普通の女子高生だと思っていたら、魔王の孫娘でした

桜井吏南

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3章 一難去ってまた一難 魔王の孫娘は不幸?

48.龍くんの本心 

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「龍くん、大事な話があるんだけど、ちょっといい?」
「ああ、いいよ。どこで話す?」
「私の部屋」
「分かった。なら行こう」

 昼食を終え陽がお風呂に入ったのを確認してから、龍くんと対決(?)するため外に出ようとする龍くんを呼び止める。
 少し驚きはするも二つ返事で頷いてくれたから、私の部屋に行くことになった。

 やっぱり私に対しての龍くんは、優しくて頼りになる人。
 パパのように女癖が悪くても関係がないと言いたいけれど、陽がいるからそうも言ってられない。



「話ってひょっとしてヨハンのことか?」
「え、まぁそれもある。龍くんはヨハンさんと付き合ってるの?」

 自室に来てもらい念年のため鍵を閉めると、龍くんから問いを投げかけられる。ちょっと違ったけれど、それも知りたかったから直球に聞き返す。

「まぁな。流石ハーフエルフ二十八年ぶりに会っても、身体の衰える所か前にも増して女の色気がムンムンと出て来てな。たまんねぇだよ」
「……龍くん?」

 女子高生にそう言うこと言いますか? と思うほどのやましい発言をいやらしい表情も浮かべながら馬鹿正直に答える龍くん。
 私の知らない龍くんが目の前にいて、あまりの豹変ぶりに最低と軽蔑するよりもどう受け止めて良いのか分からない。

 これが龍くんの本心?

「悪いがオレはそう言う奴だ。だから陽には諦めるように仕向けてくれ」
「……やっぱり陽の気持に気づいてたんだね?」
「当たり前だろう? 星歌だって気づいてたんだろう?」
「うん……」
「オレは教え子には出さないが、卒業していい女になったら分からない」

 なぜ今になって知りたくなかった本音を暴露するんだろう?

 悲しくて涙が出そうになり、龍くんから視線を背けてしまう。
 ここまで言われたら、本当に私は龍くんが嫌いになりそうだ。

「……だったら陽にも可能性があるの?」

 これ以上はもう聞きたくないと思っても、これだけは聞かないといけないと思って、覚悟を持って聞く。
 陽は龍くんを諦めようとしているけれど、陽の気持ちは本気だと思うから多分無理だと思う。そして私がどんなに龍くんがゲスだと言っても、悲しそうな顔を見せるだけ。
 だからもし陽に可能性があるのならば、私は……。

「陽は絶対にない。いくらこんなオレでも星歌の友人には手を出さない。星夜程じゃないが、オレだって星歌に嫌われたくはないからな」
「もう嫌いになりかけてるけど……」

 今まで最強なゲスッぷりを見せた癖して、最後だけきっぱりと否定しまともな答えが返ってくる。
 不思議に思い再び龍くんに視線を向けると、言葉通り少し淋しげな表情を浮かべていた。そんな表情を見せられたら私は悪くないのに、罪悪感が芽生えてしまい強くは言えない。

「そんなこと言うなよな? オレの本心を知りたそうだったから、正直に答えただけだろう。嫌だったらもう二度とこの話はしないって約束するよ」
「パパは本当に仏だね」

 それを言われたら何も言い返せなくなり、思わず本音を吐きため息をつく。

「まったくだ。星夜じゃなかったらオレなんかとっくの昔に見放されている。最も恋愛面ではすでに見放されてるが」

 パパは本当にすごい。
 きっとこれ以上のありのままの龍くんを知っていてるかずなのに、それでも親友のままで頼りにしている。
 それ以上の良さが龍くんには……あるんだよね?

 また龍くんもまったく同じことを思っているらしく、そう呟き苦笑した。なんだかそんな表情をされたら、龍くんだからと呆れて許せてしまいそう。

「龍くんはパパと一生親友でいたいんだね」
「そんなの当り前だろう? 前にも話したがオレは星夜を尊敬している」

 やっぱり龍くんはパパを尊敬している。
 お互いにお互いのことを一番に理解していて、けして壊れることのない固い友情で結ばれている。
 それに私もやっぱり嫌いになることは出来ないかな?

「それじゃぁ私がどんなに龍くん好みの女性に成長したとしても、ちょっかい出さないの?」
「んなことしたら、星夜に殺されるだろう? それに」
「え!?」

 何の脈略もなくぎゅっと抱きしめられてしまう。

 香水の甘い龍くんどくどくの匂いがして、こんなの六年ぶりかな?
 パパとは違う温もりではあるけれど、安心……って違う!!
  今の流れからして私は龍くんに抱きしめられる要素はない。

 ぶん殴ってボコボコにすれば、いいんだろうか?

「星歌はオレのこと、どう思う?」
「ぶん殴ろうと思う」
「……。すまん俺が悪かった。離すから殴らないでくれ」

 私の答えが意外だったのか、血の気を引いた龍くんはバッと離れ土下座する。

「一体なんなの?」
「オレがぎゅっと抱きしめても恋愛感情は生まれないだろう?」
「うん。まったくもって一ミリも」

 私にとって龍くんは異性ではなかった。
 父ちゃんと言う家族でしかない。

「オレも同じだ。星歌はオレの娘のようなもんだから、そんな感情は一切抱かない。たとえEカップでオレ好みに近づいているとしてもだ」
「!? 龍くんのバカ!!」

 バシーン

 娘だと言われて嬉しかったのも束の間、バストサイズを言い当てられたことが恥ずかしくなり、大声を出して力の限り頬を平手打ち。

 そして私は龍くんの生存確認をすることなく、部屋から飛び出す。


 一か月前にサイズアップしたばかりなのに、どうして龍くんはそれを知っている?
 龍くんの特殊スキル?
 それとも私が知らないだけで男性は、バストサイズが分かるもんなの?


「星歌、どうかしたか?」

 タイミングが悪いことに、太に声を掛けられた。
 顔を真っ赤に染まらす私を、太は心配そうに見つめる。普通なら心配されて嬉しいはずが、今は頭の中が混乱しているためパニックを起こす。

 太も私のバストサイズを知っている……。

「イヤ~!!」

 ガーン

 太の顔面をグーで殴ってしまいノックアウトした。
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