普通の女子高生だと思っていたら、魔王の孫娘でした

桜井吏南

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3章 一難去ってまた一難 魔王の孫娘は不幸?

52.告白と暴言

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「村瀬星歌。自分は君が好きだ。だから自分にチャンスをくれないか?」
「え~と、黒崎はいきなり何を言ってるのかな? あまりにも唐突すぎて、意味不明なんだけど……」

 黒崎の告白に私は戸惑い本気にせず、ついそんな言葉を返してしまった。
 
 今朝まで私を心底から嫌っていたはずの黒崎なのに、夜になってわざわざ我が家にやって来て公開告白するはずがない。
 その証拠に黒崎と一緒に来たリュウさん以外の人達も、信じられないと言わんばかりの表情で口を開け絶句している。

 こうなったのは夕食後、しばらく経ってからのことだった。
 黒崎とリュウさんが突然我が家に訪問してきてリビングに通すなり、何も前触れもなく公開告白。現在に至る。

 でもこれが友達としての好きの意味だったら、全員で大爆笑物だ。
 早とちりした私が恥ずかしいけれど。

「自分は今でも魔族が嫌いだ。だからハーフ魔族ましては魔王の孫娘である村瀬の存在を認めたくなかった。だが本当は村瀬の魔族臭を好んでいた。気になってしょうがなかった」
「…………」

 紛れもない正真正銘の告白だった。
 初めて受ける告白。
 しかもパパがお母さんを好きになったきっかけとまったく同じ理由だったから、頭の中が混乱して言葉を失う。
 私はつよしが好きだからすぐに断らなければいけないのに、何も言葉が出て来ない。

「ふざけんな。お前は星歌の心を散々傷つけてきたんだぞ? 魔族に理解のないお前が星歌を幸せに出来るはずがないだろう?」
「だから自分にチャンスをくれと言っている。佐藤には関係ないだろう?」
「あるに決まってるだろう? だってオレはおっさんと師匠の次に星歌のことを大切に思っている。──お前なんかに絶対星歌を渡さない!!」
「つつよし?」

 なぜかつよしが黒崎の告白にめっちゃ怒りだし、声を荒げて黒崎の今までの行いを叩き付ける。それでも黒崎は負けじと強く言い返すから、つよしは逆上し我を忘れとんでもないことを言い捨てた。
 その瞬間今度は周囲がざわめきだし、私も思いっきり動揺し体中が燃えるように熱くなる。

 オレはおっさんと師匠の次に星歌のことを大切に思っている。
 お前なんかに絶対星歌を渡さない!!

 一体つよしは何を思ってそう言うことを言っているの?
 大切な友達として?
 それともつよしも私のことが好きだとか?

「それはつまり佐藤も村瀬のことが好きだと言うことか?」
「ああ。オレは星歌のことが──嫌い──だ。……え?」

『は??』

 小さな小さな声だったけれど確かに聞こえたとんでもない言葉に、誰もが理解出来ず首を傾げクエスチョンマークが飛び交う。

「違うそうじゃない。オレは星歌がす──嫌いだ。魔王の孫娘は死ね!!」

 つよし自身も想定外なのか顔色が真っ青になり言葉を訂正しようとするが、何かが弾ける音がした途端、今度ははっきりと言い捨てられた。
 今さっきとはまったく異なる言葉が信じられず、私は呆然となり太を見つ立ち尽くす。

 嘘だよね?
 黒崎だったらまだしも、今まで私を陽と一緒に支えてくれた太が言うわけないよね?
 幻聴……だよね?

つよし、ちょっと一体どうしちゃったの?」

 陽にもこれは信じられず、つよしに問うけど

「魔族は人間の敵だ。オレがお前を殺す」

 返ってきたのは、信じたくない残酷な答え。
 言葉が刃物となり私の心を傷つけ強烈な痛みを感じ、残酷すぎる真実に悲しくて怖くて涙があふれ、傍にいるパパにワンワンと泣きつく。

「パパ~」
「星歌……」

 過剰評価しまくっていたパパもこれにはショックのようで声が悲しんでいて、でも私をギュッと強く抱き返し髪をなぜてくれる。

 もしパパが傍にいてくれなかったら、この残酷なほどの初めてに失恋に耐えられなかった。
 いつものつよしじゃないから怪しむべきなのかも知れないけれど、そんな心のゆとりがなくって出来ることなら消えてなくなりたい。

【セイカをいじめるな!!】

 バッシッ

 怒ったチョピは声をあげそう言い捨てたのと同時に、何かが派手にぶつかり倒れ大惨事の音がする。

【ツヨシの馬鹿。セイカはツヨシのこと大好きなのに、セイカのパパの次に支えて欲しいのに、なんでそんな酷いことを言うの? ツヨシなんか大嫌いだ!!】

 恐る恐る視線をそっとチョピに向けると、失神しているつよしに馬乗りして涙目で訴えながらポカスカと殴っていた。

 私に変わってこんなに怒ってくれて、チョピの優しさがすごく嬉しい。
 だけどチョピの言葉が私にしか分からないからいいものの、こんなのみんなに知られたら恥ずかしい。

「チョピ、少し落ち着け。セイカの代わりに怒ってくれてサンキューな。後はオレがつよしを叱っておくから、この辺にしといてくれよ。ヨハン、協力してくれ」
「協力って何をするの?」
「拷問に決まってるだろう。星歌を泣かした罪は重いんだ」
「ちょっと待って下さい。これにはきっと何か事情があるはずです」

 チョピを私に戻しつよしを担ぎいつもと変わらない声でそう言う龍くんだけれど、実はめちゃくちゃ怒っているようでヨハンさんの問いの答えが怖かった。そう黒崎との初対面の一件と同じぐらい。
 案の定危険を感じた陽は、部屋から出て行く二人の後を血相を変え追う。

 拷問って何?
 
 あんなに悲しく止められない涙がピッタリと止まり、私も少なからずつよしが心配になって四人が出て行った方向を見つめた。

 さっきの意味もなく殴ったのが原因で、今までたまっていた不満が一気に爆発した?
 まだこの状況を素直に認めたくないけれど、だだをこねたって現実は変わらない。
 
 …………もう太《つよし》とは友達でさえいられないんだよね?

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