒られた。加齢臭は四十歳を過ぎてかららしい。
「そんなんで私パパのこと嫌いになんてならないよ。でもパパが気にしてるのなら早くお風呂に入ってきなよ。今夜はカツカレーだよ」
「ありがとう。どっちにしろさっぱりしたいから風呂に入ってくるよ。カツカレー楽しみだ」
そう言うパパが可愛いと思いながら、パパの考えを主張する。すぐさまパパは元気になって、カツカレーと聞き目を輝かす。
いくらワイルドパパになって覇気があっても、私にとっては何も変わらない。
夕食は龍くんが気を使ってくれてパパと二人(チョピとガーロットも一緒だけど)で、庭で食べることになった。
カツカレーを美味しそうにがつがつ食べるパパの姿を見ていたら、なんだか幸せを感じて一週間ぶりなのにすごく懐かしい。
やっぱりあの時パパと龍くんに任して私と太陽だけで地球に帰らなくって本当に良かった。
「武者修行の時ちゃんと食事してたの?」
「してたさ。モンスターを狩って丸焼きにして食べてた」
「そ、そうなんだ」
漫画やゲームの世界。
オタクにすれば憧れの食事かと思うけれど、一週間も続けば話は別だろう。
「まぁな。おかげで太くんと黒崎くんも見違えるほど強くなったよ。父さんもようやく少し自信を取り戻せた」
【何を言う? セイヤはすでに人類最強と言っても良かろう】
言葉通りの武者修行。
鬼教官になったパパのことだから、スパルタで二人をしごいたんだろう。だから二人は相当レベルアップした。それにパパの強さはガーロットのお墨付きな上に、自信も取り戻しつつある。覇気も出て来て確かに今のパパは格好良さが増している。
大成功だったみたい。
「だったら私も頑張らないとね。明日は食材調達しにサトラス山脈に行くんだ。そこで今の実力を見るんだって」
「龍ノ介から聞いたよ。父さんも同行すると言ったら、身体は悲鳴をあげてるから一日ぐらいは休息しろと言われたよ」
「確かに。どうせパパのことだからこの一週間ぶっ通しで武者修行してたんでしょ?」
「……………」
気まずそうな沈黙がすべてを物語っている。
言葉の選択を間違えたと後悔しながら大きなため息をついてしまう。
私と龍くんが目を光らせてないとすぐこれだもん。いくら話し合っても堂々巡り。
パパの生き甲斐を私だけじゃなくって別の何かが他にあれば良いんだけれど、これと言って良い案がなかなか浮かばない。
普通だったら一番有効的な新しい恋は、今でもお母さんを愛しているパパには逆効果。
「後で肩たたきするね?」
「だったら肩たたき券を使わないとな」
しょうがないから今日の所は優しくしてあげようと幼稚な提案をすると、パパの顔はすっかりだらけて懐かしいことを引き出す。
小学生の父の日の定番プレゼントと言えば、肩たたき券。私も毎年パパと龍くんに五十枚綴りをプレゼントしていた。龍くんは頻繁に使っていたのに、パパったらなかなか使ってくれなかったんだよね? 今になって使うなんて普通だったらもう時効……そう言えば無期限と書いていた気がする。
「そうだね?」
「それからあとで抱きしめても良いか?」
「もちろん。そしたら私もギュッと抱き返すよ。……一緒に寝てもいい?」
「え、それはさすがに駄目だろう?」
和やかなムードになりこの流れならば良いよと言うと思って、しおらしく尋ねてみたのに答えはNOだった。しかも何を馬鹿を言っている的な冷めた表情で見られたおかげで、自分の発言があまりにも気色悪いことに自覚する。
女子高生が父親と一緒に寝る。
ファザコンでもこれは真っ青に違いない。
……でも今夜はどうしても一緒に寝たい……。
別に子供の頃のように抱いてもらって寝たいとかじゃなくって、パパの隣で布団を並べて寝たいだけ。
それならきっと気色悪くはないよね?
「どうしても駄目? 私この一週間パパに会えなくってすごく淋しかったんだ。パパは違うの?」
「それは父さんも同じだよ。やっぱり父さんには星歌がいない世界など生きていけないと強く再確認したんだ。……今夜だけだぞ?」
「うん、ありがとう」
私の本音をすべて曝け出すとパパの本音も聞けることが出来、最後は諦めのため息をつかれ許可が下りる。嬉しくて食事中なのに席を立ち、パパを背後から抱きつく。
【ガーロット、今夜はボクと一緒に寝てくれる?】
【チョピも気を使うことが出来るようになったんだな?】
【うん、セイカはこの一週間セイカのパパに会えなくて落ち込んでたんだもん。だから今日は二人だけにしてあげるんだ。ボク偉いでしょ?】
【そうだな。だったらもう二人だけにしようじゃないか】
とにかく私への独占力が強いチョピなのに、今はご機嫌に私のことを考えてくれている。驚くガーロットだったけれど、理由を聞いて納得しチョピを頭上に乗せ部屋に入っていく。
「パパ、おかえりなさい」
太と顔を合わせられないので一人淋しくキッチンでカツを揚げる準備をしていると、パパが姿を見せ笑顔で言うから私も笑顔になり言葉を返し抱きつく。
外見が更にワイルドになっていて久しぶりの無精ひげ。覇気が感じられる。
するとほんの少しパパの身体が拒まって、いつもと違って抱き返してくれない。ショックでパッと手を離す。
「今父さん臭いから」
「え、確かにちょっと汗臭いし男臭いけど、そんなの当り前じゃん。まさか気にしてるの?」
「当たり前だ。娘にパパは臭いから嫌いと言われたら、俺は生きていけない」
だけどいかにもパパらしい理由を弱弱しく答えられ視線を下に向ける。
だからパパは帰ってくるとお風呂に入って朝シャンもしていたんだね?
そんな情報どこから仕入れてきた……女友達が父親は加齢臭がして嫌だって言っているぐらいだから、娘を持つ父親なら当たり前の悩みなのかな?
前にパパにも加齢臭するのか気になり聞いて見たけれど、龍くんにまだしないとガチで怒られた。加齢臭は四十歳を過ぎてかららしい。
「そんなんで私パパのこと嫌いになんてならないよ。でもパパが気にしてるのなら早くお風呂に入ってきなよ。今夜はカツカレーだよ」
「ありがとう。どっちにしろさっぱりしたいから風呂に入ってくるよ。カツカレー楽しみだ」
そう言うパパが可愛いと思いながら、パパの考えを主張する。すぐさまパパは元気になって、カツカレーと聞き目を輝かす。
いくらワイルドパパになって覇気があっても、私にとっては何も変わらない。
夕食は龍くんが気を使ってくれてパパと二人(チョピとガーロットも一緒だけど)で、庭で食べることになった。
カツカレーを美味しそうにがつがつ食べるパパの姿を見ていたら、なんだか幸せを感じて一週間ぶりなのにすごく懐かしい。
やっぱりあの時パパと龍くんに任して私と太陽だけで地球に帰らなくって本当に良かった。
「武者修行の時ちゃんと食事してたの?」
「してたさ。モンスターを狩って丸焼きにして食べてた」
「そ、そうなんだ」
漫画やゲームの世界。
オタクにすれば憧れの食事かと思うけれど、一週間も続けば話は別だろう。
「まぁな。おかげで太くんと黒崎くんも見違えるほど強くなったよ。父さんもようやく少し自信を取り戻せた」
【何を言う? セイヤはすでに人類最強と言っても良かろう】
言葉通りの武者修行。
鬼教官になったパパのことだから、スパルタで二人をしごいたんだろう。だから二人は相当レベルアップした。それにパパの強さはガーロットのお墨付きな上に、自信も取り戻しつつある。覇気も出て来て確かに今のパパは格好良さが増している。
大成功だったみたい。
「だったら私も頑張らないとね。明日は食材調達しにサトラス山脈に行くんだ。そこで今の実力を見るんだって」
「龍ノ介から聞いたよ。父さんも同行すると言ったら、身体は悲鳴をあげてるから一日ぐらいは休息しろと言われたよ」
「確かに。どうせパパのことだからこの一週間ぶっ通しで武者修行してたんでしょ?」
「……………」
気まずそうな沈黙がすべてを物語っている。
言葉の選択を間違えたと後悔しながら大きなため息をついてしまう。
私と龍くんが目を光らせてないとすぐこれだもん。いくら話し合っても堂々巡り。
パパの生き甲斐を私だけじゃなくって別の何かが他にあれば良いんだけれど、これと言って良い案がなかなか浮かばない。
普通だったら一番有効的な新しい恋は、今でもお母さんを愛しているパパには逆効果。
「後で肩たたきするね?」
「だったら肩たたき券を使わないとな」
しょうがないから今日の所は優しくしてあげようと幼稚な提案をすると、パパの顔はすっかりだらけて懐かしいことを引き出す。
小学生の父の日の定番プレゼントと言えば、肩たたき券。私も毎年パパと龍くんに五十枚綴りをプレゼントしていた。龍くんは頻繁に使っていたのに、パパったらなかなか使ってくれなかったんだよね? 今になって使うなんて普通だったらもう時効……そう言えば無期限と書いていた気がする。
「そうだね?」
「それからあとで抱きしめても良いか?」
「もちろん。そしたら私もギュッと抱き返すよ。……一緒に寝てもいい?」
「え、それはさすがに駄目だろう?」
和やかなムードになりこの流れならば良いよと言うと思って、しおらしく尋ねてみたのに答えはNOだった。しかも何を馬鹿を言っている的な冷めた表情で見られたおかげで、自分の発言があまりにも気色悪いことに自覚する。
女子高生が父親と一緒に寝る。
ファザコンでもこれは真っ青に違いない。
……でも今夜はどうしても一緒に寝たい……。
別に子供の頃のように抱いてもらって寝たいとかじゃなくって、パパの隣で布団を並べて寝たいだけ。
それならきっと気色悪くはないよね?
「どうしても駄目? 私この一週間パパに会えなくってすごく淋しかったんだ。パパは違うの?」
「それは父さんも同じだよ。やっぱり父さんには星歌がいない世界など生きていけないと強く再確認したんだ。……今夜だけだぞ?」
「うん、ありがとう」
私の本音をすべて曝け出すとパパの本音も聞けることが出来、最後は諦めのため息をつかれ許可が下りる。嬉しくて食事中なのに席を立ち、パパを背後から抱きつく。
【ガーロット、今夜はボクと一緒に寝てくれる?】
【チョピも気を使うことが出来るようになったんだな?】
【うん、セイカはこの一週間セイカのパパに会えなくて落ち込んでたんだもん。だから今日は二人だけにしてあげるんだ。ボク偉いでしょ?】
【そうだな。だったらもう二人だけにしようじゃないか】
とにかく私への独占力が強いチョピなのに、今はご機嫌に私のことを考えてくれている。驚くガーロットだったけれど、理由を聞いて納得しチョピを頭上に乗せ部屋に入っていく。
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