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3章 一難去ってまた一難 魔王の孫娘は不幸?
49.選択、娘と親友?
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「私太に嫌われちゃったよね? こんな暴力女好きになってくれないよね?」
「チュピチュピ」
「大丈夫。太くんは星歌を絶対に嫌ったりするもんか。これは龍ノ介の全責任であって、星歌はこれっぽっちも悪くない」
すっかり落ち込んで俺の懐で泣いている星歌の背中をさすりながら、そうじゃないことを告げ精一杯励ます。
チョピと太くんとで夕食の下ごしらえが終わると、太くんは龍ノ介に稽古を付けてもらうと言ってキッチンを飛び出していった。
数十秒後、二階から星歌の悲鳴に近い声と人が倒れる鈍い音が同時に聞こえた。
星歌の身に何かあったのではないかとすぐに駆けつけると、そこには泣いている星歌と倒れている顔面が真っ赤で鼻血を出す太くん。
そして星歌の部屋から出て来た龍ノ介は、罰が悪そうに顔に手を当て肩を落としていた。
龍ノ介が何かやらかした。
直感的にそう思ったオレはまず龍ノ介に事情を聞けば、
案の定星歌にゲスの本性を暴露し怒らせ、たまたま鉢合わせになった太くんが被害にあったらしい。
そんな龍ノ介を張り倒し後から来た陽ちゃんとヨハンに二人を任せ、俺は星歌を庭先のデッキへ連れ出したと言うわけだ。
本当にあいつは一体何を考えてるんだ?
星歌に嫌われるだけなら自業自得で我が家に立ち入り禁止にするだけなんだが、よりにもよってあの馬鹿はあろうことかセクハラ発言で星歌を泣かせた。
それは許されない行為である。
「龍ノ介に愛想を尽かしたか? もし二度と顔も見たくないと言うのならば、父さんも」
「龍くんは父ちゃんだから、心の底から嫌いになれない。だから今まで通りの関係でいる。……しばらくは無視するかもだけど……」
もしもの時の覚悟を決め聞いて見れば、星歌の方が龍ノ介よりよっぽど大人だった。
どうやら星歌も俺と同じで龍ノ介の駄目な部分だけ切り捨て、良い所だけ見ることに決めたようだ。
そうなってくれホッとするが、俺だってしばらくは龍ノ介に冷たく接するだろう。
「そうか。ありがとう。星歌は本当に優しい子だな」
「そうかな? でももし私が龍くんの顔も二度と見たくないって言ったら、パパはどうするつもりだったの?」
「縁を切ってたよ。星歌に害をもたらすのは、例え龍ノ介でも許せないから」
ようやく泣きやみ涙を拭きながらもしもの問いをするが、俺は迷わず覚悟の答えを答える。
星歌の笑顔を護るためなら、俺はすべてを捨てても後悔はしない。
「パパ、そんなこと言ったらダメだよ。パパと龍くんは最高のコンビでしょ? 私も陽とそうなりたいな」
「最高のコンビね。確かにそうかもな。でも星歌と陽ちゃんも、最高のコンビだと思うよ。しかもお互いに欠点と言う欠点がないから、父さん達よりも最強じゃないか?」
最高のコンビと言われて少し迷惑だと思ってしまうのは今だけなんだろう。いつもなら嬉しい……はずだ。
そんな俺達を羨ましがる星歌だが、言葉通り星歌と陽ちゃんの方がすごい。きっと俺達よりも固い友情で結ばれているのだろう。これから何があっても壊れることはない。
「そうだといいな。うん陽は欠点と言う欠点はな……男を見る目がないかな?」
「そうなのか? 陽ちゃんは勘が鋭い子だから……まさか龍ノ介のこと?」
陽ちゃんらしくない欠点に不思議に思うも、改めてよく考え見ると龍ノ介に恋心があることに気づく。
龍ノ介の本性を知らなければ、十分考えられる。
「誰にも言っちゃダメだよ」
「ああ。だから星歌は龍ノ介の本性を知ろうとしたのか」
ようやく龍ノ介が星歌に本性を暴露した経緯を把握した。
龍ノ介も星歌の真剣に聞いてきたから偽れなかった。龍ノ介も星歌には弱いから。
だとしてもやり過ぎだな。
「うん。でもいくらなんでも私の友達には手を出さないって」
「賢明な判断だな。いつかあいつにも運命の相手が見つかると思いたかったが、おそらく一生無理なんだろう。妻になる人が可哀そうだ」
星歌の友人にまで手を出したら、いくらなんでも終わりだろう。
「私もそう思うんだけれど、陽が本気だから。龍くんが高嶺の花だから諦めるって、悲しそうに言うんだ」
「そうか。だったら龍ノ介が陽ちゃんに嫌われる行為を続ければいい。龍ノ介とよく話してみるな」
「本当に? ありがとう。パパはいつだって頼りになるね」
陽ちゃんを本気で心配する星歌の力になろうと思い、自ら助役を買って出れば星歌の顔にようやく笑顔が浮かぶ。それは俺にとって何よりもの万能薬だ。
パパはいつだって頼りになる。
そう言われて嬉しい。
しかしいつもの龍ノ介だったら、興味のない女性を後腐れなく交わしていたはず。
陽ちゃんは星歌の親友だから、無闇に突き放せなかった?
それにしてもあいつらしくないような。
…………。
まさかな。
「パパ?」
「いいや、なんでもない。今から行きたい所があるんだが、付き合ってくれるか?」
フッと脳裏に横切るある疑惑をありえないと強く言い聞かせながら、不思議がる星歌に話題を変えようとそう言い立ち上がる。
今から行けば夕焼けに間に合うし、下ごしらえは終わっているから帰ってきてからでも問題ないだろう。
「チュピ?」
「チョピも着いて行っていい?」
「ああ、構わない。ここから車でぐらいだ。鍵を持ってくるから、車庫で待ってなさい」
「うん、分かった」
星歌と一心同体になっているチョピを粗末に扱えず認めると、チョピは嬉しそうに俺の頭の上に飛び乗る。
「チュピチュピ」
「大丈夫。太くんは星歌を絶対に嫌ったりするもんか。これは龍ノ介の全責任であって、星歌はこれっぽっちも悪くない」
すっかり落ち込んで俺の懐で泣いている星歌の背中をさすりながら、そうじゃないことを告げ精一杯励ます。
チョピと太くんとで夕食の下ごしらえが終わると、太くんは龍ノ介に稽古を付けてもらうと言ってキッチンを飛び出していった。
数十秒後、二階から星歌の悲鳴に近い声と人が倒れる鈍い音が同時に聞こえた。
星歌の身に何かあったのではないかとすぐに駆けつけると、そこには泣いている星歌と倒れている顔面が真っ赤で鼻血を出す太くん。
そして星歌の部屋から出て来た龍ノ介は、罰が悪そうに顔に手を当て肩を落としていた。
龍ノ介が何かやらかした。
直感的にそう思ったオレはまず龍ノ介に事情を聞けば、
案の定星歌にゲスの本性を暴露し怒らせ、たまたま鉢合わせになった太くんが被害にあったらしい。
そんな龍ノ介を張り倒し後から来た陽ちゃんとヨハンに二人を任せ、俺は星歌を庭先のデッキへ連れ出したと言うわけだ。
本当にあいつは一体何を考えてるんだ?
星歌に嫌われるだけなら自業自得で我が家に立ち入り禁止にするだけなんだが、よりにもよってあの馬鹿はあろうことかセクハラ発言で星歌を泣かせた。
それは許されない行為である。
「龍ノ介に愛想を尽かしたか? もし二度と顔も見たくないと言うのならば、父さんも」
「龍くんは父ちゃんだから、心の底から嫌いになれない。だから今まで通りの関係でいる。……しばらくは無視するかもだけど……」
もしもの時の覚悟を決め聞いて見れば、星歌の方が龍ノ介よりよっぽど大人だった。
どうやら星歌も俺と同じで龍ノ介の駄目な部分だけ切り捨て、良い所だけ見ることに決めたようだ。
そうなってくれホッとするが、俺だってしばらくは龍ノ介に冷たく接するだろう。
「そうか。ありがとう。星歌は本当に優しい子だな」
「そうかな? でももし私が龍くんの顔も二度と見たくないって言ったら、パパはどうするつもりだったの?」
「縁を切ってたよ。星歌に害をもたらすのは、例え龍ノ介でも許せないから」
ようやく泣きやみ涙を拭きながらもしもの問いをするが、俺は迷わず覚悟の答えを答える。
星歌の笑顔を護るためなら、俺はすべてを捨てても後悔はしない。
「パパ、そんなこと言ったらダメだよ。パパと龍くんは最高のコンビでしょ? 私も陽とそうなりたいな」
「最高のコンビね。確かにそうかもな。でも星歌と陽ちゃんも、最高のコンビだと思うよ。しかもお互いに欠点と言う欠点がないから、父さん達よりも最強じゃないか?」
最高のコンビと言われて少し迷惑だと思ってしまうのは今だけなんだろう。いつもなら嬉しい……はずだ。
そんな俺達を羨ましがる星歌だが、言葉通り星歌と陽ちゃんの方がすごい。きっと俺達よりも固い友情で結ばれているのだろう。これから何があっても壊れることはない。
「そうだといいな。うん陽は欠点と言う欠点はな……男を見る目がないかな?」
「そうなのか? 陽ちゃんは勘が鋭い子だから……まさか龍ノ介のこと?」
陽ちゃんらしくない欠点に不思議に思うも、改めてよく考え見ると龍ノ介に恋心があることに気づく。
龍ノ介の本性を知らなければ、十分考えられる。
「誰にも言っちゃダメだよ」
「ああ。だから星歌は龍ノ介の本性を知ろうとしたのか」
ようやく龍ノ介が星歌に本性を暴露した経緯を把握した。
龍ノ介も星歌の真剣に聞いてきたから偽れなかった。龍ノ介も星歌には弱いから。
だとしてもやり過ぎだな。
「うん。でもいくらなんでも私の友達には手を出さないって」
「賢明な判断だな。いつかあいつにも運命の相手が見つかると思いたかったが、おそらく一生無理なんだろう。妻になる人が可哀そうだ」
星歌の友人にまで手を出したら、いくらなんでも終わりだろう。
「私もそう思うんだけれど、陽が本気だから。龍くんが高嶺の花だから諦めるって、悲しそうに言うんだ」
「そうか。だったら龍ノ介が陽ちゃんに嫌われる行為を続ければいい。龍ノ介とよく話してみるな」
「本当に? ありがとう。パパはいつだって頼りになるね」
陽ちゃんを本気で心配する星歌の力になろうと思い、自ら助役を買って出れば星歌の顔にようやく笑顔が浮かぶ。それは俺にとって何よりもの万能薬だ。
パパはいつだって頼りになる。
そう言われて嬉しい。
しかしいつもの龍ノ介だったら、興味のない女性を後腐れなく交わしていたはず。
陽ちゃんは星歌の親友だから、無闇に突き放せなかった?
それにしてもあいつらしくないような。
…………。
まさかな。
「パパ?」
「いいや、なんでもない。今から行きたい所があるんだが、付き合ってくれるか?」
フッと脳裏に横切るある疑惑をありえないと強く言い聞かせながら、不思議がる星歌に話題を変えようとそう言い立ち上がる。
今から行けば夕焼けに間に合うし、下ごしらえは終わっているから帰ってきてからでも問題ないだろう。
「チュピ?」
「チョピも着いて行っていい?」
「ああ、構わない。ここから車でぐらいだ。鍵を持ってくるから、車庫で待ってなさい」
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